倉方雅行 プロダクトデザイナー。1958年東京都生まれ、東京造形大学卒業。有限会社セルツカンパニー代表取締役、monos inc.専務取締役COO。東京造形大学、武蔵野美術大学、法政大学他東京デザイナー学院非常勤講師。
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この今までは、関係者を含むいわば身内に対してのデザイナーに求められる「力」の大切さを説明してきたが、これからの2回は外の関係者へ「力」を発揮しなくてはいけない。モノが市場に出て行く足がかりを作る段階での条件を考えていこう。今回は「社交力」。
1人でコツコツと絵を描いたり模型を作ってきたような人の中には、外部とのコミュニケーションが苦手という人が少なくない。しかし、モノ作りにおいて他人との交流は不可欠で、むしろ、プレゼンテーションなどで自分のアイデアを相手に理解して貰うには、当然ながら外部と接点を持たなければならない。そしてその時のアイデアの内容以前に、話す相手とまずどのように接したらよいか、その部分がとても重要になる。
私は人との関係は宝物だと思っている。むしろ、それがあってこそ、今の自分の置かれている立場を維持できたり次のステップに進むための足がかりが作れるからだ。友達を100人作りたいとしよう、その時に一度に100人と友達になるのは大変なことだ。しかし、10人の友達を持っている人と、10人友達になれば結果として100人以上の友達ができたようなものだ。そして、自分1人では成し得ないことでも、人のつながりによってすべてとは言わないが、かなりそのことを具現化する可能性を高めることができる。
私の場合を例に挙げると、友人・知人から個展やグループ展などの案内が届けば、今は不義理もしてしまっているが、若い頃はレセプションパーティーなどにはほとんど必ず出席していた。もちろん、その友人の作品を見るためでもあるが、そこに集まる人と出会うことも目的の1つである。その場に知り合いがいなかったとしても、主催者などに紹介してもらったり興味の視点が同じような人と話をして名刺交換をする。すると、次に別のパーティーでその人を見かけると自然と距離が縮んでくる。
そのようにして知り合いが増えていくと、やがて相手の知人を通じて、たとえ同業ではなくても、何かを共有して一緒に面白いことをできそうな相手が見つかってくる。人の紹介はかなりの信用保証になるので、大切な人には自分の信用できる人を紹介したいし、またその逆も同じであることは理解してもらえるだろう。
もう1つの例は、フリーにせよインハウスにせよまたは学生にしても、何らかの外の組織に属することも社交力の向上につながる。私の場合は不純な動機(健康保険が安くなると言う理由)でJIDA((社)日本インダストリアルデザイナー協会)に入った。しかし、委員会での同業との活動やイベントでの他団体との出会い、果ては理事になってからのある種の社会的貢献などを通じてさまざまな方々と知り合うことができた。それが、今の私を支えている大半の部分だ。
この連載をこうして書かせていただけることも、事の始まりはJIDAの会員の方からの紹介で、pdwebの編集者と知り合うことになったからである。
そして、少なくともこれを読んでくださっている読者と、ある意味では知り合いになれたことも事実だと思う。
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