パロット社のZikmuとGrande Specchioのデモは、京都の四条通に1軒だけ残る四条京町家で行われた（図は、同町家のTwitterページ　http://twitter.com/kyomachiya　より）

四条京町家の内部の様子（iPhoneによるパノラマ写真の一部）。もともとは、明治43年に鋼材卸商の隠居所として建てられたもので、貸し切り以外のときには、自由に見学も可能。玄関から裏庭まで続く土間の途中に坪庭を設けるなど、限られた建坪の中で心理的な広がりを感じさせる工夫が見られる

町家の床の間に置かれたZikmuとGrande Specchio。どちらもシンプルな幾何学フォルムゆえに、伝統的な日本家屋にも不思議と調和する。底面がやや浮いており、そこからウーファーの音が360度に広がる

パロットPR事務局の望月奈津子さん。外資系企業は、外部の専門会社にPRを委託するケースが多いが、パロット社もそうした方針を採っている

まず、Zikmuは、Musicを繰り返しつぶやいていると、「ズィクム」と聞こえるようになることから名付けられたワイヤレス・ハイファイ・スピーカーだ。

フィリップ・スタルクは、少し前にデザイナーから引退するとの声明を発表した記憶がある。だが、パロット社の創業者でCEOのアンリ・セイドゥが個人的な友人ということもあって、プロジェクトに参画したようだ。

スタルクは音響機器のフォルムのベースに、蓄音機のラッパや拡声器を思わせる円錐形を用いることが多い。多分、それが「音」を想起させる基本的な形状だからだろう。Zikmuの場合、管楽器を伏せたような形になっており、底部が広がって物理的にも視覚的にも安定するとともに、ウーファーの音の広がりも暗示している。

また、それ自体がクッション材を兼ねるパッケージ兼キャリングケースもよくできていて、この製品が「運ぶ」ことを念頭に作られたシステムであると意識させられる。

音を増幅する、奏でるといったイメージを素直にフォルムに反映した、Zikmuのホーンを思わせる形はいかにもスタルクらしい。上部の板状の断面が、底部の円形に滑らかにつながっていくなど、造形の妙が光る

筆者が、スピーカー本体と同じように興味を持ったのが、やはりスタルクデザインの専用ケース。閉じると、管楽器を運ぶように、どこへでもZikmuを携行することができる。1セットで約7kgという重量は、例えば初代Macintoshよりも軽く、十分手荷物となりうる範囲内にある

iPhoneやiPod touchとの接続は、ドックコネクタのほか、Bluetooth経由でも可能。また、MacやPCからのBluetooth／Wi-Fi接続もサポートされているほか、一般的なオーディオ再生機器はRCA端子を使った有線接続ができる。左右のスピーカー間の接続はワイヤレスであり、電源ケーブル以外は余計な配線は不要となる

ドックコネクタ付きのユニットと対になるスピーカーの上面は、タッチコントロールのパネルとなっている。また、付属のRFリモコン（右端）のサイズと形状が、このスピーカー上面の断面に等しく、この位置にピッタリ重ねられるという点にも、スタルクのこだわりが感じられる

Zikmuのカラーは4種あり、モノトーン系のクラシックブラック、アークティックホワイト、パールグレーに加えて、クリームイエロー系のライムシャーベットを加えたところにフランス的なセンスを感じる

マルタン・ゼケリによるGrande Specchioは、Androidベースのデジタルフォトフレームである。イタリア語で「大きな鏡」という名の通り、使用していないときにはミラーとして利用できる

もちろん、ウォールマウントにしても使用可能だが、ここまでくると、電源ケーブルも壁の中に埋め込んでしまいたくなる（クリックで拡大）

Grande Specchioのコントロール部は。タッチセンサーと超小型のトラックボールを組み合わせて構成されている

このフォトフレームは、SDカードやUSBメモリに保存されたイメージだけでなく、ネット上の情報（天気、ニュースなど）やイメージ（オンラインアルバムに保存した自分の写真など）も表示することができる

なかでも筆者が気に入ったのは、Google Mapを海岸線に沿って俯瞰しながら飛行し、各地でさまざまな人がアップロードしたリゾートの写真などを表示する機能だ。その名も「Holiday」と名付けられた機能には、バカンスを楽しむフランス人の発想の豊かさが感じられる