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Column Index
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pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン ●世界の中の日本デザイン
第20回:電話ボックスのデザイン
第19回 書店のデザイン
第18回 オリンピックマスコットのデザイン
第17回 サービス、個性をデザインする今どきのホテル
第16回 ダイバシティベースのデザイン、各国のマクドナルド
第15回 世界各国の官邸のデザイン
第14回 サッカースタジアムのデザイン(後編)
第13回 サッカースタジアムのデザイン(前編)
第12回 世界各国の寿司のデザイン
第11回 最新の日韓カーデザイン事情
第10回 スマートフォン以前の携帯電話
第9回 シリコンバレーのWebデザイン
第8回 中国の建築、日本の建築
第7回 椅子のデザインにみる日本と欧米の違い
第6回 世界のコインのデザイン
第5回 アジアの冷蔵庫
第4回 消耗品にも装飾品にもなる爪楊枝
第3回 形状や素材からみる日・中・韓の箸のデザイン
第2回 円盤形ロボット掃除機の米韓日を比べる
第1回 スモールカーの「Cube」と「Polo」は何が違う?

●女子デザイナーの歩き方
第66回:今時のオーディオマニア
第65回:デザインとミュージアム
第64回: 失敗や不安に向き合うのはしんどいが大事だ
第63回 栄久庵氏とGKのこと
第62回 日本唯一のエボナイト工場見学
第61回 新しいカタチを探してる
第60回 手仕事以上に手の痕跡
第59回 食品パッケージ萌え
第58回:未来を語るとクロスオーバーとかボーダーレスというのか

※第1回〜第57回の記事はKindle書籍にて購読できます(2014年1月刊行予定)



●モバイルデザイン考
第73回:ロンドン発のワイヤレススピーカーアンプ「The Vamp」
第72回:全天周パノラマ撮影が可能な「RICOH THETA」
第71回:ニュージーランド生まれの折りたたみ式新交通手段「YikeBike」
第70回 ジェスチャーでパソコンを操作するLEAP MOTIONコントローラー
第69回 3Dプリンタによる「自作電子消しゴムケース」
第68回:電気が途絶えた非常時にも利用できるLEDランタン「ルミンエイド」
第67回 ワイヤレス共有メモリという新しいデバイス、キングジム「Packetta」
第66回 ソーラーパネルやハンドルで電気を自給自足するデジタルカメラ「SUN&CLOUD」
第65回 ボディデザイン、機能、操作性で新境地を拓いた「PowerShot N」
第64回 スライド開閉式キーボード、エレコム「TK-FBP049E」を試す
第63回 ポストジョブズの製品「iPad mini」のディテールを見る
第62回 iPad用スイング・アクティベーション・キーボード「TK-FBP048ECBK」
第61回 ブラック・アンド・デッカーのジャイロスクリュードライバー「 GYRO36」
第60回 ジョブズのいないアップルが生んだ「iPhone 5」に見るデザインの変化
第59回 キャンプなどでの調理やUSB給電が可能な薪コンロ「BioLite CampStove」
第58回 来るべき3Dプリンタ革命の第一歩、低価格キット製品の「Printrbot」
第57回 コンセプトの違う2つのiPhoneカバー
第56回 モホックの便利機能を持った折りたたみ傘「スマート・アンブレラ」
第55回 ティーンネイジ・エンジニアリングのポータブルシンセサイザー「OP-1」
第54回 ロジクールのコンパクトなモバイルマウス「Cube」
第53回 iPhone 4/4S用アルミニウム削り出しケース、入曽精密「REAL EDGE C2」
第52回 狙って撮るだけのプロジェクター付きビデオカメラプロジェクター 、3M「CP45」
第51回 iPhone 4/4Sで360度VRビデオが気軽に楽しめる「GoPano micro」
第50回 ”少しいいこと”をして作られたiOSデバイス関連プロダクト群「サンプルプロジェクト」
第49回 3代目でさらに進化したプロジェクター内蔵カメラ、ニコン「COOLPIX S1200pj」
第48回 独自の付加価値を実現したデジタルフォトフレームパロットSpecchio/DIA
第47回 画期的な構造の次世代自転車 「mindbike(マインドバイク)」
第46回 3Mの最新ポケットプロジェクター「3M MP180」
第45回 確かにスマートなiPad向け新機軸アクセサリ「SmartCover」
第44回 iPhoneで揺れの少ない動画が撮れる「Steadicam SMOOTHEE」
第43回 第6世代iPod nanoをプレミアムウォッチ化する「TikTok+LunaTik」
第42回 ポータブルスピーカーの機能と性能を革新するジョウボーン「JAMBOX」
第41回 iPhone 4専用三脚アダプタ兼スタンド「Glif」"
第40回 デザイナー/クリエイターをリスクフリーで支援する"Kickstarter"
第39回 G-SHOCK的発想のケータイ&iPhoneケース「X-STYLE HARD CASE」
第38回 再び新たな原型を作り出したアップル「iPod nano」
第37回 さらに進化した高遮音性イヤフォン、シュア「SE535」
第36回 アップル「iPhone 4」
第35回 パロット「Zikmu & Grande Specchio」
第34回 アップル「iPad(16GB Wi-Fiモデル)」
第33回 ソニー「ドックスピーカー/RDP-NWV500」
第32回 Evenno「Fingerist」
第31回 Think Tank Photo「ローテーション360」
第30回 ソニー「ブロギー/MHS-PM5K」
第29回 アップル「Magic Mouse」とロジクールの2つのマウス
第28回 新しいスタイルのデジカメ登場リコー「GXR」
第27回 デモバイルな工夫を感じる折りたたみ傘「センズ・アンブレラ」
第26回 デジカメの1つの進化系を実現したニコン「COOLPIX S1000pj」
第25回 フェールラーベンの多機能バッグ「ディペンドラートラベルバッグ」
第24回 民生用3Dデジタルカメラ、富士フイルム「FinePix REAL 3D」
第23回 デジタルで復活した名機「オリンパス・ペン」
第22回 電子ペン、MVPenテクノロジーズ「MVPen」
第21回 ソニー、サイバーショット「DSC-HX1」
第20回 キヤノン28mm12倍ズームデジカメ「PowerShot SX200 IS」
第19回 ソニーデータプロジェクター「VPL-MX25」
第18回 デジタルカメラ付きプリンタ「XIAO」
第17回 VGA/ビデオ両用のポケットプロジェクター「3M MPro110」
第16回 実用域に達した真にポケットサイズのプロジェクター
第15回 光学のニコンが送り出すヘッドマウントディスプレイ「MEDIA PORT UP」
第14回 薄さと機能向上の絶妙なバランス「iPod nano 4G」、「iPod touch 2G」
第13回 モバイルデバイスの充電ソリューション「The Sanctuary」
第12回 徒歩や自転車にも対応するPND「nuvi 250」
第11回 「iPhone 3G」が到達したデザインに迫る
第10回 モバイルスキャナPFU 「ScanSnap S300M」
第9回 ソニー リニアPCMレコーダー「PCM-D50」
第8回 携帯するテレビの1つの到達点ソニー「XDV-D500」
第7回 文具に潜むモバイルデザインのヒント
第6回 ワイヤレス時代の極薄フルサイズノート「アップルMacBook Air」
第5回 モバイルデザイン十ヶ条
第4回 ソニー パーソナルフィールドスピーカー「PFR-V1」
第3回 iPodケース3点〜きわみ工房「Re-nano」他
第2回 アップル「iPod touch」
第1回 三洋電機「Xacti DMX-CA65」

●デザインの夢
第10回 アメリカの抱える問題点に触れた:その2
第9回 アメリカの抱える問題点に触れた:その1
第8回 カーデザインを取り巻く状況
第7回 不況時代のサバイバル
第6回 ブラウンのデザインの変化
第5回 欧米と異なる、日本のデザインスタイル
第4回 不明瞭な「デザイン」という概念
第3回 フィリップ・スタルクの引退宣言に思う
第2回 予測不能のマーケット
第1回 夢は終わらない

●経営者が選ぶデザイン
第10回 ミニマリズムとは何か
第9回 電子機器のデザインとモダニズムの限界
第8回 モダニズムから合理的なデザインへ
第7回 デザイン事務所を見極めるヒント
第6回 想像を超えたフリーランスデザイナーへの要求
第5回 フリーランスデザイナーに依頼がくる仕事のパターン
第4回 デザイナーと密接な関係にあるエンジニア
第3回 記録的長時間のプレゼンテーション
第2回 最後は女子社員の多数決ですか!?
第1回 あるワンマン社長とのバトル

●プロダクトデザイナーになるための10の条件
条件その10 説得力
条件その9 社交力
条件その8 計画力
条件その7 協調力
条件その6 統制力
条件その5 表現力
条件その4 展開力
条件その3 応用力
条件その2 解析力
条件その1 観察力

●Buyer's Mind
第2回 東京・青山「SEMPRE」
Part 2 店舗経営のコンセプトと作り手へのリクエスト
Part 1 センプレデザインはどんなショップ?
第1回 東京・原宿アシストオン
Part 3 バイヤーから作り手へのリクエスト
Part 2 顧客ターゲットと品揃えの方法論
Part 1 AssistOnはどんなショップなのか?



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Buyer's Mind
メーカーとユーザーをつなぐバイヤーの想い

ここではデザイナーであり流通も手がける中林鉄太郎氏が、毎回気になるショップを訪ねる。「メーカー」と「ユーザー」をつなぐ「バイヤー」は、どのような想いや戦略でモノを仕入れているのだろう。
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第1回
東京・原宿「AssistOn」
http://www.assiston.co.jp/
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Part 1  AssistOnはどんなショップなのか?
Part 2  顧客ターゲットと品揃えの方法論(9月中旬アップ)
Part 3  バイヤー側から作り手へのリクエスト(9月下旬アップ)

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インタビュー:中林鉄太郎
テツタロウデザイン代表/デザイナー。(社)日本インダストリアルデザイナー協会正会員。1965年東京生まれ。 1988年専門学校桑沢デザイン研究所卒。1997年テツタロウデザイン設立。文具、情報機器、住宅設備機器、家具、インテリア雑貨等、プロダクトデザイン開発に携わる。http://www.tn-design.com

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AssistOn代表取締役の大杉信雄氏
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大杉氏(右)と中林氏(手前)
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さまざまな雑貨が並ぶAssistOnの店内の一部。商品の陳列にも細やかな配慮がうかがえる
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 Part 1  AssistOnはどんなショップなのか?

●取材の前に
メーカーやデザイナーは、顧客のニーズから引き出された「ウォンツ」と、そこへ響く「ベネフィット」を備えた商品を開発することがミッションである。そして作り手の想いの詰まった商品は、顧客とのコンタクトポイントであり、ライフスタイルを提案できる「ショップ」があるからこそ、メッセージが伝達され、消費機会の場となり得る。

「作り手」と「使い手」の橋渡しをするリテールショップ。彼らはウィンドウ越しに何を見て、何を感じながら、顧客にとっての「ちょとした幸せ」をサポートしているのだろう。

ここではデザイナーであり、また商品開発と流通も行っている筆者の視点から、顧客と作り手の支持を集めるショップに話を聞いていきたい。「顧客視点でのモノ作り」のためにも、ショップから発信される時代の空気感をお伝えしていく。

第1回は、AssistOnの代表取締役大杉信雄さん。まずは、個性的なショップとしての生い立ちを再確認するところから伺った。

●AssistOn立ち上げの経緯
−−まず、AssistOnをオープンされるまでの経緯を振り返っていただけますか。

普通、独立して雑貨系のお店を経営する人は、おそらくほとんどの方が業界や流通系にいた人ですよね。もしくはデザイン関係でそういった勉強をしてこられた方とか。私は大学は薬学部でしたし、通常とは違うアプローチでしたね。

AssistOnに至る源流にはMacがありました。何故Macかというと、1980年代の後半ですが、私がまだ薬学部にいた頃に大学がMacを入れはじめ、個人的にHyperCardに興味を持ちました。医療関係の「メディライン」というBBSで、世界的な薬部情報のネットワークを作っていこうという動きも立ち上がっていました。まだインターネットは一般的には知られていない時代でしたが、医療の世界では、当時からすでに、薬の副作用の情報などが1つのネットワークでつながり、共有されていくと考えられていました。私も医薬品の情報検索に関わって、そこで「情報」でモノや人がつながっていくのって面白いなと思いました。

もう1つ、Macが良かったのは、絵やデザイン、音楽などクリエイターがMacを核に集まってきたことです。私は自分がMacに関わるなら、販売側からさまざまな情報をアドバイスできる立場が面白いと感じました。

そこで1990年にIKESHOPに入社しました。3年くらいでモノを売る技術は身に付き、サポートなどで懇意にしてくださるお客様とのつながりもできた。しかし、Macの文化は自分たちが作ったわけではないことに物足りなさも感じはじめました。先頭は我々より少し上の世代なんですよね。

そこにちょうどPDAの元祖であるNewtonが登場、1993年頃ですね。Newtonのいいところは、個人の情報に注力していた点です。Newtonを核にユーザー、プログラマー、売り手、みんなで一緒に一生懸命ああでもないこうでもないと活動しました。その流れでThe Newton Shopを作ったときに、中林さんがお客さんとして訪ねてきてくれた(笑)。

−−1996年頃、私がフリーになる1年ぐらい前ですね。

IKESHOPでは、最初「PDAは日本では絶対に売れない、方向がわからない」と反対にあったんです。でも個人の生活の中にコンピュータがもっと入り込んでくるはずだと確信していましたから、なんとかやりたいと意地でThe Newton Shopを立ち上げたんですね。

お店屋さんや流通は「うちはファッション流通」とか「うちは帽子屋さん」「本屋さん」というふうに、実は売り手の思い込みで成り立っているのではないか、という仮説を当時思いつきました。当時はPDAショップというものは影も形もありませんでしたが、きっと「うちはNewton屋さん」と看板を上げた瞬間にNewton屋さんになれるのではないか。PDAという1つの流通形態が生まれ、そこから派生していろいろな周辺機器やソフトが生まれてくるに違いない。きっと、マーケットというのは自分で作れるんだなと思った。だから、いけると思ったんです。

iMacの大ヒット、アップルの方向転換によってNewtonは最終的にはディスコンになるんですけど、私自身、人とのつながりもできてきたし、商売自体が面白くなってきた。ただNewtonには専門店という垣根があったんですね。Newton絡みの文房具を置いてみたり、自分たちでカバンを企画してメーカーさんと一緒に作ったりと活動が広がってきたときに、Newtonという看板が少し重く感じ始めた。逆に「専門店」という足かせもできてきて、Newton屋さんと言っているばかりに、Newton屋さんが便利な文房具も置いていますという言い訳をしないといけない。そこはちょっとつらいなと思い始めました。

自分の根本では情報や個人のツールに対する面白さを感じていたので、それがMacやNewtonを扱うことにつながったのですが、そこに依存している限りはもっと面白いものを集めてきたところで売ることができないわけです。最終的には「個人」の思考や生活を助けるモノを扱いたい。そんな時期に、中林さんが「こういうのを作ってみたんだけど、実際に製品になるかな」と提案してくださったことがあったんです。

−−Newtonの専用スタンドですね、実現しなかったけど(笑)。

はい、それ自体は製品化までいきませんでしたが、モノ作りというのはデザイナーや商品の企画がこう動いて、費用がどうなって、工場が動いて、という仕組みがわかった。それから、中林さんが売り手の意見を聞いて、デザインに反映していく姿を見ていて、プロダクトデザイナーってけっこうフットワークが軽いんだと思ったんです(笑)。面白いアイデアが浮かんだら、お店なりメーカーに持ち込んで自力で動く人たちがいる。プロダクトデザイナーってインハウスの人だけではなく、こうやって行動できる人たちもいることを知ったんですね。デザイナーという存在はもっと遠いものに感じていたのが、これはちょっと違うんだな、と。

そういった状況がやがてAssistOnにつながります。家庭用品も文房具もあって、一般的な業種の分類をするならば、我々は何の専門店でもない。Newtonテクノロジーの核に「Assist」という考え方がありますが、これは与えられた情報から人間の動きを察知し、さまざまな情報を見せてくれたり、情報を適切に保存してくれたりする、というものです。つまり、私がモノを売ること、その核は何かといったらNewtonがプログラムでやっていたことと同じこと、モノを売ることを通して、個人の仕事や生活を「アシスト」することなんだろうと。

何屋さんでもないけれど、あえて何屋さんと言えば、市場ができるという点ではうちは「AssistOn屋さん」です。うちのニオイを感じ取ったメーカーさんが来てくれたら話もするし、製品化を一緒に考えることもできる。デザイナーさんとメーカーさんをつなぐこともできます。また、いいなと思う海外製品も日本で扱いますよ、ということを始めたんですね。それはずばり「アシスト」です。

●独自の道を歩くAssistOn
−−AssistOnが正式にオープンしたのはいつですか。

独立してAssistOnをオープンしたのは2000年の1月です。コンピュータ関連製品はThe Newton Shopのつながりがありました。一方、国内の雑貨関係はコネクションがないので開店当時はそれほどバリエーションはなかったのですが、その分海外から買い付けてきたモノを売っていました。

結果的によかったのは、日本の雑貨業界の常識に縛られずに済んだことです。雑貨屋さんは大手の雑貨流通とつながるから、そこの商品がずるずると来る。うちにはそういうのがまったくなかったというか、当時は知りたかったんだけど知らなかった(笑)。

知り合いのコンピュータ関連メーカーさんは、PC周辺機器の縛りを受けず、もっと個人寄りの製品や文具寄りのモノを作りたかったんだけれど、今までコンピュータ中心だったから売場がなかった。じゃあAssistOnのために何かやろうと言ってくださった。そういうところと一緒にやるうちにだんだんモノが広がっていきました。

雑貨関係では、例えばまだ独自製品が1つしかなかったアッシュコンセプトさんが、「既存のお店と違うから面白い」と言ってくださった。アッシュコンセプトさんも特徴のあるショップ、自分たちの商品を大切に扱ってもらえるショップを探していたのです。

AssistOnはいわゆる問屋さんとは1つも契約をしていない。全部メーカーさんとの直接取引のみで商品を仕入れています。AssistOnで売れる数は大手の量販店さんのように巨大ではないけれど、お客さんのモノを見る目が非常に明確で、我々としてもそれに向かって、安心してきちんとした商品を提案することができる。AssistOnのお客さんが、どういう視線で商品を見ているかをわかってくださるから、メーカーさんも担当営業はもちろん、企画の担当者やデザイナーまで連れて商談に来られる。そうすると、デザインや色のバリエーションなど、突っ込んだところまで一緒に話をできるんですね。

−−AssistOnにはデザイン関係のお客さんが多いですよね。

当初はこれは予想できなかったことですが、そこは本当に嬉しいし、ありがたいことです。「自分の好きなAssistOnに自分の商品が並ぶ」。それをデザイナーさんが喜んでくださるし、熱くなってくれる。販売店側からそう言ってくれるなら、実はもっとこうしたいと、営業サイドを私たちと一緒に説得することも多いです。AssistOnはモノをよくわかってくれているということで、デザイナーさんも商品に対して真剣になってくれる。そうなれば我々売るほうも真剣になるし、その商品について詳しい情報も蓄積され、結果としてアシストオンとしても売りやすい製品が市場に誕生してくる。そういう作り手と一緒に築く濃いつながりが大きな財産です。

−−流通大手の問屋さんとつながらなかったことがラッキーということですけど、要は蛇口が付いちゃう感じですよね。ひねればモノは出てくるけど、何がどこから来るかわからない。お話を聞いているとAssistOnのコアはハブなんですね。ハブだからデジカメやプリンタが付いたり。それも片方からだけじゃなく、双方向なハブという感じがします。

AssistOnは根本的に「百貨店」ではなくて「一貨店」さんになりたかったからでしょうね。既存の雑貨屋さんって、さまざまなお客様に対応できるように同種類のものを多数揃えて、その中からどうぞお選びください、というスタンスだと思います。AssistOnの場合は、とにかく自分たちが自信を持って、私たちのお客様に勧められるものだけを揃えておけばいい。

例えばコップ。我々は気に入ったコップがなければいつまでも売らなくてよくて、あるとき気に入ったコップが見つかったら置いて売ればいい。その気の向き方。お客さんもそういう目で見てくれていて、AssistOnの勧めるコップがついに登場したか、だったら買ってみようかなと。そういうスタンスで買い物をしてくださる。

小さな資本力のお店にとって、たくさんコップを並べるのは大変ですよ。いろいろなところと契約をして、お金も棚も用意しなければいけない。実際に売れるかどうかもわからないし、売れなければセールをしてでも決算までには在庫を処分しなければならない。そういうモノの売り方は私としては悲しいし、それを作った人にも申し訳ないとも思う。

実際、お店を立ち上げた当初は、お店の棚がすかすかで埋まらなくて、それは大変でした。見た目も悪いし。しかし「棚が空いているから、何かモノを詰め込まなければならない」という強迫観念は忘れることにしました。空いた棚を手っ取り早いモノで詰め込むような、そんな品揃えは恥ずかしいし、お客さんに対してもそれはむしろ申し訳ないことだ、と。ゆっくり良い商品だけを集めていけば、きっといつかは、という想いがずっとありましたし、今もその想いは変わりません。

うちのお客さんはありがたいことに、商品の感想を細かく書いてきてくれるんです。本当に良いお客さんが付いてくれているんです。これを探しています、というメッセージは次の商材を決めるときの最優先課題とすることにしていますし、良いコメントだけではなくて「ちょっと使いづらいんですけど」というコメントもメーカーの担当者やデザイナーに確実に見せる。

メーカーさんから見れば、AssistOnに商品を出したら確実に反応が戻ってくる。お客さんにも喜んでもらえるし、我々の手腕も評価される。反面、手厳しいコメントが返ってくることもあるかもしれない。そういうキャッチボールをちゃんとやっています。AssistOnは数ヵ月売ったら「何かまた目新しいものを…」ということを絶対言わない。できるだけ育てる方向で長く取り引きをします。

●あくまで資本主義的なモノ選び
−−定番商品中心の品揃えなんでしょうか?

新作商品は1ヵ月で20点も投入できればいいところです。ホームページを作る時間もかなりかかるし、店頭に置く場所もない。従来の商品をどこかにやらなければいけない可能性もある。だから提案はいろいろいただきますが、ほとんど削って削ってというかたちでやっています。メーカーさんをどうやって選択しているかは、ずばり「濃く付き合いのできるところ」。どういう人がどういう考えで作っているか、どういう人がデザインしているかが見えるところですね。

−−大杉さんの視点で人が見えるモノが2つあったとして、どちらかを選ぶとなると、バイヤーとしての好みは出ますか?

選択の基準ですが、結果的には、その製品がAssistOnで売りやすいものかどうか、です。当たり前といえば当たり前ですが。いくらその製品が優れていても、他のお店で売られたほうがもっと売れるものもあると思うし、うちで売れる自信がないものを置かせてもらうのも、メーカーさんにとっても申し訳がない。

では、AssistOnで売れるモノとは何か、お客さんに喜んでもらえるモノは何かといったら、AssistOnというお店の方法論を100%生かすことができるかどうか、ということです。それは、AssistOnが製品作りの過程にちゃんと関わってきたものだったり、デザイナーの顔がちゃんと見える、長く使える、価格がそんなに高くない、贈って喜ばれるもの。店内やWebの販売でその製品の説明が適切にできるかどうか、取引条件などなど、そういう細かい条件の1つひとつに合致できるかどうか。最終的には、とても資本主義的な方法論でモノを選んでいるということになると思います。

もちろん私やスタッフが毎日の生活の中で「こんなモノがあったらいい」とか「こういう製品が世の中にないから欲しい」という要求を判断のよりどころにはします。しかしそれは判断の出発点にしかすぎない。取り扱いの商品を選ぶときには、好みとか文化的な理由でモノを評価することはないし、場合によってはその形態やデザインなんて一切評価していない。最終的にはAssistOnの顧客の皆さんにその商品は喜んでもらえるかどうか、それだけを見ています。

−−最後は製品をどう見つめるか、ということでしょうか。

実はAssistOnの経営についてのインタビューはほとんど受けたことがないんです。今回は中林さんだから特別に(笑)。私が原稿を書かせてもらうときにも商品についての原稿しか書かないようにしています。というのは、我々のコンセプトなんてどうでもいい。お店として常識的な範疇で経営をしているだけで、そんな特別なことをやっているわけでもないし。でもお客様にその商品が良いと思って買っていただくことができ、売れたよ、と作り手に伝えて、一緒に喜ぶ。その一連の流れが最終的にはAssistOnを評価していただけたことなのかな、と実感できるときでもあります。

これまでの雑貨屋さんは言いすぎだと思います。「ライフスタイル」だとか「センシティブ」だとか。だいたい、雑貨屋に自分の生き方を教えてほしくないじゃないですか。たかだかモノ売りなわけですから。でも、そのモノが近くにあることで、ちょっと生活が楽しくなったり、心地よくなったり。そのモノを使ううちに「こんなふうに考えられている、よくできているな」と気づかされるものもある。そういう喜びを共有したい。

デザイナーさんもメーカーさんも売る側も、この思いは同じだと思います。お客様もきっと、自分が買ったものがいいものだと長く使えるし、贈った相手に喜んでもらえば嬉しい。そう考えれば、最終的には売る人と作る人、使う人の喜びは一緒ですよね。

−−そう思います。

あとは、スタッフのみんなで、とにかくその一直線をブレないようにすることを一生懸命考えればいいのかなと。


ここまで、大杉氏の個人史とともにAssistOnの成り立ちや特徴を語っていただいた。Part2ではAssistOnのお客さんの特徴や品揃えに関して、より具体的な内容を語っていただく。
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