倉方雅行
プロダクトデザイナー。1958年東京都生まれ、東京造形大学卒業。有限会社セルツカンパニー代表取締役、monos inc.専務取締役COO。東京造形大学、武蔵野美術大学、法政大学、明星大学、昭和女子大学講師。
http://www.seltz.co.jp/
http://www.monos.co.jp/ |
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この連載を依頼されたとき、「プロダクトデザイナーになるための条件」を改めて自分に問うてみて、はて、何が必要かと思いをめぐらせてしまった。プロダクトデザイナーになるためには特に資格がいるわけでもなく、開業にあたって届け出が必要なわけでもない。私など、子どもの頃から図画工作が好きだっただけで、絵がとびきりうまいわけでもなく、特殊な技能を持ち合わせているわけでもない(だから、スーパースターになれないのかもしれないが(笑))。
ただ、この職業を生業とすることの条件を強いて言うなら、物事に対して興味を持ち、「何故だろう、何故かしら」と関心を持ったことを自分なりの解釈で理解して第三者に伝えられること。それが、一番大切ではないだろうかと、自分なりの答えにたどり着いた。
そのような一連の流れを、それぞれの事柄別に能力でまとめて見ると、観察力、解析力、応用力、展開力、表現力、統制力、協調力、計画力、社交力、説得力ということになるだろうか。
それを踏まえた上で、それぞれについて私なりの思いを、連載というかたちで皆さんにお伝えしていきたい。
観察力とは文字通り物事を観察する能力であるが、これには日常生活でさまざまな視点を持つことがとても大切だと感じている。
モノ作りにおいて、クライアントからの要求や自分自身の発想でデザインを始めようとしたときに、さてこれから必要な事柄を観察しましょうということでは、少し出遅れた感が否めない。目の前にある物事は、もうすでにこの世の中で周知の事実になりつつあることで、むしろ、そうなる以前の種や卵にあたる部分を、常に観察するということが重要だ。
実ってから果実を観察するのではなく、地面から芽を出した時点から、何が実るのか期待と疑問を持って見続けるのである。そうするとやがてその疑問が解けたとき、結果に至るまでの過程は観察者の独占情報になるに違いない。その情報は結果に対しての裏づけであるから、経過の過程を知る者にとっては、なんら疑問の余地はない。むしろ、そのことが柱となって結果が導き出されたことを知る数少ない者の中に自分もいる、ということが大切である。
つまり、観察の1つであるマーケティングリサーチ、市場調査というのは、まるっきり意味がないとは言わないが、デザインをする上では、ここで言う観察には入らないような気がする。
そうして得られた観察経過には、法則など秘密のキーワードが数多く隠されている。それらを1つひとつ丹念に分析することも大切で、それに関しては次回の「解析力」で詳しく説明することにしよう。
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