大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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ニコン製のプロジェクター内蔵カメラは、以前にも初代モデル(COOLPIX S1000pj)を採り上げたことがある。そのときには、基本性能はまずまずだったが、筐体デザインや外部映像入力不可という仕様に難があり、やや残念な評価となった。しかし、モデルチェンジ後のS1100pjでは外観も洗練され、最新のS1200pjは、プロジェクターの基本性能も向上して、製品としての完成度が高まった印象を受けたので、再び採り上げることにした。
まず、外観は一般的なデジタルカメラとして持ち歩いても違和感がなく、精悍なイメージのブラックモデルに加えて、女性ユーザーを意識したピンクモデルが用意されている。特に、従来はプッシュスイッチでオンしていたプロジェクター機能を、投影用レンズカバーを開けるという物理的な操作方法に変えたことは、分かりやすさや使い勝手の面で大いに評価できる。
ニコンブランドのプロジェクターカメラとして3代目となるCOOLPIX S1200pj。代を重ねるごとにデザインが洗練されてきた
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ロゴの入り方などから、携帯時の縦吊りを意識していることが分かる(クリックで拡大)
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上面のフォーカスダイアルは、前モデルから採用されたものだが、これも分かりやすく使いやすい。付加価値が高い分、価格も高め(直販で49,800円)。プロジェクターカメラ自体の販売台数は、一般的なコンパクトデジタルカメラの中で突出しているとは思えないが、ニコンならではの地道な改良が商品としての完成度を高めている。
上面にはメイン電源、シャッターボタン、ズームレバーの他、中央にプロジェクターのフォーカスダイアルが配されており、分かりやすく使いやすい
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底面には、バッテリー/SDメモリカードカバーと三脚穴に加えて、投影時に仰角を得るためのティルトスタンド(ニコンはプロジェクター脚と呼ぶ)が内蔵されている
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投影時に本体にわずかな仰角を付けるプロジェクター脚(ティルトスタンド)も、初代では別体の付属アクセサリだったが、前モデルから内蔵されてスマートになった。ただし、角度は一定なので、無段階とまではいかなくとも2、3段階程度に調整できればさらに使い勝手が良くなりそうだ。
ティルトスタンド(底面中央)は、スライド式のロックを外すことで傾けることができる
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ティルトスタンド使用時には、カメラ本体を机上などに置いたときにわずかに仰角が付く。高めの位置に投影しやすくなるが、角度は固定。微調整できれば、より使い勝手が高まるだろう
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2代目では操作がタッチスクリーンメインだったが、今回のモデルではコンベンショナルなハードウェアスイッチのインターフェイスに戻った。このカメラの方向性を考えると、あえてタッチスクリーンにする必要はなく、操作感もこちらのほうが確実でよいと思われる。
操作面のインターフェイスはニコンのコンパクトカメラの標準的なもので、普通に使いやすい。右上の赤丸付きのスイッチは動画専用の撮影ボタン。プロジェクター使用時には、投影操作に必要なボタンが点灯する
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設定画面のメニュー
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ニコン製プロジェクターカメラは、前モデルからパーソナルコンピュータと接続して画像の投影が可能だったが、S1200pjでは、新たにiOSデバイスとも接続可能になった。
このこと自体は大変素晴らしいが、Mac/Windowsとは付属のUSBケーブルで、また、iOSデバイスとは本機のユーザー登録をすると無料でもらえるDockコネクタ専用ケーブルでの接続となり、それぞれ「iP-PJ Transfer」と呼ばれるアプリケーションが必要となる(iOSデバイスの場合には直接出力も可能だが、表示できる映像の種類や見せ方に制約がある。ただし、iOS 5とiPhone 4以降あるいはiPad 2であれば、ミラリングでかなりカバーできるはずだ)。
今回は、Dockコネクタ専用ケーブルがなかったため、その部分のテストはできていないが、初代モデルの記事で指摘した外部映像入力が可能になり、ポピュラーなiOSデバイスにも対応したことは大変喜ばしい。
欲を言えば、コンピュータでは専用ソフトなしでも出力できるほうが汎用のプレゼンテーションツールも利用できるので望ましく、iOSデバイスからの入力端子もマイクロHDMIなどを利用して共用できるような設計になっていれば、なおよかったと思う。おそらく、より多くのPCから利用できるようにUSB接続を選んだものと思われるが、いずれにしてもプロジェクターカメラを利用するようなユーザーは意識が高いと考えられるので、そのような仕様でも問題は少ないはずだ。
側面には、オーディオビデオ(AV)出力/デジタル端子(USB)と、プロジェクター用入力端子(iOSデバイスからのDockコネクタ専用ケーブル接続用)がある(クリックで拡大)
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コンパクトカメラとしての基本性能も十分にあり、一般的なビジネスユーザーであれば、これ1台で日常のさまざまな業務やレクリエーションに利用できる。
カメラ自体の機能は、有効画素14.1メガピクセルのCCDや35mm判換算で28mmからの5倍ズーム、など、日常使いに不満のない仕様だ(クリックで拡大))
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特定の色だけを残して他をモノクロ化するセレクトカラー効果のほか、12人までの顔検出、ジオラマ風に撮れるミニチュア効果、魚眼効果、自動笑顔撮影など、撮影効果も一通り揃っている)
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プロジェクター機能は、従来モデルよりも明るい投影(公式資料で40%アップの6ルーメン)が可能。3原色LEDの採用により色再現性も高まり、sRGB相当の色域となった。解像度はVGA相当で、コントラスト比が200:1と、数値比較では単体のプロジェクターに及ばないが、実際に使ってみると少人数でのプレゼンテーションであれば、これで十分実用になる。
最も単純な使い方として、資料やイベントを直接撮影して、カメラ本体だけでスライドショー的に静止画や動画を投影しても利用できるので、普段使いのデジタルカメラの買い替えを検討しているのであれば、このようなユニークな製品こそ候補に入れるべきだと感じた。
VGA相当のプロジェクター機能は、従来モデルよりも明るく、色再現性も高まっている。最大約3mの距離から約60インチの投影が可能だ(クリックで拡大)
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投影時には、このように拡大表示も可能。画面の右下にある黒い四角の中の白い四角が、全画面に対する表示部分の位置を示し、十字キーで移動できる(クリックで拡大) |
試しにコンピュータディスプレイ上のイメージを直接撮影して投影してみた。これは、撮影したイメージを縮小したデータ
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全体表示では細かすぎて読み取りにくい情報も、拡大表示を併用することでしっかり把握することが可能となり、実用的に利用できる(クリックで拡大)
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