大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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もしもアップルが電動ドライバーを作ったら、こうなったのではないか。そう思わせるのが、ブラック・アンド・デッカーのジャイロスクリュードライバー 「GYRO36」(実売6,000円前後)である。
もちろん外観は一目でブラック・アンド・デッカー製と分かるオレンジとブラックのテーマカラーや、電動工具に求められる視覚的な力強さを盛り込んだもので、当たり前だがアップルの方向性とは異なっている。
しかし、物理的なスイッチ類を極力排し、直感的に利用できるようにするというユーザーインターフェイスのコンセプトにおいて、GYRO36は他社の(あるいは同社の既存の)製品と一線を画した存在なのだ。
実際、GYRO36にはスイッチが1つしかない。それは、グリップ部の後端にあるメインの電源スイッチで、これが手のひらで押されているときにだけ通電するようになっている。
パッケージの内容物は、ドライバー本体、ドライバービット10種、ドリルビット1種、ACアダプター(黄色いキャリングケースは非付属品)。(クリックで拡大)
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サイズは長さ160ミリ×幅40ミリ×高さ90ミリとコンパクト。極端な突起がなく滑らかだが、力強いフォルムだ。(クリックで拡大)
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グリップ後端のGYROと書かれた部分がメインスイッチ。本体をネジに押し付けるようにして使うというドライバーの基本的な使い方を踏まえた、理に叶った構造と言える。(クリックで拡大)
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11種類が用意された付属のビット類は、一般消費者の日常的な利用法であれば十分な内容と言え、特にイケアなど北欧やヨーロッパ系の家具や工業製品で採用率の高いポジドライブのビットが含まれているのはありがたい。フル充電状態で約280本分のネジを締められるので、その意味での実用性も十分だ。
余談だが、実は日本のイケアストアでも、無理にプラスドライバーで組み立てたと思われるつぶれたネジだらけの展示品が多く見つかっているという情報があるように、ポジドライブの認知度はまだ低い。家で組み立てる家具が同じ目に遭わないためにも、ポジドライブネジの存在は心に留めておきたい。
ドライバービットは、左から25ミリ長プラスビットの#1、#2、#3、同マイナスビットの#6、同六角ビットの#3、#4、#5、50ミリ長ポジドライブビットが#2、同プラスビットが#2、同マイナスビットが#8。ドリルビットが2.5mm径。欲を言えば、ドリルビットもドライバービットとともに収まるようにできると、なお良い。(クリックで拡大)
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ポジドライブ(左から3本目)は、イギリスのEIS社が特許と商標を持つ規格。プラスビットに似るが、溝が奥まで同じ幅で、さらに小さな凹凸が追加されている。この形状が、ネジの頭をなめにくくする。(クリックで拡大)
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そして、実際の操作方法だが、グリップを握り、メインスイッチに圧力を加えると、本体先端部のLEDが点灯し、電源がオンになったことを知らせるとともに作業エリアを照らす役割を果たす。
この状態でネジにビットをあて(あるいはドリルの先を穴を開ける材料にあて)、本体を右か左に傾けることで、ビットがその方向に回転する。つまり、ネジ締めや穴あけ、ネジの弛めやドリルの抜きの作業が、回転方向の切り替えスイッチなどなしに、直感的に本体を傾けるだけで行えるのである。
また、傾ける角度に応じて回転トルクが変化するので、締め具合なども自在にコントロールできる。さらに、メインスイッチを押さなければビットは固定されるため、最後に手の力で強く締め込むようなことも可能だ。
こうした制御を行うジャイロセンサーは、メインスイッチが押されるたびにリセットされるので、たとえば上向きのネジを締めたり外したりする場合でも、きちんと動作するようになっている。
本体の先端部にはLEDライトが埋め込まれ、メインスイッチに圧力がかかると点灯して作業エリアを照らす。(クリックで拡大)
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メインスイッチが押された状態で、本体を右に傾けるとネジの締め付け、左に傾けるとネジの弛めができる。左右30度までの傾きでトルクが連続的に変化し、作業を直感的に行える。(クリックで拡大)
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筐体のディテールに目を向けると、側面にあるエラのようなルーバーは、実際に内部まで貫通していて空気が流入し、モーターなどを冷やす空気穴として機能する。
電源ケーブルの端子はグリップ部の下端にあり、ケーブルをつないだ状態で作業しても邪魔になりにくいが、差し込む方向性が決まっている。純正以外のアダプターなどを不用意に接続されないための工夫かもしれないが、個人的にはどの向きでも差し込めたほうが利便性が高いように思う。
本体左右のエラのようなディテールは、内部まで貫通しており、モーター冷却のための空気穴として機能する。(クリックで拡大)
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充電ケーブルのソケットはグリップ部の下端に位置している。差し込み方に方向性があるが、使いやすさの点では、どの方向でも差し込めるようにしたほうが良いと感じた。(クリックで拡大)
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ちなみに、この製品はそのコンパクトさから持ち運んで使うような機会も多いと思われるが、特にキャリングケースなどは付属していなかったので、ダイソーでポケットが3つあるナイロン製ジッパーケースを購入したところ、付属品も含めてスッキリと収めることができた。これはなかなかオススメである。
黄色いキャリングケースは、100円ショップのダイソーで買い求めたもの。大中小3つのジッパーポケットがあり、それぞれに本体、ACアダプター、ビット類を収納するとちょうど良い。(クリックで拡大)
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