moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
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夏休み、改めてイタリアとフランスのデザインだなあ、と思うこともしばしば、また改めてここに書きたいと思います。
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pdwebの読者の皆様も世田谷美術館で開催されていた「榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く」って、見に行くかどうするか迷ったと思います。私も。一月半迷って昨日行ってきました。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
http://www.gk-design.co.jp/kikou/GKReport/No6/text/6-14.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/GKインダストリアルデザイン研究所
久しぶりに悩ましい展示でしたよ。ちょっと今月はシニカルな視点になってしまうかもしれませんが、深い意味はないです。
実はあんまりGKのことよく知らないのです。遠い昔に「就職先」候補としてちらっと考えた、でもヤマハでバイクのデザインなんかやらへんよね、ということで受けなかったですが。日本で企業でも個人デザイナー事務所でもない、日本最大級のデザインでお金を稼ぐデザイナー集団の会社。GK社員もグラフィックの友達が1人、だけしか知らない、すごく気配り効く働き者。
栄久庵さんと言えばキッコーマンのボトル。正直学生だった頃はその偉大さがぴんとこなかったですが、「もしキッコーマンボトルのモデルチェンジの仕事が来たら」と想像したらなかなかこれは大変。他には私は学生だった頃、京都GKで夏休みバイトしたときのスケッチ展開のやり方や、おそらく「Car Styling」や「Design News」、「AXIS」など当時のデザイン雑誌でかなり影響を受けているはず。グレーの線描三面スケッチや、手堅くて好き嫌いのない公共空間や電車車両のデザインやドラマチックなライティングでセクシーカーブなバイクやエンジンの写真。「ザ・男子なプロダクトデザイン」を刷り込まれた元ネタ。
本や講演とかも遠ざけていたところもある。仏門だしなあ、とくくるのもなんだから今回行ってみた。
1部の過去のアウトプット、プロダクツの現物やスケール模型展示。Tiffanyの煙突むくむくなスピーカーなど懐かしい、NEXのデザインはGKらしいわね。
プロダクツの説明文のブッキラボウかつドラマチックな抑揚や模型のケースに三面ラインスケッチ、あーGKっぽいなあ。
個人的には万博系のサインとかグラフィックと公共設備両方できるGKならではのものがもっと見たかったのですが。アムステルダムのGKもパネル1枚で紹介しつつも詳細不明なのが残念。
2部は過去の自主研究(バイクから義手まで)の原寸モックや万博とかの展示で使ったのかしら、多面体とチューブと電球のオブジェやディスプレイ状の地球儀。最近のプロジェクト(段ボール製の医療スペースユニットや災害救助用のタフなバイク、瀬戸内飛行艇特区プロジェクトなんてあるのか)のモックなど。災害救助用のバイクは素直にヘビーデューティへの憧れがいいな。
3部の道具寺の道具を持った仏像のマンダラと道具千手観音。うーん、道具のセレクションの基準とか説明なしなのか。
4部の「車輪のついたガラスの棺」ほっそりした円筒スピーカーから流れるBGMはキタロウ。なんで棺の下のエッジにLEDが複数付いているのか。
白い紙の蓮池が壁の鏡で広がっていて、蝶や金属の鳳凰(意外と小さい)が機械仕掛けで羽ばたく。うーん大阪万博の太陽の塔の中みたい、なんでこれ作ったんだろう。
GKというデザイナー集団企業と栄久庵氏の"仏門"との距離感がよく分からない。仏門とデザインがどう繋がっているんだろう?
説明はなし、ここ語りだすと長くなっちゃうからかしら。
つべこべ言わずにわかりやすい「仏教的な空間」に身を置いて各自が感じるのがいい、という判断なのかしら。サブタイトルの「デザインが導く未来」ってどう見ればいいのだろう。
ふと
2009年に開催されたディーター・ラムス展
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/Rams/
2011年に開催されたDOMA秋岡芳夫展
http://mmat.jp/exhibition/archives/ex111029
と比較してみた。フォルムへの共感具合なのだろうか、エモーショナルなバイクのオーガニックフォルムのテイストの好き嫌いだろうか。
敢えて昨今のデジタル機器テイストな[整然とスタティックに][CGのように重さのないヴァーチャルが実体化]ではなく、[汗臭いほどのマッシブ]な金属やFRPの重さを感じさせるセレクションだったようにも見受けられる。
インダストリアルデザインは戦後から1990年代までの「強く高い理想の具現化」から、深澤直人/佐藤卓以降「共感のトリガーとなるもの、その向こうの軽やかな理想」となったように思う。
いやあ昨今21_21などの"歩み寄ってくれるデザイン展"が多いなか、「共感とは対極の自己主張としてのデザイン」として解釈されるような自己紹介したGKなんだなあ。
おそらく実際の現在の仕事のプロセスは、綿密に繊細にマーケティングやリサーチやクライアントの要望をフィードバックしたりしてるんだろうけどなあ。"GKらしさ"ってむしろそっちじゃないのかと言うとそんな気もするし。
こうなると小池岩太郎先生の教えってどんなだったのか気になってくる。
いずれにしてもジャパンデザインへの影響は大きいな。会場にはおそらく宿題の自由研究だろう、小学生が数名来ていた、彼らにはどう見えたのだろうか。私の同級生世代の男子達がネスカフェのCMで由良卓也を見て憧れてデザイナーになったように、かっこいいバイクのプロトタイプを見てデザイナーを志す男子が出てくるのだろうか。
肉食系デザイナー男子の発掘を企んでいるのかな?
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