大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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ニコンが先鞭をつけ、ソニーなども対応機を発売しているプロジェクター組み込みタイプの撮影機器に、かねてよりポケットプロジェクターに取り組んできた3Mもビデオカメラプロジェクター「CP45」(39,800円)で参入した。
アメリカでは、スマートフォンが普及する前にフリップビデオなどと呼ばれる安価で小型の簡易ビデオ撮影デバイスが流行ったことがあったが、3Mのアプローチは、この流れをポケットプロジェクター技術と融合したものと言える。
「ポイント・アンド・シュート」、つまり「狙って撮るだけ」を標榜していることからもその方向性が分かるが、カメラ機能そのものは撮像センサーの解像度が500万画素(動画は720p)でパンフォーカスレンズと、凝ったものではない。しかし、気軽に撮って投影して楽しむという製品特性から考えれば、それで十分という割り切りがある。
白いボディを赤いバンド状のパーツでガードしたようなデザインに機能的な意味はないが、なかなか斬新であり、一般的なコンパクトデジタルカメラの中でも埋没しないことは確かだ。
撮影は、本体を縦の状態で撮ったときに横長の状態になるように設計され、徹底して片手操作にこだわっている。
124×62×24ミリで190gの筐体は、樹脂と金属から構成され、手のひらサイズでやや重量感がある。正面の操作スイッチ類はすべてタッチ式であり、表面はフラッシュサーフェス化されている。(クリックで拡大)
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側面のスライドスイッチで電源を入れると、バックライトによって操作スイッチのアイコンが白く光る。この状態で、カメラアイコン(上段左端)かビデオカメラアイコン(同右端)をタッチすると、それぞれ静止画と動画が撮影できる。(クリックで拡大)
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側面から見ると、平行四辺形のようにスラントしており、これもまた意味があるフォルムということではないものの、既存製品とは異なるイメージを打ち出したいという意欲が伝わってくる。
右側面には、写真左からメインの電源スイッチ、別売りのリモコン用赤外線受光部、マイクロSDスロット、そして赤い部分の右端にプロジェクターのフォーカスノブがある。(クリックで拡大)
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左側面には、写真左からAV入力兼用イヤフォン端子、USBポートカバー、パワー/充電インジケーターLEDがある。(クリックで拡大)
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最初からAV入力が備わっているのも良い点で、付属のRCAジャックからの変換ケーブルを用いれば、ビデオ出力可能な機器からの映像を本機を介して投影できるようになる。
USBポートカバーの内部には、充電にも利用するミニUSBポートのほか、HDMIの出力端子も備わっている。(クリックで拡大)
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背面には、写真右上に撮影用レンズとLEDフラッシュライト、ディンプル加工されたエリアに左からスピーカー、三脚穴、マイクが並ぶ。バッテリーはユーザー交換不可。(クリックで拡大)
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レンズ部は特にカバーなどがあるわけではないが、やや奥まった設計で誤って指先などが触れることを防いでいる。ただ、投影方向の光軸がボディと平行になっているのだが、手に持ったまま操作する機会も多いと思われる本機の場合には、グリップしたときの自然な角度で水平に投影できるように、あらかじめやや下向きに調整されているとより使いやすいかもしれない。
3M製ポケットプロジェクターに特徴的な大径レンズが覗く前端部。レンズ位置が比較的奥まっているため、不用意に指先で触れてしまう心配はほとんどない。(クリックで拡大)
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後端部にはシリアルナンバーなどを示すステッカーが貼ってあるほか、少し分かりにくいが赤いガードパーツと白いボディの間にスリットが設けられ、ストラップなどを取り付けられる構造になっている。(クリックで拡大)
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実際に使用してみると、起動に多少時間がかかるものの、起動してインターフェイスの癖を覚えてしまえば楽しく利用できる。注意すべきはタッチパネルの感度調整で、メニューから好みに合わせて調整しておかないと、タッチしているつもりが動かなかったり、過敏に反応しすぎることになる。このあたりは、調整不要のスマートフォンを見習う余地もありそうだ。
iPhoneなどとは異なり、静止画でも動画でも画角がほぼ変わらないのは大きなメリット。ユーザーインターフェイスは十字キーを主体的に用いる平均的なもの。スマートフォンを見慣れた目からは、フォントなどはもっと美しくあって良いと感じた。(クリックで拡大)
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プロジェクターは、操作スイッチ類上段の中央のアイコンで利用でき、その性能とクオリティは必要にして十分と感じる。拡大表示や拡大後の表示部分の移動もでき、スクリーンから2メートル離れた場合で約60インチの投影が可能である(最大推奨サイズは65インチ)。(クリックで拡大)
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プロジェクターの解像度と明るさは、800×600ピクセルで20ルーメン。バッテリー駆動時間も約100分と、少人数のプレゼンテーションもこなせる実力があるだけに、デジタル映像入力に対応していない点はやや残念だ。しかし、すでに常用する高機能なデジタルカメラがあるなら、旅先などで動画や静止画を投影してシェアする楽しみのために購入しても良いのではないだろうか。
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