moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com |
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毎年春の初めってこんな強風だったっけ? と思う間に温かくなって桜が咲きましたね。
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専門的に尖っていった方がキャラがたつのか、ジェネラルに目配りする方がバランスよいアウトプットができるのか、どっちもなんでしょうかね。
自分の領域にはこだわりを持ちつつ、ジャンルを超えて「分かりやすく簡潔に伝えるように言葉を選ぶ、聞いて勝手に解釈しないようにする」コミュニケーション能力でしょうね。それによって将来できることが広がっていく、そう思わせる展示を3月に観てきました。
・ギャラリー間:ここに、建築は、可能か
http://www.toto.co.jp/gallerma/ex130118/index.htm
第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で、「金獅子賞」を受賞した展示。「みんなの家」=東日本大震災後、無味乾燥な仮設住宅で暮らす多くの人々に対し、より人間的で居心地の良い空間を提供したいとの想いから、「帰心の会」(伊東豊雄、山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世)が提案する、東日本大震災復興支援プロジェクトの1つ。宮城県仙台市宮城野区、岩手県釜石市平田、同釜石商店街、宮城県東松島市に続き、本展で紹介する岩手県陸前高田市が11月18日に竣工。(以上サイトより)
それぞれがちゃんとピンで仕事してる名のある若手建築家3人(乾久美子、藤本壮介、平田晃久)が模型によってアイデアを視覚化し、試行錯誤の末に割と直接的に(この屋根とこの柱とこの床)アイデアをハイブリッドさせてる。アイデアのドライブをかけたのは仮設住宅のコミュニティのリーダー的な被災者の女性。
建築家=頑固で自分の物語に執着という先入観があったので、こんなに人の話を聞くんだね。伊東豊雄さん以来かな。テイストやオープンマインド具合が似ている3名だからか。
・ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター:国際デザイン シンポジウム
http://www.titech.ac.jp/event/news/detail_3649.html?id=alumni
東京工業大学、NTTや武蔵野美術大学と一緒に活動しているようです。感性工学、情報科学、記号論、認知科学、神経科学とデザインを近しくしたいイベントとしてデザインハブで開催されてました。脳科学の見地から「なぜ特定のカタチがかっこいいと思うのか」解明されたらいいなと聞きに行きましたが、後半は特にかなりこなれていない専門的だった印象。デザインの「定量的じゃない個人的なひらめき」から「ノウハウが伝授できる、客観的に測れる」ようになればデザインを語るのも"〜らしい"なんて曖昧な言葉や例え話を使わずに、ダイレクトにできるようになるかもしれないですよね。
・お台場青海駅前特設会場:HOUSE VISION
http://house-vision.jp/exhibition.html
原研哉さんてグラフィックデザインから出発して、無印を仕切っているとは言え、建築家/住宅設備メーカー/TSUTAYA/HONDAが集まるってすごいですね。錚々たるメンバーがメーカーの技術と隈健吾さんの会場構成を活かして、さらっと完成度高い「規定演技」です。
白基調に木材、土間、グリーンを活かして「これが未来の住まいの可能性の1つ」として印象づいたのではないかしら。リサイクルとか太陽光発電とか地域密着とかIT家電は要素として含まれていないし、社会的な大きい提案や"便利”が含まれているわけでもない、イメージ先行に割り切っている。ホテルのような匿名性、"無印の理想、上等な無印"。
新しい住宅に古い本や古道具が、華美ではない上質な生活のリアリティを醸し出すインテリアのバランサーとして使われていた。古いモノを媒介にして、未来を親しい、なじみのあるものとして自分に引き寄せるというか。蔦谷書店(電子書籍とは対極ですね、本は知識を得るメディア→物欲の対象→環境を作る要素になってきたのか)と東京R不動産が合同でtool boxという自分でリノベーション&リフォームを助ける仕組みを展示していたのが興味深い(美大出身者から見ると「えーこれにこんな価格つけて売り物にできるの」って驚きもあり)http://www.r-toolbox.jp/
ところでこんな展示の中で気を吐くプロダクトデザインというと。HONDAのアドバンスなモビリティ達が表から地続きフラットなキッチンやベッドルームに置いてあり、使い分けなどユースシーン説明(棒人間アニメ)のビデオ放映してました。ASIMOと言い、HONDAは自動車業界以外のイベントでの露出〜浸透に積極的。
http://www.honda.co.jp/robotics/weight/
http://www.honda.co.jp/UNI-CUB/
http://www.honda.co.jp/design/designers-talk/tms2011/motor-compo/
http://www.honda.co.jp/design/designers-talk/tms2011/townwalker/
目が慣れていくのかしら、未来的具合がちょっとロボットアニメぽいというか、プロダクトデザインで未来を語るとどうも「アドバンス独特のテイスト」になるんだよね。そもそも白であることすら意味を探ろうとしちゃうんだな、こちらも。でも自然光がさんさんと入る白いキッチンで見ると、最新のバスタブのような魅力が出ていたんじゃないかしら。個人的には懐かしいモトコンポを彷彿とさせるmotor-compoの低速版がリリースされたらおばあになって乗りたいと思いました。
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