密閉型のヘッドフォンに、マイクのようにも見える透過型LCOSタイプのLCDディスプレイが組み合わされたMEDIA PORT UPの全体形。視度調整付きである点に、ニコン的な気遣いが感じられる

ディスプレイが目の高さ付近に位置する「オーバーラップ・ポジション」は、映像をメインに楽しむ場合に利用する

アームジョイントを反転させることで左右どちらの目が利き目でも利用できるように、本体は前後対称形となっている

アームとディスプレイ部はニコンが「リトラクタブル・メカ」と呼ぶ調整機構により、自由度の高い位置決めが可能だ

ディスプレイを目の高さよりも下にセットする「アシストビュー・ポジション」は、サブ的に映像を観る場合に利用する

ディスプレイを跳ね上げた「ミュージック・ポジション」は、普通のヘッドフォンに近い形状で音楽を楽しむ場合に利用する

中央のジョグシャトル風ダイヤル（スイッチ機能はなし）と周囲のリングボタンで構成されるマルチセレクターボタンと、小口断面に位置するボリュームスイッチ

アーム側には、メインスイッチと利き目の切り替えスイッチ、そしてPCとの接続用のUSBポートが設けられている。UPのロゴの下にある小さなスイッチは「ワイパーボタン」と呼ばれ、画面に意識を集中させたいときにこれを押すと、映像内を線が走って注意をひく巧みなアイデアだ

電源は単3電池2本で、充電池も使用可。脱着時に不用意に抜け落ちない工夫がされている

スタイルはヘッドフォンだが、実際には1台のコンピュータでもある。採用されたOSは、Windows CE Pro 5.0だ

高いアイポイントを利用して、直接ディスプレイ部にカメラのレンズを向けて撮影したメニュー画面や映像の例。実際にはVGA解像度だが、小さなタイトル名などもはっきり読み取れる（クリックで拡大）

さて、MEDIA PORT UPは、8GBのメモリとモーションセンサー、AV入力端子を装備した上位機種の「UP300x」が69,800円（税込み）、4GBの「UP300」が59,800円（同）で、2008年12月中旬から出荷される（予約は10月15日からUP STOREサイトで始まっている）。

個人的には、製品のクオリティに対する対価としては妥当もしくは安いとすら感じたが、一方で、現時点ではまだ用途が限られるのも事実だ。映画を丸ごと1本鑑賞することも可能だが、やはり単眼での長時間視聴に慣れていないこともあり、短い映像情報を断続的に観たり確認したりする用途のほうが向いていると思われる。

となれば、やはりiPodが、製品そのものの魅力だけでなく、iTunes Storeで魅力的なコンテンツを揃えたことによって市場を席巻したように、MEDIA PORT UPに適した映像コンテンツやWebサイトをどれだけ整備できるかが成否の鍵を握ってくるだろう。

また、発表会の席上で、ターゲットユーザーは35歳から40代の男性とされていたが、プレス向けの画像に女性モデルが多く登場し、プロモーション映像でも女性中心の見せ方となっていることには違和感がある。MEDIA PORT UPの魅力を市場にきちんと伝えていくためにも、製品、サービスのみならず、広報の在り方も既成概念にとらわれないアイデアが必要となりそうだ。