大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodを作った男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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インターネットが普及してから、あまりテレビを見なくなったという人は多い。かく言う筆者も、一部のドラマやドキュメンタリーを除いては、見る機会がほとんどなくなってしまった。
しかし、基本的に「ながら視聴」ができない性格なので、出先や出張時などで原稿の締切を睨みながら仕事をしているときなどに、できれば見ておきたい映画や番組を、その場で録っておいて後から再生できる手段があればと感じることはある。
したがって、ポケットサイズのワンセグテレビが発売されたときにも、単に視聴できるだけでは役不足に思え、また、録画可能でもワンセグ付き携帯電話などの複合デバイスでは、多機能機にありがちな使い勝手や電池の持ちの問題があり、やはり魅力的とは言えなかった。
そんな折に登場したソニーの<ブラビア>ワンセグことXDV-D500は、シリーズ初号機のXDV-100よりも小型の筐体にステレオスピーカーや録画機能を搭載し、その上で同社らしくまとまりの良いデザインをまとっており、久々に興味を惹かれた。そこで、4月10日の発売を前にサンプル機をお借りして、このコーナーで採り上げることにした。
ちなみに、サンプル機は実際にも問題なく機能し、基本的な操作性も良好だったが、画質や機能の評価用モデルではないため、ここでは外観デザインの検証に留めている。また、XDV-D500の発売後も、XDV-100はベーシックモデルとして併売される。
まず気がつくのは、初代の金属外装から樹脂外装に変更されると同時に、艶やかなブラックとホワイトの2色展開となったボディだ。XDV-100にもシルバーの他にブラックモデルも用意されているが、ガンメタリック風であり、金属筐体のディテールと併せて男性ユーザーを意識した印象がある。これに対し、XDV-D500は、ワンセグ視聴可能地域の広がりとともにユーザー層の拡大を目指そうとするソニーの意気込みが、デザイン面からも感じられる。
テレビとラジオの切り替えスイッチを、録画データへのアクセス機能などとまとめてファンクションキーに割り当てるなど、操作系も整理され、特に、よく使う機能には右手の指でアクセスできるようになっている点が優れている。
XDV-D500は、樹脂ボディでブラックとホワイトの2色展開。併売される初代モデルのXDV-100では40〜50代の男性ユーザーをターゲットとしたヘアライン仕上げのアルミ筐体が採用されたが、今回の上位モデルはユーザー層の拡大を意識したデザインとカラーリングだ
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よく利用する機能ボタンやスイッチ類は、右手で操作できる位置に集中して配置されており、XDV-100よりも多機能化しているにもかかわらず、手際よくまとめられた。スクリーンは、3.0インチのソニー製ワイド液晶パネル
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一方で背面は、ソニーが得意とするプロテイン塗装系のしっとりした表面処理で、手にしたときの肌触りも良く、操作時の滑り止めも兼ねる優しい仕上がりになっている。過去の製品では、使い込むうちに角部分が剥げてくるなど、経年変化に弱いところも散見されたが、常に直接手にして使用する製品ではなく、塗装技術も進化していると思われるので、この点はあまり心配いらないだろう。
耐久性という点では、最も頻繁に利用すると思われる電源ボタンと、選局/決定スイッチの文字のみプリントではなくモールドによって刻まれている。これは、指との擦れなどによって消えないようにとの配慮と思われ、細かいところまで行き届いた配慮を感じる。
他にも、意識して操作させるべき録画スイッチは、上面左側にスライド式で設けて誤動作を防ぎ、イヤフォンとスピーカーの出力切り替えスイッチ(スピーカー使用時にも、イヤフォン端子にヘッドホンアンテナアダプタをつなぐ可能性があるので必要)はイヤフォン端子近くに配して関連づけるなど、基本を押さえた構成が心地よい。
背面は、プロテイン塗装と思われるしっとりした仕上げで、手に持ったときの感触も良く、滑り止めの役目も果たす。左上の脚部にはストラップのアンカー、同じく右上にはアンテナが組み込まれている。
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筐体のベースカラーに応じて、ボタン表示の文字色やメタリックパーツの色合いも調整されているが、選局/決定のためのスイッチのみ文字がモールドになっている。これは指が上下に擦れるので、表示の耐久性を上げるためと考えられる。使用頻度の高い側面の電源ボタンも同様だ
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充電スタンドはシンプルな形状だが、ACアダプタのコネクタプラグを内包してすっきり見せる工夫にもソニーらしいデザインセンスが感じられる。
欲を言えば、XDV-100には、脱着式のスタンドが携帯時には液晶カバーにもなり、そこにイヤフォンケーブルが巻き取れるというアイデアも見られたので、今回の充電スタンドがキャリングケースを兼ね、本体と一緒に持ち運べたり、イヤフォンケーブルやヘッドホンアンテナアダプターを格納できるようになっていても良かったかもしれない。
同梱される、本体カラーと同色の充電スタンドは、机上での視聴に適した角度で本体を支えるほか、外部アンテナ端子も備えている
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一見するとスタイラスペンのようなアンテナは、根本まで引き出すことで自由に角度調整が可能となる。イヤフォン端子は、同梱のヘッドホンアンテナアダプタの接続用の独自形状が採用された
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ACアダプタのコネクタプラグは、本体のDC IN端子には直差しとなるが、充電スタンドに差し込む場合には、底面のポケットに収まり、外側に出っ張らない。このあたりの処理が、いかにもソニーらしい。
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同梱のキャリングケースはソフトなレザー調で、カバーの折り返し方によって簡易スタンドにもなり、特にブラックモデルではスティッチの色を赤にしてアクセントとするなど、かなり洒落た作りになっている。
ワンセグのちょっとした視聴であれば複合デバイスでも事足りるかもしれないが、放送受信の基本機能や録画機能を重視する向きには、XDV-D500のような専用機のデザインは大いに満足の行くものだろう。
これで、放送のデジタル化によって、番組内容の質も自動的に向上してくれると、さらにありがたいのだが…。
落ち着いた印象の付属キャリングケースはレザー調。カバーを開けて裏側に回すことで簡易スタンドとしても利用できる
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本体を差し込んだままの状態でもすべての機能にアクセスできるように、キャリングケースには、スピーカー穴やDC IN端子のための切り欠きが設けられている
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