moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com |
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●デザインの展示とは
10/26−11/4は、例年のように東京は各所でデザインイベントが開催されてます。今年はDesignTideがなくなって「ANY TOKYO」など小グループの展示やトークが増えた。一方ミッドタウンには「2013年度グッドデザイン賞受賞展」、21_21は「日本のデザインミュージアム実現にむけて」展。などなど。
http://anytokyo.com/2013/
http://www.g-mark.org/gde/2013/index.html
http://www.2121designsight.jp/program/design_museum_japan/
デザインは商業美術なんだけど、ときどき展示をする。新製品発表、海外の動向、実験的プロトタイプ提案や回顧展。モノだけでなく使い方からのライフスタイルの未来を見せたり、普通とは違う協業とか、斬新な視点とか。単純に「デザインへの関心を高める」目的だったり。服飾デザインだったら新しいアイデアの源として過去のコスチュームやテキスタイルのアーカイブ展示がある。
デザイナーのアウトプットのことを「仕事」というか「作品」と言うか、一家言言いたくなるもやもや。
現代の商品寿命の短さ、個々の完成度よりも時代の臭い、ブームを感じてしまう。今売られているモノで将来の名作デザインってなんだろか。
デザインミュージアムでどんなものが見たい知りたいのか。
●国立近代美術館で
ちょっと異彩をはなっているのが東京国立近代美術館(MOMAT)の「現代のプロダクトデザイン−Made in Japanを生む」。
http://www.momat.go.jp/Honkan/productdesign2013/index.html
「国立」の「近代」の「美術館」で「現在の若手中堅デザイナーの流通している商品」を作品として展示している。そしてピックアップされた人たちが、木工キャンプやスリッパ展でご一緒した大治将典さん他、私より10歳くらい若い人たち(とはいえ独立系デザイナーとしては先輩)。
MOMAT館長曰く「行動するデザイナー」、普段はデパートやデザインショップなどで販売されているが、"ててて見本市"など、自分たちでもイベント立ち上げて販売したり。「センヌキデザインプロジェクト」のように複数のデザイナーでそれぞれが作り、イベントをからめた新しい動きをやってみたり。そして小泉誠さん、城谷耕生さん、NUNOの須藤玲子さん。
日本国内の地場産業(陶器、鋳物、木工挽物、漆など)と組んで商品をリリースしている。マジメで基本のカタチをはずれない、技の美しさが引き立つデザインをしている。セレクションがほとんど食器、というのはMOMATのテイストなのか。
初めてMOMATで、というのを聞いたときの印象。竹橋という場所柄か、なんとなく皇室ご用達っぽい、それこそ前回の東京オリンピックの時代のような、おっとり感。Cool JapanじゃなくてMade in Japanですよ。
レセプションにはジャケット着用? なんて心配をする人までいた、イギリスならデザイナーでもロイヤルに近い場面がちょくちょくあるようで(だからロンドンオリンピックなど公式行事でも開会式/閉会式の出演メンバーや起用デザイナーがちゃんとキャッチアップされてるんじゃないのかと思う)。
とはいえ、コレクションを見ると美術の教科書で見たような明治以降〜昭和の絵画彫刻から雑誌の表紙までアーカイブされていて、解説も美術鑑賞ビギナーが関心を持てるように配慮された文面だった。もともとデザイン関連を紹介する動きはあるそうで、過去にも小松誠さんや柳宗理さんの展覧会があった。
http://www.momat.go.jp/Honkan/Makoto_Komatsu/index.html#advice
http://www.momat.go.jp/Honkan/Sori_Yanagi/index.html
私のように家電イケイケの時代にメーカーでデザインを行ってきていると、「キビシい条件」に縛られているようでいて、それにもたれてしまうデザインが身についてしまっている。家電らしさ、ミドルレンジらしさ、ブランドらしさ、他社競合に勝つ、市場にニーズに合った、旧製品と比べてリニューアル感、使いやすさ、設計条件、量産条件、流行り廃りがある、欲しくなる次世代を感じるキャッチーな新しさ、など。
そういうのとは一線を画した、静かで、ほんわり温かい、小規模生産のクラフト寄りのデザイン。一品ものほど技巧を凝らした外観ではない、平凡な身の回り品の普通の範囲内をやり過ぎにならないように繊細に探っているようなバランス。ピュアでどきどきする。展示ではデザインのプロセスや製造の現場に関する展示はない、モノが置いてあり、作者の名前と生年が書いてあるだけ。ブツの存在感だけの展示。
出展者の山崎宏さんが「いやあこれは事件ですよ」と言っていた。今動いているデザインは、美術を語るときに外に置いておく「価格」経済との結びつきがあるから、国立近代美術館のテリトリー外だと思っていた。
今作られている「美しさ」「クリエイティビティ」にも関心があるんだよ、と「国立美術館」に言われているような。静かで気迫を感じる展示です。
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