moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com |
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●オーディオマニア今昔
モーターショーは昔のイセッタイメージのモビリティが出展されたんですかね。いいですね。
FFTのときにお話ししたDENというスピーカーを作っている田崎さんという人の話を聞いてきました。
http://www.den-sound.com/
そもそもオーディオマニアという人種は絶滅していく運命だと思っていたのに、30歳代そこそこの人が1人でスピーカーを作って販売している。それが高じて家具職人になり、今では特注家具や内装まで手がけているそうだ。
ワインと同じく機器や合わせ方によって音が変わる、聞いてるその場では差は分かるのだが、どれが好きなのか決めきれない。正直耳より外観イメージ先行でマニア蘊蓄ききかじりです。
新人の頃、先輩デザイナーや商品企画の人達でオーディオマニアな話、何言ってるのか分かりたいし。プロダクトデザイナーとしてオーディオの金属使いや文字やつまみのレイアウトなど押さえておきたいと、リビナヤマギワなど行ったものです。
ピッチの細かいスピン、レコード挽きや細いダイヤカット、精緻感のある書体とか、デッキ自体のプロポーションとか。青く光るマッキントッシュのインジケーターがかっこいいとか。オーディオの「形態が音質に影響する」コマみたいな接地が点のインシュレータがよけいな振動が発生しないとか。スタイルやブランドのヒエラルキーがはっきりしてそうだな。純金のコードがウン万円/mとか。部屋一杯でっかいスピーカーセットの前で、クラシックかジャズを眉間に皺寄せてコーヒー、あるいはガウン着てブランデー、なのだろうか。そういえば昔ながらの「名曲喫茶」「ジャズ喫茶」も減ったのでしょうか。
http://www.electori.co.jp/mcintosh.html
http://www.esoteric.jp/products/tannoy/
私の場合、もともとはラジカセとウォークマンという全然こだわってない音楽環境。結婚して、夫はそこそここだわっていたので、マランツのアンプ、ヤマハのレコードプレーヤー、JBLのスピーカー。そこにCDが加わり(端正なkenwood)、MDが加わり(ちょっとDJ気味なVestax)、スピーカーをコンパクトなB&Oに買い替え、一方VHSだのレーザーディスクだのプロジェクターだのAV機器(そしておびただしい背面の配線)が増えて、正直しんどくなった。そこでiPod、iTune登場で一気にシュリンク、現在一番音楽を聞いているのは実は車の中という状況。
http://www.harman-japan.co.jp/jbl/
http://beostores.bang-olufsen.com/japan/welcome?lang=jp
http://www.vestax.jp/
http://www.marantz.jp/jp/pages/home.aspx
スピーカーもいろんなカタチがある、球体が理想だそうです。そっかそれで佐々木硝子がガラス球の作っていたのか。とはいえ、これが奇をてらって見える。DENのスピーカーも第一印象は鬼太郎の目玉オヤジだなあ。
でも球体の木材は見た目がかなり穏やか。MDFを断面で切って積層して接着し、外観を滑らかに仕上げている。無垢の木で作ったらなどと言う人もいるかもしれないが、MDFでも木材っぽい印象。内側に積層した段々ができるのが「小さなコンサートホール」なるほど。
3D形状にシェイプされた木材の塊は床やソファにごろんと庭石のように転がしたらぐっと雰囲気が良くなりそう。お腹に抱えてするする撫でてもしっくりきそう。丸い木の球からの音はキンキンしてないまろやかな音で、ああなるほど。ひょっとしたらギターやドラムのような抱える楽器のような聞こえ方しそうだ。楕円球の方が高音/中音/低音のエッジがはっきりと高解像度で、小さい音でもクリアな印象。カタチと音が似ていて面白い。
mp4はファイルを圧縮しているので、レコードなんかに比べると音源としては良くないんですよね、と言いながらもiPhoneつないでmp4を再生(試聴した音楽ジャンルがレゲエとかスカ、土っぽい臨場感系というか)ああ、手軽に背伸びしすぎないでオーディオ生活レベルアップだなあ。
●こだわりからバランスへ
今の30歳代の人達はDJブームと野外フェス、クラブで重低音一辺倒かと思ってましたが、オーディオマニアという人種は一定数いるそうで、最近コンパクトで低価格、サラウンドなどのスピーカーユニットも開発されているそうです。そういうパーツを組み合わせで音が変わるのは若い人でも面白くて、自作スピーカーという趣味も若年層に引き継がれているとか。実験ぽいのはむしろ真空管アンプ自作に通じるのかしら。80年代のマニアというのは「部屋のサイズ分不相応にお金と体積がかかる」ようなこだわり至上主義だった気がするし、時代としてもお金かけてなんぼみたいなところもあったんじゃないのか。いちいち精度の細かいベクトルに極まって、それを実現するためにどんどん大掛かりになるというか。
今の人は「12畳の部屋ならこのサイズで十分、音を小さく絞ってもクリアに聞こえる」などバランスやパフォーマンスのいい範囲で取り回しよく楽しんでいるようです。ただ現在でも床を這うコードの煩雑さは未解決だそうで、BlueToothでは音が悪くなるし、というのが悩みどころだとか。
田崎さんも自分で製品を発信して後進に伝えていかないと仕事/経営として立ち行かなくなるんでスピーカー制作販売を軌道に乗せたいし、内装や家具と組み合わせて木工全般(合板曲げやスチーム曲げなども自分でできるので、試作ご相談くださいとのこと)ができることが強みと自覚しているとのこと。ちゃんと自分のやりたいことと事業として回していくこと両方を見ているんだなあ。
一点もの現場で臨機応変な内装の仕事と緻密なスピーカーや椅子の組み立てと、同時進行でやれるんですか? と訊いたら、精度/こだわりの違いを仕事によって切り替えれるようになりました、とのこと。イマドキの30歳代、逞しくバランスいいなあと思いました。
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