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Product Design WEBプロダクトデザインの総合Webマガジン * NewsSpecialInterviewColumnReviewTechniqueCase StudyData & LinkEditor's NoteContact Us
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Column Index
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pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン ●世界の中の日本デザイン
第20回:電話ボックスのデザイン
第19回 書店のデザイン
第18回 オリンピックマスコットのデザイン
第17回 サービス、個性をデザインする今どきのホテル
第16回 ダイバシティベースのデザイン、各国のマクドナルド
第15回 世界各国の官邸のデザイン
第14回 サッカースタジアムのデザイン(後編)
第13回 サッカースタジアムのデザイン(前編)
第12回 世界各国の寿司のデザイン
第11回 最新の日韓カーデザイン事情
第10回 スマートフォン以前の携帯電話
第9回 シリコンバレーのWebデザイン
第8回 中国の建築、日本の建築
第7回 椅子のデザインにみる日本と欧米の違い
第6回 世界のコインのデザイン
第5回 アジアの冷蔵庫
第4回 消耗品にも装飾品にもなる爪楊枝
第3回 形状や素材からみる日・中・韓の箸のデザイン
第2回 円盤形ロボット掃除機の米韓日を比べる
第1回 スモールカーの「Cube」と「Polo」は何が違う?

●女子デザイナーの歩き方
第66回:今時のオーディオマニア
第65回:デザインとミュージアム
第64回: 失敗や不安に向き合うのはしんどいが大事だ
第63回 栄久庵氏とGKのこと
第62回 日本唯一のエボナイト工場見学
第61回 新しいカタチを探してる
第60回 手仕事以上に手の痕跡
第59回 食品パッケージ萌え
第58回:未来を語るとクロスオーバーとかボーダーレスというのか

※第1回〜第57回の記事はKindle書籍にて購読できます(2014年1月刊行予定)



●モバイルデザイン考
第73回:ロンドン発のワイヤレススピーカーアンプ「The Vamp」
第72回:全天周パノラマ撮影が可能な「RICOH THETA」
第71回:ニュージーランド生まれの折りたたみ式新交通手段「YikeBike」
第70回 ジェスチャーでパソコンを操作するLEAP MOTIONコントローラー
第69回 3Dプリンタによる「自作電子消しゴムケース」
第68回:電気が途絶えた非常時にも利用できるLEDランタン「ルミンエイド」
第67回 ワイヤレス共有メモリという新しいデバイス、キングジム「Packetta」
第66回 ソーラーパネルやハンドルで電気を自給自足するデジタルカメラ「SUN&CLOUD」
第65回 ボディデザイン、機能、操作性で新境地を拓いた「PowerShot N」
第64回 スライド開閉式キーボード、エレコム「TK-FBP049E」を試す
第63回 ポストジョブズの製品「iPad mini」のディテールを見る
第62回 iPad用スイング・アクティベーション・キーボード「TK-FBP048ECBK」
第61回 ブラック・アンド・デッカーのジャイロスクリュードライバー「 GYRO36」
第60回 ジョブズのいないアップルが生んだ「iPhone 5」に見るデザインの変化
第59回 キャンプなどでの調理やUSB給電が可能な薪コンロ「BioLite CampStove」
第58回 来るべき3Dプリンタ革命の第一歩、低価格キット製品の「Printrbot」
第57回 コンセプトの違う2つのiPhoneカバー
第56回 モホックの便利機能を持った折りたたみ傘「スマート・アンブレラ」
第55回 ティーンネイジ・エンジニアリングのポータブルシンセサイザー「OP-1」
第54回 ロジクールのコンパクトなモバイルマウス「Cube」
第53回 iPhone 4/4S用アルミニウム削り出しケース、入曽精密「REAL EDGE C2」
第52回 狙って撮るだけのプロジェクター付きビデオカメラプロジェクター 、3M「CP45」
第51回 iPhone 4/4Sで360度VRビデオが気軽に楽しめる「GoPano micro」
第50回 ”少しいいこと”をして作られたiOSデバイス関連プロダクト群「サンプルプロジェクト」
第49回 3代目でさらに進化したプロジェクター内蔵カメラ、ニコン「COOLPIX S1200pj」
第48回 独自の付加価値を実現したデジタルフォトフレームパロットSpecchio/DIA
第47回 画期的な構造の次世代自転車 「mindbike(マインドバイク)」
第46回 3Mの最新ポケットプロジェクター「3M MP180」
第45回 確かにスマートなiPad向け新機軸アクセサリ「SmartCover」
第44回 iPhoneで揺れの少ない動画が撮れる「Steadicam SMOOTHEE」
第43回 第6世代iPod nanoをプレミアムウォッチ化する「TikTok+LunaTik」
第42回 ポータブルスピーカーの機能と性能を革新するジョウボーン「JAMBOX」
第41回 iPhone 4専用三脚アダプタ兼スタンド「Glif」"
第40回 デザイナー/クリエイターをリスクフリーで支援する"Kickstarter"
第39回 G-SHOCK的発想のケータイ&iPhoneケース「X-STYLE HARD CASE」
第38回 再び新たな原型を作り出したアップル「iPod nano」
第37回 さらに進化した高遮音性イヤフォン、シュア「SE535」
第36回 アップル「iPhone 4」
第35回 パロット「Zikmu & Grande Specchio」
第34回 アップル「iPad(16GB Wi-Fiモデル)」
第33回 ソニー「ドックスピーカー/RDP-NWV500」
第32回 Evenno「Fingerist」
第31回 Think Tank Photo「ローテーション360」
第30回 ソニー「ブロギー/MHS-PM5K」
第29回 アップル「Magic Mouse」とロジクールの2つのマウス
第28回 新しいスタイルのデジカメ登場リコー「GXR」
第27回 デモバイルな工夫を感じる折りたたみ傘「センズ・アンブレラ」
第26回 デジカメの1つの進化系を実現したニコン「COOLPIX S1000pj」
第25回 フェールラーベンの多機能バッグ「ディペンドラートラベルバッグ」
第24回 民生用3Dデジタルカメラ、富士フイルム「FinePix REAL 3D」
第23回 デジタルで復活した名機「オリンパス・ペン」
第22回 電子ペン、MVPenテクノロジーズ「MVPen」
第21回 ソニー、サイバーショット「DSC-HX1」
第20回 キヤノン28mm12倍ズームデジカメ「PowerShot SX200 IS」
第19回 ソニーデータプロジェクター「VPL-MX25」
第18回 デジタルカメラ付きプリンタ「XIAO」
第17回 VGA/ビデオ両用のポケットプロジェクター「3M MPro110」
第16回 実用域に達した真にポケットサイズのプロジェクター
第15回 光学のニコンが送り出すヘッドマウントディスプレイ「MEDIA PORT UP」
第14回 薄さと機能向上の絶妙なバランス「iPod nano 4G」、「iPod touch 2G」
第13回 モバイルデバイスの充電ソリューション「The Sanctuary」
第12回 徒歩や自転車にも対応するPND「nuvi 250」
第11回 「iPhone 3G」が到達したデザインに迫る
第10回 モバイルスキャナPFU 「ScanSnap S300M」
第9回 ソニー リニアPCMレコーダー「PCM-D50」
第8回 携帯するテレビの1つの到達点ソニー「XDV-D500」
第7回 文具に潜むモバイルデザインのヒント
第6回 ワイヤレス時代の極薄フルサイズノート「アップルMacBook Air」
第5回 モバイルデザイン十ヶ条
第4回 ソニー パーソナルフィールドスピーカー「PFR-V1」
第3回 iPodケース3点〜きわみ工房「Re-nano」他
第2回 アップル「iPod touch」
第1回 三洋電機「Xacti DMX-CA65」

●デザインの夢
第10回 アメリカの抱える問題点に触れた:その2
第9回 アメリカの抱える問題点に触れた:その1
第8回 カーデザインを取り巻く状況
第7回 不況時代のサバイバル
第6回 ブラウンのデザインの変化
第5回 欧米と異なる、日本のデザインスタイル
第4回 不明瞭な「デザイン」という概念
第3回 フィリップ・スタルクの引退宣言に思う
第2回 予測不能のマーケット
第1回 夢は終わらない

●経営者が選ぶデザイン
第10回 ミニマリズムとは何か
第9回 電子機器のデザインとモダニズムの限界
第8回 モダニズムから合理的なデザインへ
第7回 デザイン事務所を見極めるヒント
第6回 想像を超えたフリーランスデザイナーへの要求
第5回 フリーランスデザイナーに依頼がくる仕事のパターン
第4回 デザイナーと密接な関係にあるエンジニア
第3回 記録的長時間のプレゼンテーション
第2回 最後は女子社員の多数決ですか!?
第1回 あるワンマン社長とのバトル

●プロダクトデザイナーになるための10の条件
条件その10 説得力
条件その9 社交力
条件その8 計画力
条件その7 協調力
条件その6 統制力
条件その5 表現力
条件その4 展開力
条件その3 応用力
条件その2 解析力
条件その1 観察力

●Buyer's Mind
第2回 東京・青山「SEMPRE」
Part 2 店舗経営のコンセプトと作り手へのリクエスト
Part 1 センプレデザインはどんなショップ?
第1回 東京・原宿アシストオン
Part 3 バイヤーから作り手へのリクエスト
Part 2 顧客ターゲットと品揃えの方法論
Part 1 AssistOnはどんなショップなのか?



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* pd Column
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モバイルデザイン考
第27回:
モバイルな工夫を感じる折りたたみ傘
SENZ「センズ・アンブレラ」
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オランダ生まれの傘、センズ・アンブレラは、強風に弱いという欠点を解消するためにその構造やデザインを見つめ直した製品だ。広げたとき前後非対称の形状になる、センズ・アンブレラのデザインの考え方を探っていこう。
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大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中
* ●日常遣いの傘に見る
モバイルなデザインの工夫

ダイヤモンドフレームの自転車と同じく、傘の基本構造というのは、完成されているだけに、なかなか根本からの革新を行いにくい状況にある。その結果、差別化のポイントは、たいていにおいてカラーリングやグラフィカルなパターンの変更、あるいは素材の軽量化、グリップ部分の形の変更などに集中している。

もちろん、「車輪を再発明する(reinventing the wheel)」という言葉に、無意味な努力をするという意味が含まれるように、すでに完成形があるものをゼロから考え直したり、下手にいじったりすることは時間の無駄と見る向きもある。

しかしその一方では、同じ言葉が、物事を別の視点から見直すという点において重要視されることもある。例えば、自転車でも傘でも、「折りたためる」という属性を付加しようとしたときに、新たなデザインの方向性が生まれた。

オランダ生まれのセンズ・アンブレラは、傘につきものの強風に弱いという欠点を解消するためにその構造やデザインを見つめ直したものであり、日本での発売開始以来、愛用している製品だ。

いつもはデジタルガジェット系プロダクトを中心に採り上げるこのコーナーだが、今回は少し趣向を変えて、このセンズ・アンブレラを見ていこう。

一目で気づくのは、その前後非対称の形状である。折りたためないオリジナルモデルは、より直線的な形をしており、拡げたときの大きさは890×930mm。折りたためるミニモデルは、キャノピー(傘布)部分に張りを持たせて強度を確保するために拡げるとやや湾曲した形状になるが、850×920mmとほぼ同等のサイズが確保されている。

この後部の長い独自の形状が風の流れを巧くいなし、キャノピーに無理な力がかからないようにするとともに、裏返る(いわゆる、おちょこの状態になる)ことを防ぐ。


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センズ・アンブレラは、オリジナルと呼ばれる標準タイプ(7,140円)で風速100km/h、ミニと呼ばれる折りたたみタイプ(5,250円。写真)で同60km/hの強風に耐えるというオランダ生まれの傘だ

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キャノピー(傘布)部分を前後非対称とし、空力的なフォルムに仕立てることで、風を「いなす」構造になっている。筆者が所有するのはミニモデルであるため、記事中でもその写真を使用している
また、バックパック姿で移動することも多い筆者にとっては、その長めの後部がちょうどよい雨よけとなり、一般的な形状の傘よりも荷物を濡らさずに済むようになった。

ミニモデルは、折りたたむと全長約270mm。今や、これよりも小さい携帯用の傘は多数存在するが、上記のキャノピーサイズと形状を、十分コンパクトなサイズに落とし込んだ点は評価できる。


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折りたたんで付属の携帯用袋に入れたところは、とりたてて普通の傘と違う部分は感じられない。この状態で、柄から先端部分までの全長は約270mmで、重量が260gだ
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グリップの部分は樹脂にソフトなウレタン巻。グリップ自体がやや短めに感じるものの、実用上は問題なく握ることができる

折りたたみ傘は、折りたたみ時の全長を抑えることを優先して、最小限のグリップしか付けていない製品もある。センズ・アンブレラのミニモデルもオリジナルと比べればグリップサイズが小さいものの、ウレタン巻の表面加工がなされ、しっかり握れるようになっている。

安全性についても留意されている。石突きや傘骨の先端は樹脂パーツでカバーされ、そのすべてにセンズ・アンブレラを使うユーザーの姿を図案化したロゴが入っているほか、傘を開く際に独特の形状が周囲の邪魔とならないように開閉用ボタンの位置を決めるなど、細かい気配りがあるのだ

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強風にセンズ・アンブレラを差して立ち向かう人を図案化した石突き部分のロゴ。同様に、傘骨の先端部分もロゴマーク付きの樹脂パーツでカバーされている
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開閉用ボタン(開閉自体は手動式)はキャノピーの骨が短い側にある。実際に差すときとは持ち方が逆となり、傘を差す際に長い側の傘骨が邪魔にならないように考えた結果でもあるが、それが一番安定し、周囲に迷惑をかけない安全な開き方にもなっている


前後非対称の構造と折りたたみ機構を両立させるにあたっては、かなり知恵を絞ったようで、全8本の傘骨の内、前寄りの6本の屈曲箇所は2ヵ所だが、後部の長い2本のみ3ヵ所となっている。そのため、後部2本の傘骨のみ、軸との接合部分での折れ曲がりの方向が異なり、それを支える補助骨の取り付け方もユニークだ。

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柄は三段式の伸縮構造。折り皺からも分かるが、キャノピーの折りたたみ方法にはかなり知恵を絞った跡が伺える

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その折りたたみ構造を支える骨のディテールを示す。赤丸で示すように、短い傘骨は2ヵ所、長い傘骨は3ヵ所で折れ曲がるほか、根本部分の支えの補助骨も矢印のように異なる方向から傘骨に接続されている
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このような構造になったのは、傘骨を構成する本数が、奇数の箇所と偶数の箇所があるためだ。見た目の複雑さとは裏腹に開閉はスムーズであり、日常的に利用しているが堅牢性も十分あると感じられる

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もともと欧米人は多少の雨では傘を差さないことも多い。したがって、逆に傘を差すときには、それなりの本降りや嵐の中ということになる。センズ・アンブレラの発想が、雨が多く傘の利用率も高い日本のような環境では芽生えず、オランダから生まれた背景には、そういう習慣の違いも関係しているのではないか? そんなことまで考えさせてくれた、センズ・アンブレラなのである。
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