大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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前々回のこのコラムで、エレコム製のiPad用のケース一体型折りたたみキーボードを採り上げたが、今回は、同ブランドのポケットサイズのスライド式キーボードを紹介する。たまたま同じメーカーの製品となったが、これは純粋に筆者の興味によるもので、どちらもメカニズムやデザイン的なまとめ方にユニークさを感じた。
このTK-FBP049E(14,595円)も、デバイスとはブルートゥース接続されるものの、キーボードとして独立しており、iOSデバイスのみならず、MacintoshやPC、一部のAndroid端末でも利用できる。
ちなみに、この原稿もiPhone 5とTK-FBP049Eを組み合わせて書いてみた。パンタグラフ式のメカを用いたキーボードのキーピッチは17.5mm。個人差もあろうが良好な打鍵感を持ち、折りたたみ式であることを考えれば剛性も十分に確保されている。
折りたたみ時のフォルムはシンプルで、ポケットやバッグの中に入れる際に引っかかることがないような配慮がある。ネジが露出していないのも好印象だ。
携帯時の大きさは、幅161×奥行90×厚み20mmの手のひらサイズ。重量は238g(電池除く)で、筐体色がホワイトとブラックの2色展開となっている。(クリックで拡大)
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底面もシンプルにデザインされ、ネジなどが露出しない設計が採られている。(クリックで拡大)
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横幅は、ほぼフルサイズのキーボードの半分+左右のグリップという感じで、コンパクトにまとまっている。右側のグリップの内部が電池ボックスとなっており、単四電池1本で公称約8ヶ月(アルカリ乾電池利用時)使用できる。
電池は単四型1本(アルカリ、マンガン、ニッケル水素のいずれか)を使用。本体側面に電池ボックスを持つ。電池カバーには指がかりがあるものの、噛み合わせが硬めでやや開けにくい。(クリックで拡大)
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展開手順は簡単かつ直感的で、筐体両端のグリップ部分を持って左右に引っ張ればよい。展開の最終段階で、巧妙なメカニズムが下段のキーボードを引っ張り上げ、段差のないキートップ面を実現する。
筐体の両端を持って左右に引っ張ると、このような状態に展開する。上下2段に格納されたキーボードの中央のカバー部分が、バネ仕掛けでスタンドになる仕組みだ。一部のキートップに見られるブルーのマーキングは、ファクションキーとの併用でデバイス固有の機能が呼び出せることを示す。(クリックで拡大)
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段差を伴って格納されているキーボードが展開時に平らになるメカニズムは巧妙であり、Aのように上側のキーボードの爪が下側のキーボードの突起に接触すると、Bのスロープに沿ってキーボードを引き上げる力が生じる。実際にはスロープが手前と奥に併せて6ヶ所設けられており、キーボードを水平に支えると共に、打鍵時の剛性を確保している。(クリックで拡大)
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このキーボードは、iOSデバイスのみならず、コンピュータやAndroid端末にも対応していることが特徴で、そのこと自体は大いに評価すべきだ。しかし、起動時に常にコンピュータモードで立ち上がり、iOSデバイスで使うために切り替えが必要な点は、メインのターゲットユーザーを考えると、やや疑問が残る。切り替え後は、ホーム画面に戻ったり、音楽再生時のトラックスキップなどのiOSデバイス固有の機能もキーボードから利用できるようになるので、とても便利なのだが…。
電波のシンボルが付いたLEDはコネクトランプと呼ばれ、電源オン時に約3秒間点灯するほか、ペアリングの待機状態やキーボードのモード切り替えを示すために点滅する。(クリックで拡大)
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iOSデバイス側での認識は簡単で、ペアリング待機状態のときにBluetoothの設定画面からデバイス名を選択すればよい。(クリックで拡大)
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また、スタンド部はiPhoneをセットすると上部が少し余ってしまうが、これはキーボードの奥行きに合わせたカバー部を利用していることもあり、致し方ないと言える。もう一工夫して、スタンドが中央までスライドできると嬉しいところだが、構造の簡潔さや耐久性を優先したい開発者の気持ちも理解できる。
スタンド部にiPhone 5をセットしたところ。実用上は差し支えないが、本体に対してスタンドのサイズがかなり大きめに感じられる。また、スタンドのスライド機構を工夫して、キーボードのセンターに位置するようにできれば、さらに理想的だ。(クリックで拡大)
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iPadでの利用も可能だが、この場合には、スタンド部分が少し視界の邪魔になる。スタンドのみをたためる仕掛けが欲しいところだ。(クリックで拡大)
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付属の専用キャリングケースもオマケと考えれば十分だが、もう少しフィット感があるとなおよい。
以上、いくつかの個人的な要望はあるものの、TK-FBP049Eは、基本設計やデザインのまとまり、実用性において、バランスよく仕上げられた製品と言えるだろう。
パッケージにはスウェード調の専用キャリングケースも同梱されている。サイズ的には、もう少しタイトフィットでもよいように感じた。(クリックで拡大)
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