大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
|
明けまして、おめでとうございます!
前回、デザイナー/クリエイターを支援するKickstarterの話題を採り上げたが、このサービスを利用して資金を集め、製品化を行った成功例の1つである、iPhone 4専用三脚アダプタ兼スタンド、グリフが手元に届いたので、これを紹介したい。筆者も、グリフのバッカー(製品化をバックアップするために寄付する人)の1人だったのだ。
さて、iPhoneのカメラ機能は、ファッションフォトグラフ(http://fstoppers.com/iphone/)や、ミュージックビデオ(http://mashable.com/2010/12/02/iphone-music-videos/)の撮影にも使われている。
しかし、iPhoneには、ストラップホールさえも設けないシンプルでストイックなデザインが魅力である。グリフを開発した、ニューヨーク在住のデザイナー、トム・ガーハートとダン・プロボストも、iPhone 4の美しさを損ねずに、三脚に取り付けたり、動画の鑑賞やFaceTime(アップル純正のビデオチャット機能)を使うにはどうすればよいかを考え、グリフの発想に行き着いた。また、その発想ゆえに、iPhone 4専用となっている。
細長いFの字型をしたグリフには、三脚ネジ穴が1つと、iPhone 4をはめ込む溝が2つある。というよりも、この3つの構成要素を巧妙に配置した結果、グリフのフォルムが生まれたのである。
角度によってフォルムが面白く変化するグリフ。形がタイポグラフィーの文字のようだということで、Glyphの綴りを変えてGlifという製品名にしたそうだ。写真は50ドル以上寄付したバッカーに対して製品版の前に送られてきた3Dプリント版であり、表面にざらつき感があるが、製品版は硬質ゴム系樹脂製になる予定
|
|
|
三脚アダプタとして利用する際には、長いほうの溝に、iPhone 4を縁に沿ってはめ込む。iPhone 4は、横使いだけでなく縦使いでも固定でき、後者の場合には三脚穴の中心からは外れるが、実用には差し支えない。
はまり方は絶妙で、溝幅の設定には、それなりの時間がかかったのではないかと思われる。
三脚アダプタとして使用例。iPhone 4をはめ込むための隙間の設定が絶妙で、きつすぎず、緩すぎないが、逆さにしても落ちないほど、しっかりと固定できる
|
|
|
また、スタンドとしての利用には、三脚穴の横にある溝(ギャップというべきか)で、iPhone 4の縁を挟み込むだけでよい。その位置と方向によって、さまざまな角度で支えることができる。
iPhone 4にはめ込む箇所を変えることでさまざまな角度をつけることができ、動画鑑賞からハンズフリーのFaceTime通話までいろいろな応用が考えられる、スタンドとしての利用例
|
|
設置例
|
そういえば、iPhone 4のアンテナ感度の問題は、もう誰も気にしなくなってしまったし、筆者も困っていないが、グリフは、これに関してもささやかな解決法をもたらす存在だ。
携帯時に、iPhone 4の画面向かって左下にある外枠アンテナのギャップをカバーするようにはめ込むことで、(感度低下の原因とされる)手のひらでアースされることがなくなり、さらに、通話時にちょうどよいグリップとなるのである。
オマケ的な用途として、携帯する際にiPhone 4の左下に装着すると、外周部のアンテナのギャップ部分を手のひらでアースすることがなくなり、感度低下をまねかない。ただし、下面のマイクを塞がないように、少しだけ下にずらして装着する必要がある
|
|
|
グリフを改めて見てみると、機能をそのまま形にしただけだが、微妙なディテールの調整でセンスを感じさせるフォルムに仕上げていることが分かる。それが、まさにデザインの力というものだろう。
なお、見事に製品化を成し遂げた2人のデザイナーは、スタジオ・ニートを立ち上げた。彼らの次の作品が楽しみであるとともに、現在、グリフの製品版は、そのサイト(http://www.theglif.com/)から20ドル+送料で購入できることを書き添えておく。
|