大谷和利
テクノロジーライター、原宿AssistOn(www.assiston.co.jp)アドバイザー、自称路上写真家。Macintosh専門誌、Photographica、AXIS、自転車生活などの誌上でコンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のコンサルティングも手がける。主な訳書に「Apple Design日本語版」(AXIS刊)、「スティーブ・ジョブズの再臨」(毎日コミュニケーションズ刊)など。アスキー新書より「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、エイ出版より「Macintosh名機図鑑」が好評発売中 |
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入曽精密と言えば、フォーミュラカーのパーツ加工なども手がける日本トップクラスの精密切削加工メーカーである。その加工技術の粋を集めて作られたオリジナルブランド、REAL EDGEのiPhone保護ケースが「C2 iPhone 4 / 4S用アルミニウム削り出しケース」(12,600円。http://real-edge.com/c2)だ。カラーは、ブラック、シルバー、シャンパンゴールドの3種類が用意されている。
英語では先端的な技術や製品を形容する場合に、刃先などを意味するcutting edge(カッティングエッジ)という言葉が使われるが、REAL EDGEというブランド名には、そういうイメージに加えて、まだ見ぬ夢の実現という想いも込められているという。これは、面や線は実在するのに対し、エッジは面同士が接した部分を指す概念であり、実体がないのにそこに見えているとの考えに基づいている。
切削加工によるアップル製品向けのケースとしては、このコラムで以前に採り上げたファクタスデザインによるファクトロンブランドのものが知られている。
ファクトロン製品が、正面と背面のカバーをモナカのように組み合わせてプロテクション性能を重視しているのに対し、REAL EDGEのケースは、徹底した重量の軽減を狙って分割式のフレーム構造を採用した。実際、ケース自体の重量は21グラムに過ぎず、単体で持ち上げると、その軽さに驚かされる。
パッケージ内には、装着に必要なものが六角レンチを含めて揃っており、開封してすぐに装着作業にかかることができる。この製品も含めて、スクリーンの保護フィルムが同梱されているものをよく見かけるが、個人的には現在のiPhoneやiPadで使われているガラス素材には保護フィルムは不要と考える。
パッケージの内容は、ケース本体、バックパネル、スクリーン保護フィルム、粘着シート付きクッション脚(金属部分をデスク面などに接触させたくない場合に装着)、六角レンチ、取り付け説明書からなる。説明書も厚手のコーティング紙で、こだわりが感じられる。(クリックで拡大)
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ケース本体は、必要十分な強度を確保しつつも極限近くまで削り込まれ、21グラムという軽量性を実現した。装着時に金属同士が接触しない構造が採られており、iPhoneとは四隅のクッション材で接することで、フレームに加わる衝撃が直接伝わらない仕組みだ。(クリックで拡大)
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iPhoneへの装着は、ケースの内側の溝に沿って筐体をスライドさせて行い、下端のパーツを極小ボルトで留めて固定する仕組みになっている。iPhoneとケースは、四隅のクッション材以外の部分では接触せずに、フローティング状態で保持される。また、分割されたフレームの接合面は、噛み合わせによって横方向のズレに対する強度を確保する設計で、まさにエッジの立った加工になっている。
ブランド名であるREAL EDGEのロゴも、すべて切削加工によって刻まれている。。(クリックで拡大)
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二分割されたケースは、六角レンチで締め込む極小ボルトによって接合される。また、接合部の切り欠きの形状を工夫し、合体したときのガタツキを防ぐ構造である。(クリックで拡大)
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さらに、マイクとスピーカーをカバーする部分にはダクトが設けられ、音声が伝わる経路を直角に曲げて前後に通じるようにしたことで、ケースを装着したときに、iPhoneの音声機能を損ねないばかりか、音響特性が改善されるような試みもある。
筐体の下部に開口部を持つiPhoneのマイクとスピーカーに対して、音声が伝わる方向が正面と背面に変わるように、ケースの下端には音の経路を90度変更するダクトが設けられている。(クリックで拡大)
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ケースをiPhone 4に装着したところ。 グリップしやすいように側面が削り込まれていることがわかる。(クリックで拡大)
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ケースを装着すると、iPhoneを手にしたときの感触が一回り大きくなるが、左右の側面を削り込むことで、グリップ部の幅を極力抑えた形状になっている。スイッチ類やイヤフォン端子、ドックコネクタの周辺も大きくえぐられた形状で、操作性やアクセサリとの接続性を確保しているが、すべての周辺機器がそのまま利用できるとは限らない点には注意が必要だ。
ボリューム&消音ボタン周りやイヤフォン端子周辺は、大きくえぐられた形状。イヤフォンは、コネクタがストレート形状のものならば問題なく装着できるが、屈曲タイプはそのままでは差し込めないので、注意が必要だ。(クリックで拡大)
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ドックコネクタ周辺は、純正コネクタの形状や寸法に準拠していれば、ケースを装着した状態でアクセサリが利用できるように開口部が確保されている。(クリックで拡大)
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樹脂製のバックパネルにも凝った切削加工が施され、高級感を演出しているが、パターンのデザインは好みが別れそうだ。iPhone 4/4S本体の背面も容易に傷つくことはないので(ただし、一点に力が集中したときには割れやすい)、これも装着せずに済ませられるようになっていても良いだろう。現状では、バックパネルの装着を前提として寸法が割り出されているため、着けない場合には緩みが出てしまう。
バックパネル自体は樹脂製だが、これも切削加工によって幾何学的なパターンを刻むことで、光の反射が微妙な色合いや陰影を生み出すようになっている。こちらの加工面がiPhone本体側となり、装着時に外側に来る面は平滑で汚れにくい。(クリックで拡大)
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ケース装着時の背面。バックパネルを透過して、うっすらとアップルマークが見える。(クリックで拡大)
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C2 iPhone 4 / 4S用アルミニウム削り出しケースは、金属製の軽量なiPhoneプロテクションケースを求める層にアピールする製品と言える。一方、最近では、GoPanoのように専用ケースを前提とするiPhoneアクセサリもあるため、それらと交互に使うことを考えると、今後は、装着時の強固さとともに、脱着の容易さも実現するケースが求められるようになりそうだ。
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