moviti/片山典子
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
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ジョブス、どうなんですかね。いやそれより中東の動きもすごいけど、な今日この頃です。梅が咲いてます。
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さて甘ショッパイ80〜90年代なデザインを今見たらどうなんだろう。テイストが濃すぎて好き嫌いがはっきりしてたのと、バブル時代との結びつきが強すぎたから、脳の奥に「思い出」としてしまっていて、ちょくちょく出てきそうになるのをぎゅっと押し込んでる、みたいなところもある。倉俣史朗とエットレ・ソットサス展。
http://www.2121designsight.jp/
倉俣さんが活躍していた当時、私は大学生〜社会人。ポストモダンとかメンフィスとか含めて翻弄されました。 それまでの機能的合理的な発達進化をしていたデザインが、いきなりお伽噺を語り出したのだ。あえて表層的でデコな要素で構成された家具。キャンディみたいな色で唐突な形の連続、アンバランス、ボリュームとエッジ。一本調子なくらい影の無いかわいい明るさや、どこかヨーロピアンクラシックな価値観が戸惑わせる。ゆるいドローイングが困惑させる。
スタンスが確立された建築家達が市場を舞台に実験してる? ポップとゴージャスを読み取ったらいいのか? なんでこの形/色やねん、なんでこれを作ったんよ? 実験? 思いつき? 戦略? 職人とデザインのワークショップ? 見る側へのリトマス試験紙? できたてならともかく、古びてきたらどうなるの? アートとかコレクターズアイテム? で、このデザインは自由なの?
まあ元々が建築−インテリア発想のムーブメントなんで、出発点がより哲学的なんだろうけど、プロダクトデザインサイドでもポストモダンテイストの家電とか当時あったなあ。炊飯器とか。
その中でも倉俣さんのデザインは繊細で詩的テイスト。アクリル、ガラスの透明感とカラーアルマイトとかメッキされたラス網とか、ぶっきらぼうにカットされたパイプの組み合わせ。イタリアンムーブメントともまた異なる心許なくなるような浮遊感。イッセイミヤケのショップの表面の透明感とソリッドな塊感に幻惑と違和感を感じた。今思うとあの頃東京にいて見ることができたのは、貴重な体験だったのだろう。
ミスブランチ、なんでバラの造花が封入された椅子をみんな絶賛するのか?(あれも脚の角度と埋まり具合とかアクリルの厚み、悩むよなあ)座り心地から遠ざかりつつある椅子のかたちをしたモノ。今見てもすっと心に入ってこない、読み解こうと脳がザワザワする。そういえば当時「オブジェ」という言葉をつければ何でも存在理由ができた、背伸びして多様性をみんなで探る時代。
?がいっぱい浮かぶ。今のデザインの「分かり易さ、共感しやすさ」とは違う。
一方作る現場としてはデザイナーの想像力の無茶振りvs工場、職人の実現力と心意気のガチ勝負。意外と人間くさいアルチザンなやりとりだったのだろう。なかなか実現できないだろうが、素材の可能性は広がったのだろう。
今みたら、以降のデザインに影響を与えたディテール満載。わからない、なんでやねんと思いつつも確実に潜在意識に沁みていた。 この展示では安藤忠雄さんの建築/五十嵐久枝さんの展示、特に照明(MAXRAYすごい)で作られる影が本当に美しく、つい家具の脚もとを見てしまう。ハウ・ハイ・ザ・ムーンの網状の影と実体のメッキ表面の二重にぼやけたイメージ。モノの見せ場って床との関わりは大事だなあと再認識。
80年代にオトナがこんな活動をしていた、それをアレッシとかスタルクが商品としての完成度に昇華していく。より軽やかで道具に立ち戻ったマイケル・ヤング、ロン・アラッド等のロンドンのムーブメント、ドローグに?がっていく。プロダクトデザインのスケールに立ち戻って身体感覚、アフォーダンスに結びつけ、分かり易く静的にしたのが深沢直人さん。と21世紀の今21_21にいて振り返ってしまった。
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数年前からソットサスの本棚はちょこちょこ見かけることがあって、「なんかフラットな気持ちで見てみたら、面白いコンポジションだな」と思うようになっていた。
ソットサスのガラスのオブジェのサイズにも驚いた。やっぱ器のデカイひとだと単純に思った。
夢のボリューム、モノになったときの存在感がまさに物理的な重さになってる。最新のケータイデバイスの"持ち歩ける極薄の窓"としての存在感、との対極。
うん、懐かしい以上のものを感じた。若い世代の人はどう感じるのかな。
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