画像1:練習会場でのスケッチ(クリックで拡大)
画像2:最初のイメージモデルの写真(クリックで拡大)
画像3:今回の成果物であるアスリート用大腿義足のスケッチ (クリックで拡大)
画像4:上に同じ(クリックで拡大)
画像5:アスリート用大腿義足の写真 (クリックで拡大)
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私のスケッチ
このコラムでは毎回第一線のプロダクトデザイナーの方々に、製品化されたモノの初期のスケッチを披露していただきます。デザイナーは何を骨子とし、それはどのように製品に投影されていったのでしょう。
スポーツ用義足をデザインしようと考えたのは、映像でそれを見たときに、人と人工物の新しい関係が見えたような気がしたからである。
学生達とともに、少しずつ情報を集め、関係者の話を聞き、医療の現場や義足アスリート達の練習会に参加しながら、何ができるかを考えることからスタートした。彼らの切実な状況に、デザイナーなど必要とされていないのでないかという恐れを抱きながらの手探りのスタートだったが、彼ら彼女らの走り、跳躍する様を夢中になってスケッチするうちに少しずつ問題点も見えてきた。最初の1枚はそんな練習会場でのスケッチである(画像1)。
従来の義足は、多くの場合服の下に隠されてきた。形を整えると言えば表皮をかぶせて本物の足に見せることだけだった。しかし、スポーツという機能優先の世界では、選手達も義足を隠すことをしない。観衆も眼を背けることなく応援する。そこに本当に美しい義足があれば、選手たちと、見守る人々の気持ちを、変えていくことができるかもしれない。そんなことを思いながら、最初にイメージモデルを作った。選手達や義肢装具士、メーカーや関係者に私たちが行おうとしていることの目標を示すために、自分たちだけで作ったイメージモデルである(画像2)。
このモデルはさまざまな啓蒙活動に使われ、その努力が実ったのか、プロジェクトは「スポーツ用義足の膝継手、板バネ等の開発」として、平成21年度障害者自立支援機器等研究開発プロジェクトに採択され、株式会社今仙技術研究所および財団法人鉄道弘済会と共同で開発が始まった。
現実的な要望に基づいて開発アイテムを絞り込み、設計を進めながら描いたスケッチが次の2つである。機能に即して最小限に設計する一方で、人の身体とのラインの親和性に気を配っている(画像3、4)。
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当初のモデルは、膝下切断者のための下腿用義足でもあり、あくまでもイメージモデルであったので、この段階ではがらりと変わった。逆に、調査と構想に時間をかけた分、この段階のスケッチは、ほぼそのまま最終的な成果物となっている(画像5)。
現在、全国にいる約30人の義足アスリート達に使用してもらいながら、さらに改良を進めている。
●写真:清水行雄
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