はなあかりのメモスケッチ (クリックで拡大)
かたちを探すスケッチ (クリックで拡大)
「はなあかり」の完成品 (クリックで拡大)
|
|
私のスケッチ
このコラムでは毎回第一線のプロダクトデザイナーの方々に、製品化されたモノの初期のスケッチを披露していただきます。デザイナーは何を骨子とし、それはどのように製品に投影されていったのでしょう。
この2つの手描きスケッチは、2009年9月に美濃和紙のプロジェクト「かみみの」(http://www.kamimino.jp/)で発表した、雪洞のようなLED照明「はなあかり」(http://www.kamimino.jp/shop/12hanaakari.html)のために描いた。
私が手描きでスケッチするのは、おおよそ2つのパターンがある。
1つは浮かんだアイデアを書き留めるためのメモスケッチ。電車の中や待ち時間、お風呂の中など1人でボンヤリしているとき、たいていアイデアはやってくる。だから紙もいい加減で、チラシの裏やメモの端切れに自分にしか分からない記号のような絵を描きつけている。
もう1つは、かたちを探すスケッチ。のびのびしたストロークで実物大に描く。押さえておきたい寸法のアタリの上から、求めている線を探す。画材はやわらかい濃色の色鉛筆が、気負うことなく曖昧な線を重ねることができるので好みだ。その見つけた線をそのままスキャン&トレースして外形データに起こすことも少なくない。
この「はなあかり」は、美濃紙の薄く透明感があるという特徴、またメーカーの提灯や雪洞を作る技術を生かしたいとアイデアを進めてきたものである。紙の重なりから透過するあかりを美しく見せることを「花」として表現することはわりとすぐに決まったが、それがモノとして「どのように在るか」を探りあてるのに苦心した。ある日、あかりの 「花」を煉り切りの美しい和菓子のように脚長の皿に戴くイメージがふと湧き、がーっと手帳に描きつけたところから、ようやく全体の印象が定まってきた。和風を押し出すようなものにはしたくなかったが、古風な美しさを表現できそうなところもいいと思った。
さて、そこから実物大の線を探すスケッチが始まった。花部分との固定方法など、実際のプロダクトにするにはこの時点では課題も多く、紙の造作や花びらを固定する芯は、このスケッチでは曖昧なままである。全体をやわらかな造形で自然につなげていきたい。花を戴く樹、花枝をさした花瓶、燭台…こうやって見ると、雪洞のようでもある。イメージをまずラインにしてみることにした。
こうして見つけ出した台座のラインをなるべく壊したくなかったため、電池など内蔵物スペースぎりぎりのラインをどこまで追い込めるかも課題だった。出来上がった試作を見ては何度も図面を書き直した。この部分の製作は、和傘の持ち手を作っている職人さんに、とても繊細な仕事をしていただいている。花部分も難しく、何度も試作を繰り返し、花の密度や本体への取り付け方など、納得がいくまでの道程が長いところもあった。
いま改めて手描きの絵と完成品を比較して見ると、ほとんど手描きのイメージを壊すことなく出来上がったように思う。それがうれしく、またありがたい。
|