●機能性のある製品の数々
−−キックスターター関連でヒットした製品はありますか。
樺島:まず「glif」という三脚です。リリースして1年くらい経つのですがいまだに売れ続けています。それと栓抜きのついたiPhoneケースです。これは実際に我々も投資させていただいたのですが、これはアクセス数が多かったですね。日本は今はあまり栓抜きを使わなくなってきていまが、デザインと機能がマッチしている商品です。
−−栓抜き付きのiPhoneケースですか。ワンポイント加えただけなのに意外性が面白いですね。
樺島:はい、それと財布ケースの「iLid Wallet Case」。財布ケースにはいろいろあるのですが、これはマネークリップ、カードが2枚、さらにケースに入れたままICカードを使用することができます。収納力のわりには薄く作られていますね。
コンセプトの基本としては、専用デバイスに別の機能をプラスしたモノをチョイスしています。さらに、オリジナルブランドとしても付加価値のあるモノを提案していきたい。最近ではアタッチから「カード型折り畳みスタンド」をリリースしました。名刺入れに入るサイズの薄い板状で、折り畳むとスタンドになります。用途としては会社や自宅などでiPhoneを置いておきたいときですね。名刺入れに入れて持ち歩いて、カフェなどで少し動画を見たいときなどに使っていただきたいと思います。お風呂で動画を見る際にスタンドとして使っていただけることもできます。名刺入れ以外でも「iLID」のようなお財布ケースに収納していただくこともできますからね。アクセサリーをさらに便利にするアクセサリーという具合にドンドンとアイデアが出てきます。
−−持ち運びが気にならないiPhoneスタンドですね。こういったアイデアは良いですね。
樺島:iPhone用ケースで終わるのではなく、それをどういう使い方をするのだろうか、そういう考え方をしていきたいですね。
−−そう考えるとアイデアは無限にあるわけですよね。「iPhone+何か」で別のモノにするということですよね。
樺島:三脚ですとカテゴリとしてアウトドア、財布ケースですとビジネスや旅行というキーワードで商品のチョイスをしていますね。
−−実際のiPhoneユーザーの方でケースを使い分ける方は多いのですか。
樺島:シーンによってユーザーがケースを付け替えるということはあまり聞いたことはないのですが、我々はそういった提案していきたい。実際私もそうしています。
−−潜在ニーズがあるわけですね。1台のiPhoneで10個の用途別ケースという可能性はあります。市場としては「iPhone+何か」という考え方があればいくらでも広がりますよね。
樺島:そうですね、分かりやすいところでは、結婚式だから日常使いではなく、高級感のあるケースにしていただくとか。こちらのウッドケースは単純なケースではなくてボタンまで木で覆ってしまったというのが好評ですね。次のiPhoneでもおそらくリリースしたいと思っています。
−−これは本当の木を使用しているのですか。かなり精緻な加工がされていますね。
樺島:本当の木です。かなり薄く作られているので、歩留まりも悪く、作れる人も限られるので、生産日数をかなり要します。
あと好評なのが「Skinny Fit」シリーズという薄いケースで、これはできるだけ外観を変えずに着けたいというお客様をターゲットにしています。色も不透明なものにもできますが、あえて半透明にすることでリンゴマークが透けて見えるようになっています。Skinny Fitのケースを少し加工したタイプもあり、iPhoneのフレームだけを覆うことができます。画面にフィルムをつけている方は多いと思いますが、あとは横だけ守りたいという要望が多かったですから、フィルムは他社製品でもかまわないから一緒に使ってもらおうということで。
−−究極のケースですね。
樺島:かなり驚かれましたね。このあたりがアタッチというブランドで好評なシリーズで、シンプルなモノも多いです。
それと、iPodのケースではスマートカバーだけ持ってぶらぶらしてはずれることがないようにヒンジもカバーしています。あとは蓋ですね。こういったワンポイントで1つ機能を付け加えたいという気持ちを常にもっています。
−−ワンポイントの色味で自分の個性を出せますからね。
●スペックコンピュータの商品開発
−−オリジナルブランドのデザインはスペックコンピュータ内でされているのですか。
樺島:そうですね。社内でまず盛り込みたい機能を提案して、次に弊社のデザイナーが簡単な図案を起こします。そこからは中国の提携工場のデザイナーと相談しながらデザインを詰めていきます。向こうは向こうの都合で難しいという場合もあるので、そこで妥協点を見い出せるかどうかというところですね。工場側はやったことないことには中々首を縦に振ってくれないので、理想と現実の間でどこに妥協点をおくかというところでいつも頭を抱えます。
−−今の中国は生産拠点としてモノ作りのスキルが高いですよね。
樺島:そうですね。製造面では我々よりも詳しいです。
−−機能から入ってモノ作りされていて、さらにデザイン性も高いと思うのですが、いわゆる著名なデザイナーには依頼されないのですか。
樺島:そうですね。そういった名のあるデザイナーさんのデザインコンセプトと我々の製品コンセプトは異なると思います。ビジュアル重視で言えば、唯一、和柄のシリコンケースは、半透明のシリコンにコーティングをすることで柄が透けて見えるという加工がデザイン的にかなり好評です。
−−柄も塗るのではなく抜いているのですね。
樺島:そうなんです。このシリコンケースに関してはポートキャップがついています。やはり柄の入ったケースでは終わらないようにしています。ちょうど夏に入る前にリリースしたクリアケースも透明感のあるデザインにして、一気にヒット商品になりました。1つの機能ですが、ストラップホールを用意することで和柄の浴衣に合う紐をストラップにしてコーディネートしていただけるようになっています。
−−和柄ケースのイラストはどなたがデザインされたのですか。
樺島:弊社のデザイナーです。もちろんすべてがオリジナルではないのですが、既存の柄も使いつつ伝統的な和を現代風にアレンジしています。
−−エンジニアの方もいらっしゃるのですか。
樺島:本社に3人おります。
−−それはPH事業向けですか。
樺島:大変だとは思いますが、すべての事業部をみています。ただ、スマートフォンに関してはシンプルなモノが多いので私が見られる範囲の製品は見てしまいます。
−−力学的な要素が入る製品も少なくないですよね。
樺島:そうですね。バネの強度などには試作を繰り返し気を配っています。
●今後もさらなるiPhone、スマートフォンの使い方を提案していきたい
−−今のiPhoneの戦略とPH事業部の戦略は社内的なシェアはどちらが多いのですか。
樺島:シェアとしてはスマートフォンの方が多くを占めています。ただ市場が完全に分かれていますので、別口で考えています。PH事業部のコンセプトはできるだけ健康状態を家庭で自然な状態の測定といいますか、現状を知るようなツールを提案していきたい。もっと詳しくて判定も厳しくできる機械は他社も出されていますし、病院に行けば正確に計れますが、病院ですと非日常の中で測るものですから家庭と病院のどちらが本来の自分なのかとなったときに、やはり家の状態の方が自然ではないかということで、できるだけローコストで自然な状態で計測できる機器を目指して商品開発しています。
−−樺島さんは両方に携わっていらっしゃるのですか。
樺島:そうです。また面白いのが、このスマートフォン事業部、PH事業部と「KUME DORI」という製品の営業部は同じ事務所内にあるんです。こういう営業をかけていくと、PHで営業をかけたお客様がスマートフォンの事業に興味があったり、というソリューションもあって面白いですね。なので部署ごとで区切ることはしないようにしています。どの部署も企画があれば、いろんな商材を扱えることができる状況に将来はしていきたいと思います。
−−スマートフォン事業部のこれまでの商品戦略として、達成率はどのくらいですか。また、さらに今後はどういった展開を考えていますか。
樺島:達成率はまだまだ20%だと思っています。ただ、こういう商品をお客さんに受け入れられるというのは、我々が目指してきた機能性とデザインの両立というコンセプトに手応えを感じることができました。引き続きそれを続けていくことと、あとは流通に力を入れて展開をしていきたいと思っています。
我々としても今はオンラインが中心になっているので、まだまだ認知度は低いという認識です。実店舗にいらっしゃったお客様にもっと我々の提案するiPhone、スマートフォンの使い方を知っていただき、より楽しんでいただきたい。
−−ネットでの販売力も今は重要と思いますけれども、実際にモノに触れることはできないですからね。
樺島:その声は大きいですね。秋葉原のショップに来ていただいているお客様にもようやく現物が見られたとおっしゃる方も多いです。材質が思っていたのと違ったとか、良かったとか。そういう意味では実店舗を置く意味というのは必ずあると思います。実店舗で見てからネットで買う人もいるでしょうけれど、最終的にそのネットに来ていただく意味でも価格を維持するところは大事だと思っています。
−−ありがとうございました。
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