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ソフトバンクモバイル「913SH」
スライド型フルフェイスの
高機能AVケータイ

2007年5月より4ヵ月連続で、ケータイ事業者別純増契約者数トップとなったソフトバンク。夏モデルで登場した「FULLFACE SoftBank 913SH」がその好調の一翼を担ったのは間違いないだろう。スライド型で業界初のフルフェイス画面を完成させた「913SH」。そのデザインコンセプトやワークフローを聞く。

http://www.softbankmobile.co.jp/corporate/
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石井裕樹
ソフトバンクモバイル株式会社
プロダクト・サービス開発本部

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閉じた状態ではDAPやワンセグ機器のようなイメージ
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フルフェイスのディスプレイ面に1箇所小さな突起がある
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913SHの裏面。ディスプレイの裏も溝が掘られ、スペースを効率的に用いている
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底面中央の穴がマイク
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わずかな面積の中に効率的に配置されたキーボード
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専用の充電ホルダーを用いればまさにテレビ感覚!
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913SHの8色のカラーバリエーション
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* ●913SHの開発コンセプト

−−携帯電話はデザインの差別化が非常に競争の激しい世界ですね。ただディテールが違っても基本形はシェルかストレートかスライドのいずれかです。その点で913SHは一歩抜けたデザインだと思いました。フルフェイス画面でのスライド式は業界初でしたが、まず913SHの開発のきっかけを教えてください。

今まで、ソフトバンクモバイルのシャープ製の携帯電話にはスライド式がありませんでした。スライド式は後発になりますので、通常のタイプでは市場に対してあまりインパクトがないと考えていました。

もう1つ、シャープの製品はワンセグ対応の端末で画面が横向きにセットできるサイクロイドのスタイルが905SHから911SH、912SHと続きました。913SHもワンセグ対応ですが、今回は、もっと気軽にAVを使っていただけるスタイルを検討するうちに、現在のカタチが浮上してきました。コンセプトワークの中で、913SHはAV機器のようなルックスを大切にしたかったので、ディスプレイ面は画面だけを見せようということで、キーを一切配置しないデザインに行き着きました。そうするとフルスライダーになるのですが、ではここを極めてみようと。

携帯を閉じた状態を基本的にAVスタイルと位置づけましたが、ディスプレイ面に操作系がまったくないと何もできない。そこで上下スクロールと決定キーの3つのセンサーキーを搭載し、これを操作することによってAV機能を使えるようにしました。

−−コンセプトワークに関しては、ソフトバンクモバイルとシャープのコラボレーションですか。

デザインはゼロから一緒にやっています。今回のコンセプトは、閉じるとAVスタイル、開くとケータイのスタイルということです。

また、従来のスライド端末はディスプレイ下部にもキーがありますので、携帯電話として使用する際、指に上下の移動が生じます。そういった使い勝手の意味からもフルスライド方式を選びました。これであれば今までクラムシェルやストレートをお使いのお客様でも同じような感覚でご利用いただけます。AVとケータイのスタイルを両立できたと思います。

−−ソフトバンクがコンセプトの提案をして、実働はシャープなのですか。

そうですね。コンセプトを提示して、それに対してイメージスケッチを挙げてきていただく。そこでまず最初はスケッチベースから話をしていって、じゃあここをもう少しこういう形でお願いしますというような話をして、次にモデルを作ってという流れです。

−−913SHは開発スタートから発売に至るまでに、どれくらいの期間がかかりましたか。

ざっくり1年です。

●機能をデザインに落とし込む

−−デザインを製品にしていく過程で苦労した点はありますか。

フルスライドの機構ですね。普通のスライドケータイはスライド幅が35〜40ミリくらいですが、913SHは57ミリ動きます。スライド量が1.5倍くらいになって、まったくの新規開発の要素なので一番苦労しました。スライドするディスプレイ部裏面のくぼみには、スライド機構と上下を締結するフィルム基盤が収まります。

ワンプッシュオープンの機能が付いているスライド機はけっこうありますよね。そのタイプも検討したのですが、913SHはフルスライドなので、ワンプッシュオープンでは反動がつきすぎてしまうのではないかなどの操作性も考慮し、ディスプレイを少し押していただき、いったんゼロポイント以上にいったときに静かに伸びるような、戻ってくるときもゼロポイントを越えたときに静かに戻るようなスライドの機構を採用しました。

−−直感的でいいですね。

それと、フルフェイスのディスプレイ面には実は少しだけ突起があります。ここはスピーカーなのですが、面がフラットだとディスプレイ面を下にして置いたとき、スピーカー音が聞こえなくなってしまい、携帯電話としては致命的です。そこで、小さな突起を付けました。この突起はスライドを戻すときの引っ掛かりとしても機能します。ですからこの突起は音抜けと指掛かりの2つの意味合いがあります。デザイン要素としてはノイズになるのでどうかなという意見もあったのですが、結果的には付けてよかったですね。

−−ちなみにマイクはどこですか?

マイクは底面に付けています。指が掛かって塞がらないようにマイクの前に少し溝を掘っています。けっこう細かいところで苦労しています(笑)。

−−確かにキー面にはマイクの場所もなさそうですね。

機構的にキー面にはもうマイク用の穴を開けられなかった。キー面は、57ミリにきっちり詰め込んではいるんですが、なるべく操作感を損なわないようにキーには全部傾斜をつけて、クリック感も何度も検証しながら、最終的にこの形状になりました。

カーソルのサイドキーは当初、押すときに横のサテライトのキーに当たって間違えて押してしまう可能性がありました。そこで最初の頃のコンセプトモデルでは仕切りを入れていました。そしてNCを削り出してモノを触りながら、これは仕切りを取って少し溝を掘って段差をつければいけそうだなと検討して。最終的には仕切りをなくして溝を掘って、押しやすさとデザイン性を両立しました。

−−スライド量が大きいので、ディスプレイを開いて持ったときのバランスが心配でしたが、実際は気になりませんね。

持って操作していただいても重心のバランスは悪くないと思います。

それと、意外とこだわったポイントはアンテナの位置です。横位置でテレビを見る場合、当初の案では下側からアンテナが出てきたのですが、それはデザイン的にも機能的にもよろしくないということで、アンテナは上部から出るように修正しました。本体側面にもキーがあるので困難だったようですが、設計の方には頑張っていただきました。

●ハードの革新をソフトがサポート

−−ハード面では革新的なデザインを実現されましたが、ソフト面はいかがですか?

913SHは外観のデザインもそうですが、中のデザインにもこだわりました。ブラックのフラットフェイスを生かすビジュアルデザインにこだわりまして、GUIは黒地にアイコンを作成しました。第2階層以降も黒地に白い文字が出るようなデザインにしています。

−−ディスプレイ回りの黒を生かしたデザインですね。

そうなんです。カスタムスクリーンで変えることもできるのですが、デフォルトではブラックフェイスを生かしています。

横にして操作するAV機能のメニューも初めてでしたので、いろいろなこだわりを持ちました。携帯電話のデザインは外面もそうですけど、内部のビジュアルのデザインも大事です。

−−外装デザインとGUIのデザインは連携しますね。

ハードとソフトはコラボレーションして仕上げていかないと、使い勝手やバランスがバラバラになってしまいます。

913SHは閉じたままでAV機器として使え、開くと携帯電話も含めすべての機能が使えます。例えばメールを書いている途中で閉じると、AV機器になるのと同時に、メール作業を保留しにいきます。電車でメールを書いていて、駅に着いてしまったときでも、そのまま閉じておいて次に開けばすぐ再開できます。

−−ハードのコンセプトにソフトが合わせていったのですね。

この機器に関してはそうですね。

−−携帯電話の場合、一般的にキャリア側がデザインコンセプトや機能などを固め、実際の製造はメーカーさんが行います。913SHでは御社からのリクエストに対してメーカー側が応えきれなかった点はありましたか。

リクエストした点は対応していただいています。

−−シャープさんは今までスライドはなかったのですね。

今も国内向けでは、ソフトバンク向けにしかないと思います。

−−913SHは機能的にもハイエンドですね。フル装備の感があります。

機能面ではもう1つ、「名刺読み取り機能」があります。かなり精度が高いです(実際に記者の名刺を読み取る)。

−−すごいですね! ほとんど間違いがない。このまま電話帳にできるし、これは便利です。

ビジネスでご利用の際にもいいですよね。いろいろな場面で説明をするとかなりウケます。

−−名刺内の文字のレイアウトも問わないですしね。びっくりしました。

●913SHの今後の方向性

−−ソフトバンクさんは契約者の純増で1位が4ヵ月続いていますね。913SHが引っ張っている面はありますか。

はい、主力の機種ですね。プランやネットワークがつながりやすくなったというのもありますが、端末も好評です。

ブランドチェンジをして、昨年の秋冬モデルからは種類、カラーリングの数が他社さん並みかそれ以上というラインアップになっています。

全20色のラインアップを揃えるPANTONERケータイ「812SH」など、特にカラーリングの部分がケータイの常識を変えてしまったかなと。3色、4色のラインアップですと、この機種が欲しいんだけど色がないというお客さんはいらっしゃいます。いまだに812SHは人気があります。あの20色目当てで来る方は多いですね。

−−自分だけの色を探せますものね。

流行系の色やけっこうビビッドな色が人気です。

−−PANTONERならビビッドな色を選んだほうが個性が出ますよね。

出ますね。普通のケータイは無難な色が売れていたりする傾向がありますけど、PANTONERでは派手な色も人気があります。

−−女性ユーザーは多いですか。

多いですね。特に男性に偏っているということはありません。

−−今後はどのようなことをお考えですか。

フラットフェイスデザインは1つのジャンルを確立できたと思いますので、この方向性は継続していきたいです。

−−913SHは機能の切り分けというか2面性がすごいですよね。

そういうコンセプトで作り上げているんですけど、ユーザーさんからは閉じたままでも何か操作をしたいというご意見が多いです。そういったところを次は考慮していかないといけないと思っています。
閉じたままでも電話はできるのですが、さすがにメールはキーがないので打てません。そこで、メールが見られて「後で連絡する」など簡単な返信ぐらいはできてもいいのではという声があります。次機種以降で考えていかないといけないと思います。

−−ソフト的なブラッシュアップの話ですね。

あとは、今は傾向としてどんどん薄型化していますので、それはもっと進めていかないといけないのかなと思っています。

−−本日はありがとうございました。
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フルスライドを実現するために
(913SHの製造元シャープからのコメント)

新しいスタイルの採用に向け、まずはじめに信頼性試験項目の見直しを実施。その結果、従来のクラムシェル以上に厳しい試験項目となりました(特に筐体の曲げ、落下、 ゴミの混入などに関して)。

フルスライドは、通常のスライドと比べて、上下の筐体(ヒンジ)を固定できる範囲が小さくなります(スライドさせたとき、上下筐体の重なっている範囲が小さい)。固定部が狭いため、上下筐体のズレやガタツキが大きくなる可能性があります。そのため、フルスライド時の落下や筐体の曲げに対し不利な構造になっており、その課題のクリアに苦労をしました。

そこで、信頼性の向上のため、下記の対策をとりました。
1.上筐体(ヒンジ部)の剛性化→Mgキャビで実現。
2.下筐体の剛性化→GF入りのキャビで実現。
3.スライド部のレールの隙間を限界まで詰める。
4.スライド時のスレ音、違和感(ゴリ感)をなくすことでスライド耐久性を向上させる。


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