●OEMからオリジナルブランドを立ち上げへ
−−ホームページには、御社は1988年に設立とあります。現在のスマートフォン事業部に至るまでの変遷をお話いただけますか。
樺島:弊社の設立当時は、パソコンの周辺機器の製造・販売が中心でした。数年後には携帯ゲーム機やコンシューマゲーム機の周辺機器やアクセサリーを、OEMやODMで製造していました。
−−ゲーム系の周辺機器というのは具体的にどういったものですか。
樺島:コントローラーや、今iPhoneでやっていることと同じように、デバイスに着けて持ちやすくするケースや保護フィルムなどですね。ジャンルは違いますが、製造面では今も昔もあまり変わりません。
−−1988年当時のゲームというと何が主流でしたか。
樺島:その頃はパソコンゲーム中心でした。それからコンシューマゲーム機が伸びるとともに、そのアクセサリー関係の業績が伸びてきました。
−−当時はOEMビジネスに徹していたわけですね。
樺島:そうですね、スペックコンピュータという社名で前に出る機会はほとんどありませんでした。ただ、その後、景気が下がりお客様のニーズが激動していく中で我々自身が市場に対応できる力を持つ必要がある。そこでいくつか事業部を立ち上げたという経緯があります。基本は「デジタル機器関連製品の企画・開発・製造販売」という切り口で、PH事業部(パーソナルヘルスアンドビューティケアデバイス)、IM事業部(イメージングデバイス)、そしてスマートフォン事業部(スマートフォンアクセサリー)という展開を行っています。
●ユーザーにとって何が便利であるかを重視する
−−本題のスマートフォン事業ですが、iPhone、iPad関連のカバーなど、どんどん市場に投入されていますよね。
樺島:2010年の11月に弊社のブランドの「アタッチ(@ttach)」をリリースしました。企画が持ちあがったのはその半年前、iPhone4がリリースされる頃だったと思います。具体的にどうするかは分からない中で、社員レベルで、やりたいことがいくつかありました。それはiPhone用アクセサリーのオリジナルブランドと、日本に入ってきていない海外の面白くて機能性のあるブランドを日本の市場に届けていくということです。海外の商材探し、オリジナルブランドの開発製造を並行して行ってきています。
−−海外の面白いモノに関しては、買ってきて売るという流通ビジネスですか。
樺島:そうです。メーカーと交渉して、卸していただいて販売する。日本に入ってきていないモノもたくさんあります。日本は柄の入った雑貨的なケースはたくさんあるのですが、面白くてデザインもオシャレというモノはなかなかなかったです。また、海外の面白いモノを見つけると、我々自身もオリジナルブランドの開発の刺激になります。自社内だけで自分たちのやりたいことだけをやっていると偏ってくると思いますので、そこは良い効果が出ていると思います。
−−iPhone4をきっかけにiPhoneのアクセサリー市場を狙い打とうということですね。アンドロイド系はいかがですか。
樺島:ギャラクシーを想定してやろうかと考えてはいますが、今できているものはスタンドなどの汎用的に使えるものなので、ケース類になると「やらない」よりも「やれない」というところですね。これには2つ理由がありまして、1つはデバイスのリリースサイクルが速いので我々の規模では追いつくことが今の段階では難しい。ということ、もう1つはアンテナなどが要因で形状が微妙に日本独特になっており、海外ブランドの面白い製品が対応できない。という点です。
−−アンドロイド系の総数はiPhoneを超えているみたいですからね。
樺島:ただそこに存在する機種が多すぎますからね。
−−競争の激しいiPhoneのアクセサリー市場の中で、ブランドとして確立するための戦略はいかがですか。
樺島:他社製品や新しい機能が次々と出てきていますし、我々はひたすら勉強して他社にはないもの、もしくはあってもそこに違った価値を常に意識してマーケティングしています。
また、これはコンセプトですが、デバイスをユーザーが使うときに、本当にその機能を使うのか、我々の独りよがりの機能になっていないかを考えています。例えばカメラグッズではカメラアプリを使うときに邪魔にならないかなどですね。そういう意味では、オリジナルケースには基本的にロゴを入れないようにしています。それは究極を突き詰めていくと何もつけないほうがいいという判断です。ケースメーカーがそう言ってはいられないのですが、アップルのロゴが栄え、デザインを生かすいう意味でロゴを入れないことが我々の主張ともいえます。ユーザー目線で、アップルの製品なのに他社のロゴが入るとあまりうれしくない人もいますからね(笑)。
●2年でリリースした製品は500種類
−−スタートして2年足らずですが、現在何製品くらいのラインナップになっているのでしょうか。
樺島:2010年からの2年で500ほどの製品はリリースしています。海外メーカーの輸入モノのラインナップを掘り起こしていくことにも労力を投入しています。まだまだ面白いモノはありますが、他社と競合しないように選別・吟味した製品で現在500アイテム以上リリースになっています。
−−500製品のうち、海外から輸入しているモノと、自社開発したモノの比率はどれくらいですか。
樺島:オリジナルが3分の1の割合ですね。
−−流通の話ですが、どういった販売網を持たれているのですか。
樺島:今はiPhoneやスマートフォンのアクセサリーショップさんと一部取引させていただいております。あとは現在進行中でいくつかの大手雑貨店様と交渉を続けております。
我々は実店舗のお客様をメインに卸をさせていただいております。その理由もあり、店舗で見てネットで購入という流れにならないよう、常に気を配っております。これは理想ですが、ネットもお店も値段が同じだから、お店で買おうと言っていただけるように販売店様と強力していきたいですね。
−−それだけ商品力があるということですね。ネットは実店舗より地代などが掛からない分安くなる傾向がありますからね。
樺島:消費者の視点からすると1円でも安く買えるのはいいことだとは思うのですが、安くなり続けることで日本全体が消耗し、本当にこれから元気な日本に復活できるのかという考えは正直ありますね。やはりその機能に見合った売価で買っていただき、いただいた利益を次の商品開発の源にさせていただきたいなと思っています。
−−例えばヨドバシカメラなどの大型量販店での販売はされないですか。
樺島:大型量販店様から一部の商品にご興味いただき、ご販売いただいている実績はございます。これからも私どもコンセプトを貫き商品セレクトに力をいれることで、お声のかかる魅力的な商材をそろえていきたいですね。
●プラスの付加価値がポイント
−−御社製品には、iPhoneカバーにしても、ただ保護するためのカバーではなくてプラスの付加価値を感じます。
樺島:ネットのレビューなどでは「ここにしかないから」というお声もたくさんいただけるようになってきましたので、我々のコンセプトが少しずつ伝わってきていると実感しております。
−−デザインよりは機能優先とも思いますし、それがデザインという言い方もできるわけです。
樺島:そうですね。一方でグラフィックデザインに凝った製品もあります。例えば和柄のiPhoneカバー。これは弊社のオリジナルブランド「ふるる」というシリーズです。こちらは日本だけでなく海外からも引き合いのある商品です。
−−なるほど。ちなみに海外製品の選定、購入は社員の方が担当されているのですか。
樺島:社長や専務が海外によく視察に行くので、そのときに持ち帰ってきた商材サンプルを私と別の者とで他社製品との比較を含めてセレクトします。
−−他社の動向など、最新の情報をつかんでいないと選べないですね。
樺島:そうですね。情報に敏感でないとならないので、情報の仕入れには休みがないですね。
−−あとはスピード勝負ですね。現在でも月に数点のリリースですが、バイヤーとしては判断力、決断力も求められますね。。
樺島:そうです。そこは上の人間もよく理解しておりまして、スピーディにやらせてもらっています。他社との競争なので一気に進めてしまわないといけないと思っています。日本に紹介するというスタンスも求められているので、もちろん我々だけで売れれば一番いいのですが、良い商材をどこよりも早く日本に紹介するという役割も弊社は担っていると考えております。
−−海外メーカーはどちらが多いのですか。
樺島:今取り扱っているモノはアメリカが多いです。
−−アジア系もメーカーは多そうですが、あえてアメリカなのですか。
樺島:アメリカはアップルがある国ですし、iPhoneユーザーも多い。そういった国には、もっと便利に面白くiPhoneを使いたいという開発者もやはり多いようです。「キックスターター(Kickstarter)」に代表されるファンディングサイトもアメリカには多く、小規模での製品開発が可能な土壌があることも面白い商材が出てくる要因でしょうね。
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