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Interview Index
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pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン

●フォルムそして構造をデザインするためにVectorworksをずっと使っています。ドリルデザイン
●デザイナーを強力に支援する必須のデザインツール「Vectorworks」/設計事務所ima
●デザインとエンジニアリングを融合したサービスを展開。三枝克之/有限会社咲和惟
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim」×芝 幹雄(デザイナー)
●建築、インテリア、プロダクトをボーダレスに活躍するデザイナー、田中行氏を支える「Vectorworks」
●Autodesk Visualization Contest 2010」の審査員、カーデザイナーの和田智氏に聞く
●低価格CGツール「CINEMA 4D」の計り知れない導入効果
●PTCジャパンが提案する最新のソリューションとは
●美しさに隠れた機能が光る日用品デザイン「フォルム」のモノ作りに迫る
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim Professional 2007+」
●ソリッドシンキングジャパン:「solidThinking」
●日本SGI:Asterismによるデザインビューシステム
●日本SGI:開発中のデザインツール


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* pd WEB Interview
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田中行(たなか ゆき)
武蔵野美術大学建築学科卒業後、スタジオ80にて5年間内田繁氏に師事。その後渡仏し、マルチーヌ・ブタン事務所で研修。アフリカなど遊学。2001年に建築+デザイン事務所イッスンを設立。第3回住空間デザインコンペ・入賞、第15回CSデザイン賞・装飾部門銀賞、第6回清州国際工芸ビエンナーレ公募展佳作受賞。事務所名の「イッスン」はヒューマンスケールである「寸」から。カタチあるもの、空間、プロダクトともに、身体感覚の間、関係、そして対話(相互作用)を追求しながらデザインを行う。

 建築、インテリア、プロダクトを
 ボーダレスに活躍するデザイナー、
 田中行氏を支える「Vectorworks」

 
田中行/建築+デザイン事務所イッスン
  http://www.yukitanaka.biz/


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 東京・渋谷で建築+デザイン事務所イッスンとして活動を続けるデザイナー、田中行氏。
  建築、 空間からプロダクトまで、氏がデザインするフィールドは実に広く、
  そのさまざまなスケールのイメージを具現化するための道具として、
  氏は長年Vectorworksを愛用している。 ここでは作品紹介とともに、 
  デザインツールとしてのVectorworksの魅力を語っていただいた。

  協力:エーアンドエー株式会社 http://www.aanda.co.jp/
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拭きガラスで作ったガラスの器「ぴー、ぽー」(クリックで拡大)
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アクリル素材をイメージしていたというバスケット「SOLARIS」(クリックで拡大)
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「曲げわっぱ」のお弁当箱(クリックで拡大)
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田中氏の空間デザインの一例(クリックで拡大)
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●インテリアもプロダクトも


−−まずこれまでの活動内容を簡単に振り返っていただけますか。


田中:武蔵野美術大学を卒業後、内田繁、西岡徹、三橋いく代の3トップ時代のスタジオ80に5年間在籍しました。すでにバブル崩壊後でしたが、インテリアを中心に、バブル時に計画された大きなホテルなどの案件を手掛けていました。

その当時はまだAutoCADがMS-DOS上で動いていた時代で、私が入社したばかりの頃に会社として初めて導入しました。新入社員がまず覚えさせられたのですが、誰もわけも分からず大変でした(笑)。2Dと3D、両方ありましたが、当時の3Dはまだ開発途上といった感じで、本当に難しくて手探りでした。

内田さんの下で5年間、家具やプロダクト、商品開発にも携わって、オールラウンドにやらせていただきました。退職後は、1年間充電しつつ、海外に行きたかったので、内田さんにフランスにあるマルチーヌ・ブダン事務所を紹介していただき半年ほどそこで働きました。そこで初めてフランス語版のMiniCAD(現Vectorworks)を使いました。あの当時のMiniCADは本当に簡単で、フランス語は分かりませんが、操作も単純だったし、ツールも少なかったので、サクサクと使いこなせました。

その後、建築士の資格をとるために関西の実家に戻って、建築事務所でアルバイトをしました。そのときに、JW-CADと、AutoCADを触って、その後Vectorworksを初めて触りました。その頃はもうWindows主流の時代でしたね。

そして東京で独立して、デベロッパーさんの住宅の仕事をメインにデザイン活動を再開しました。その頃、桐山登士樹さんに富山デザインウェーブのワークショップのお誘いをいただき、独立後初めてプロダクトデザインを行いました。ガラスがテーマでしたので、3日間で「ぴー、ぽー」を作ったんです。

「ぴー、ぽー」は吹きガラスしかできない、作為的じゃないカタチを念頭においてデザインしました。吹きガラスの造形は、息を吹きかけて遠心力と重力によるものなんですね。人の手だけではできない形、その美を求めました。


−−デザインは、吹きガラスでこういう形状が作ることができるという想定の上でイメージしたのですか。

田中:そうですね。富山のワークショップに参加する前に、夏休みの3日間、東京国際ガラス学院の講座に参加して、まず自分でやってみました。そこで「コントロールするのがこんなに難しいんだ」って実感しました(笑)。スタジオ80時代にガラスの照明器具の開発もしていたので、おおよその工程は分かっていたんですけど。

−−武蔵野美術大学を卒業後、内田繁氏のスタジオに入られたのは、そもそも建築やインテリアデザイナーを目指していたのですか?

田中:その当時の建築は、磯崎新さんなど、ポストモダン全盛でスケールアウトしていて、とても身近な感じじゃなかったんですね。私はより身近なスケールのものをしたかった。例えば、窓の寸法や間隔などを詰めたかったのですが、あの当時は夢のような建築が多く、まだまだバブルでした。私はもっと小さいことや細かいことをやりたいなって思っていて、それでスタジオ80が新卒を募集していたので、飛び込んだって感じです。

−−当時は具体的にはどのようなデザインをされましたか?

田中:商業施設のインテリアデザインもやりましたし、建築学科を出ていたので、長崎県の釣り公園の公園計画とかも任せられ、島まるごと公園みたいなのを手掛けさせていただきました。

−−DOS時代からCADツールを使っていると、後々楽ですよね。

田中:最初のコンピュータはNECのPC-9801でした。当時はコマンドラインから××.exeと打ち込んで実行、といった使い方でしたから今とはまったく違いますよね。

●「SOLARIS」から「曲げわっぱ」まで

−−ガラスの作品「ぴー、ぽー」の後、プロダクト関連では現在に至るまでどのような活動をされてきましたか。

田中:「ぴー、ぽー」の評判がよく、その後にプロダクトデザイナーの梶本博司さんから、Lampas(貝印)さんのデザインプロジェクト「Kai House商品開発プロジェクト」があるから参加しないかと誘っていただいて、そこで初めて企業の方と商品開発を行いました。それが「SOLARIS」ですね。

−−建築やインテリア、空間を主に手掛けられてきて、プロダクトデザインに違和感などはなかったですか?

田中:むしろ同時に両方手掛ける時の方が、どちらもはかどります。片方だけだと煮詰まる場合もありますし。空間を考えてCADを描いていくなかで、そこに相応しいプロダクトがふと浮かぶこともあります。建築系もプロダクトも、両方動いている方が自分のモチベーションを高く維持できますし、スムーズにアイデアが出ます。

−−プロダクトに関しても空間ありきでイメージされているんですか?

田中:「SOLARIS」の場合は、それを意識してくださいって言われました。素材そのものが一番きれいに美しく見せれるかっていうのをやりたいなっていうところがあって、アクリルやガラスをすごく研究しました。

−−SOLARISのデザインはどのように進められたのでしょうか?

田中:SOLARISは、スケッチを描かなかったんですけど、頭の中で3軸で9つの輪を回転させて、バスケットツールにできるのではと思いついて、すぐにバッーっとVectorworksで描きました。これはCADにしかできないなと思って。
自分の考えていたことがとりあえず形になるかを確認して、太さのバリエーションなどを検討し、レンダリングしない状態で構造をクライアントにプレゼンテーションして、即決でした(笑)。

−−アイデアの段階からVectorworksを使って?

田中:はい。このデザインは当初、アクリルとABSでモックアップを作ってもらって発表しました。「SOLARIS」という名前のように、元々はクリアでスペースチックなイメージのモノにしたかったんです。
その後に、この形状は樹脂だと金型が9つ必要で、コスト的に無理となって。クライアントに言われるまで木で作ることは全然想定していなかったんです(笑)。ただ、木で輪っかを作るとなったら、曲げわっぱが浮かび、秋田大館の曲げわっぱメーカーに電話して制作を依頼しました。

−−なるほど、SOLARISは当初アクリルのイメージだったとは意外でした。現在はインテリア系とプロダクト系両面でご活躍ですが、たしかに田中さんのプロダクトは機能を形にという面だけではなく、空間に置かれたときの存在感を常に大切にされているような印象があります。

田中:現在はインテリアがメインですが、SOLARISつながりで、5年計画の曲げわっぱプロジェクトで現在、お弁当箱「軌/MICHI」「花/HANA」「軌々/KIKI」など1年に数アイテム開発しています。


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