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pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン

●フォルムそして構造をデザインするためにVectorworksをずっと使っています。ドリルデザイン
●デザイナーを強力に支援する必須のデザインツール「Vectorworks」/設計事務所ima
●デザインとエンジニアリングを融合したサービスを展開。三枝克之/有限会社咲和惟
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim」×芝 幹雄(デザイナー)
●建築、インテリア、プロダクトをボーダレスに活躍するデザイナー、田中行氏を支える「Vectorworks」
●Autodesk Visualization Contest 2010」の審査員、カーデザイナーの和田智氏に聞く
●低価格CGツール「CINEMA 4D」の計り知れない導入効果
●PTCジャパンが提案する最新のソリューションとは
●美しさに隠れた機能が光る日用品デザイン「フォルム」のモノ作りに迫る
●スペースクレイム・ジャパン「SpaceClaim Professional 2007+」
●ソリッドシンキングジャパン:「solidThinking」
●日本SGI:Asterismによるデザインビューシステム
●日本SGI:開発中のデザインツール


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* pd WEB Interview
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松本 有(まつもと たもつ)
株式会社フォルム代表取締役社長。1978年東北工業大学工学部工業意匠科卒業。1984年10月フォルムデザイン(有)を設立。2003年7月株式会社フォルムに社名および組織変更。2005年4月〜東北工業大学工学部デザイン工学科兼任講師。(社)日本インダストリアルデザイナー協会会員

美しさに隠れた機能が光る日用品デザイン
「フォルム」のモノ作りに迫る

株式会社フォルム
http://www.form.co.jp/

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フォルムではOXO、良品計画をはじめ、キッチン用品、生活用品、医療機器など、多彩なプロダクトデザインを手がけている。デザイナーのイメージや想いを具現化しているのが、ThinkDesignをはじめとする各種デジタルツールである。ここではフォルムにおけるデジタルツールの使いこなし、そしてワークフローを代表の松本有氏に伺った。

協力:シンク・スリー株式会社 http://www.think3.co.jp/
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フォルムにおけるデザインスタンスや特徴をお話いただいた代表の松本氏
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ThinkDesignによる製品を手にCADに関しても熱く語っていただいた
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* ●フォルムのモノ作りと日本のデザイン


株式会社フォルムは、1984年の設立以来24年間、企画の段階から最終的な製品まで、そして流通などのマネジメントも含めモノ作り全般のR&Dタイプのデザイン活動を行っているデザイン会社だ。代表の松本 有氏はキッチン用品の「OXO」や良品計画のデザイナーとして著名だが、フォルムの活動の実際は、デザインのみの受注というより共同事業に近い仕事のスタイルが多いという。

フォルムにはスタイリングだけでなく、ある程度機構が入ったデザインの発注が多く、必然的に生産性やコスト、環境面への配慮などトータルな提案が必要となる。おのずとクライアントとは戦略的な部分まで踏み込んだ形でのコラボレーションとなる。狭義のデザインに留まらず、モノ作り全般へのマクロ的な視点が松本氏のスタイルの根本にある。

「先日も経済産業局の方と、これからのデザイナーや日本のデザインはどうあるべきかを話しました。デザインが持つ力を造形だけで終わらせるのは本当は違うはずです。私どもはJETRO(日本貿易振興機構)の関係でアジアのデザイン振興事業をずっとやっていて、特に中国とは10年前から続いています。現在の中国のデザイン事務所などは2000年頃の約2倍に増えていますが、一方で日本は非常にのんびりしているように感じられます。日本においても、デザインの持つ力をもっと広く捉えていくことが絶対に必要です。

そのためにはデジタル化が非常に重要です。2D、3Dを含めてCADはこれまで設計部門の道具でしたが、デザイナーがCADのワークフローに参加することによってトータルの生産性が非常にスピーディになりました。ただしデザイナーとしての基礎体力がないとCADを使いこなすことはできない。そういう点では人材を送り出す立場の日本の大学教育は、まだ現場に追いついていないように感じます」。

造形力やCADのオペレーションスキルの前にデザイナーには学ぶべきことがある。日本の大学ではデザインの基本は身に付くが、実践とは少し離れている。そこは変えていかなければならない。そうでないと中国、韓国などに先を越されてしまうかもしれない。

「端的に言うと、カッコいいものは作れても、ビジネスとしてどうなのかという部分も考えなければいけないということです。デザインとビジネスはイコールにならないといけない。それはデザイナー自身にも問題があると思っています」。

●チームで作るフォルムの現場

デザイナーもビジネス的な視点でモノ作りを行う。これはユーザー指向のデザインともいえる。優先すべきは表層的なカッコよさではなく、ユーザーが使って満足できるデザインなのだろう。

そういった観点から、フォルムではデザインを行う上でモデルによる実験が欠かせない。図面やCADの中のモノが本当に使いやすいのか、思い通りにできているのか、感触はどうか、痛くないか、動かしやすいか、意識せずに使えるのか・・・。そういう部分の検証のためかなりの時間をかけてモデルを制作し実験していく。それは画面の中で解析ツールを使ってシミュレーションしても決して分からない。

「実験やモデル作りは、それこそペーパーモデルからクレイ、樹脂、合成木材など、さまざまな素材で行っています。使用頻度は少ないですが、加工機械もいろいろ持っています。必要に応じて社内でいつでも使える環境があるのが大事ですね。そしてフォルムでは複数のチームでデザインしていくことが多いので、新人もベテランも一緒にやっていきます」。

フォルムではさまざまなスタッフが共同で1つのプロダクトを一緒に作っていく。スタッフ各人が持っている資質や生活観、環境はまったく異なるし、男性・女性でもものの見方は違う。松本氏はそれがすごく重要だという。

「手描きのアイデアスケッチを採用された人が最終的なスタイリングまで行うわけではなく、モデリングを別のスタッフが行う場合もあります。常に複数の仕事が並行で動いているので、クライアントに対しての担当者はおきますが、自分が担当していない仕事にも関わらないといけません。そして、さまざまなステップで必ず評価会を行っていきます。形だけではなく、形も含めたデザインの本質としての部分。私たちは何を求めているのかを常に検証しながらの作業ですね」。

フォルムでは、デザインのみならず、設計、製造、金型にいたるまで目を配る。金型データの納品はしないが、自分たちのデザインが目的通りにできているかの確認は重要な作業であり、下流工程での確認作業は各クライアントのエンジニアの方々と一緒にすることも多いという。

「中国で生産している製品も多いので、そういう場合はほぼ私どもが中心になって作業を進めます。日本で考えているイメージと生産現場では相当開きがあることが少なくありません。特に中国は現地に行かないと分からないことも多いですし、現場で即断しないといけない局面も多々あります。製造現場のスキルはピンきりなので、現地スタッフのコントロールが重要になってくるのです。ただ余談ですが、最近は中国をはじめ韓国、台湾など実力のある会社が増えています。2000年から見ていますが、デザイン会社もおっと思うところは世界で通用しています」。

中国の現場のエネルギーを肌身で感じている松本氏だからこそ、冒頭の日本のデザインへの危機意識にも説得力がある。

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