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世界的なカーデザイナー、和田智氏。
2009年に独立しSWdesign TOKYOを
設立した
取材協力:オートデスク
http://www.autodesk.co.jp/
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若いクリエイターには
「光」をデザインしてほしい
「Autodesk Visualization Contest 2010」の審査員、
カーデザイナーの和田智氏に聞く
デザイナー/SWdesign TOKYO代表
和田智
オートデスクは9月1日(水)より11月10日(水)までの応募受付期間で、同社のデジタルツールによる建築、プロダクト分野のビジュアライゼーション作品コンテスト「Autodesk Visualization Contest 2010」(以下Vizcon2010)をTBS Digicon6.comの協力を得て開催している。ここでは本コンテストの審査員の1人、カーデザイナーの和田智氏に話を聞く機会を得たので、デザイナーを取り巻く状況やVizconの意義などを語っていただいた。
※「Autodesk Visualization Contest 2010」の詳細は以下URLまで
http://www.digicon6.com/vizcon2010/
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●時代はターニングポイントを迎えている
和田智氏は、日産自動車、アウディで、25年に渡り世界的なカーデザイナーとして活躍してきた。2009年に独立し「SWdesign TOKYO」を設立。EVなど新しいビークルデザイン開発、そして新しい時代のミニマルなものや暮らしの提案を始めている。和田氏は何故、独立の道を選んだのか。そしてデザイナー、クリエイターは今何をなすべきか。和田氏は今何を思うのか。
「私は、カーデザイナーとして25年間、自動車産業に育てていただきました。日本とドイツのメーカーで、シニアデザイナー、クリエイティブマネージャーとして、25年間、世界市場を見据えたモノ作りをさせていただきました。
振り返ればクルマは、欧米型の産業構造、資本主義体系の中で成長してきました。いまや地球のあらゆる国々でクルマは利用されています。ただオイルショックや地球温暖化といった地球環境への意識の変化の中で、このままのやり方でいいのかという疑問が多くの人々の心に芽生えてきました。
現在の自動車産業は、生産工場からオイル、エンジンをベースとしたプラットフォームになっています。これだけ発展し巨大化した自動車産業が、今後エコロジカルな方向にシフトしていくことは簡単ではありません。時間も掛かかるでしょう。
そこで私は、巨大なタンカーを港に導くタグボート的な役割を果たしたいと考えるようになりました。オイルやエンジンに依存してきたこれまでとは違う、これからのモノ作りの仕組みを作れないかと思うようになったのです。
自動車産業のみならず、社会全体を次の50年、100年に向けてどのような方向に導けばいいのか。現在はそういうターニングポイントに来ているのではないでしょうか。これからの未来の暮らし、そしてEV(電気自動車)などニュープラットフォームを創造していくための方法論や価値を変えていきたい。そういった取り組みが必要と考えアウディを退社し独立することにしました」。
限りある地球資源を消費しながら巨大化してきた産業構造から、地球との共生を前提とした産業構造へ。そういった大きなターニングポイントを目の前にして、デザイナー、クリエイターは何をすべきか。若手クリエイターに何を求めるのか?
「ドイツなど欧米から客観的に日本を見て実感するのですが、これまでの日本の成長速度は世界に類を見ないものでした。これからの日本の役割は、まだまだ成長するであろうアジアの途上国にいかに貢献し、またリーダーシップをとっていかなければならないかを考える時期なのではないでしょうか。
生産拠点は人件費の安い中国などにシフトしていますが、日本は作ること以上に、ビジョンやクリエイティビティ、オリジナリティを求められる役割を担っていると思います。
また今の日本のダイナミズムは、日本国内でシュリンクしている印象を受けます。一言で言えば、コミュニケーション能力が弱いのです。海外では語学力以上に、自分の気持ちや想いをどう相手に伝えられるかが重要です。日本人の謙虚さはとてもよいところですが、一方でしっかり主張できる側面がないといけない。
今回のVizcon2010は『1枚の絵にメッセージを託せ』というコンセプトです。自分のビジョン、想いをどうやって世界に向けて伝えるのか。1枚でどれだけのコミュニケーションが行えるか。インパクトのあるクリエイティブはシンプルで明確に伝わるものです。その実践の場としてこのコンテストを活用してほしい」。
●明るい未来の創造を期待
ではVizcon2010の応募作品に対して、デザインやCGのスキル、プレゼンテーション能力など、どこに重点を置いて評価するのだろう。
「過去のVizconの応募作品を見ていると、多少なりとも、技巧に走る傾向を感じます。実はカーデザインにおいては、コンピュータと人間の頭脳の合流によるクリエイティブは、おそらく他の分野よりかなり先行した形で経験を積んできています。そこでは良い部分も悪い部分も育まれてきました。
そういった経験から思うのは、1枚の絵に仕上げるときに、アナログとデジタルの両面の表現によるバランスを評価したいということです。
CGだけで絵を描くことも否定はしませんが、CGの機能が生み出す新しい見せ方に引っ張られないでほしい。そこで満足せず、手がかもし出す世界観、第六感的な雰囲気を忘れないでほしい。
よりコミュニケーションに優れたビジュアライゼーションというのは、アナログ、デジタル、そのどちらにも依存しない表現だと思います。その調和を大切にできるタレントが、これからもっと必要とされるのではないかと思います。
ただ、これからの時代は、デジタルツールだけでダイナミズムを生むようなクリエイティブを行うデザイナーやクリエイターが現れないとも限らないのかもしれませんが(笑)」。
和田氏は、CGで仕上げるにしても、デジタルツールの機能に頼るのではなく、そこに手の感覚を忘れないことが大切だと言う。ではクリエイターはどうやって道具を使い分ければよいのだろうか。
「極端に言えば道具は鉛筆でもデジタルでも、何でもありでいいのです。大切なのは、皆さんの頭の中のビジョンを伝えるために最適なアプローチを行ってほしいということです。
それと、Vizconで求めている作品はアートではない、ということも忘れないでほしい。アートとデザインは、今は密接ですし隣接化している状況ですが、今回のVizconで求めているのはデザインです。
そして僕の考える『デザイン』とは、あくまで『明るい未来の創造』でなければなりません。現状、いろいろな不安がよぎるような社会風潮の中で、クリエイターがしなければいけないことは、突き詰めれば『光』の提示となります。光をデザインしていただきたいのです」。
これからの「光」をイメージし、デザインする。「光」は未来への希望や可能性を意味すると思われるが、それをどのように描けばよいのだろう。
「創造性、クリエイティビティですね。その絵を見ることによって何か予期できる価値を見たい。次の時代の未来感、それは僕らの暮らしのリアリティなのかもしれません。
若い世代の表現には、CGらしいテクスチャーやデジタルの枠を超えた作品を待っています。
日本のクリエイターには十分な蓄積があるのだから、若い世代はそれを超えていってほしい。
日本のデザインのポテンシャルは世界のトップレベルにあります。それにもかかわらず、欧米をはじめとする世界にそれを伝えるのが下手でした。そういった世界に通じるコミュニケーション言語となるビジュアライゼーションを期待しています」。
最後にVizconの応募者に向けて一言メッセージを。
「君たちの時代はすぐそこに来ています。君たちが未来を創るべきです」。
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参考:「Autodesk Visualization Contest 2008」参加作品
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