「VILLAGE」(2011年)(クリックで拡大)
Vectorworksによる上の「VILLAGE」の設計図面 (クリックで拡大)
「VILLAGE」の原寸模型 (クリックで拡大)
上と同じく「VILLAGE」の原寸模型 (クリックで拡大)
メルセデス・ベンツ コネクションのためにデザインした「Three Pointed Chair」(2011年)(クリックで拡大)
Vectorworksによる上の「Three Pointed Chair」の設計画面。(クリックで拡大)
同じく、Vectorworksによる設計画面。(クリックで拡大)
林氏の後ろの棚には、ご自身で作った手作りのモデルが並ぶ。(クリックで拡大)
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−−ドリルデザインの基本的なビジネスモデルとしては、クライアントさんからの仕事を受注してデザイン提案するという流れですか。
林:そうです。ただ、他のプロダクトデザイン系の事務所と違うのは、うちはトータルで全部できるという点です。例えばコップを1個デザインしてそのメーカーのラインナップに加えて終わりという単品の依頼はそれほどなくて、どちらかというとあるシリーズを作ってほしいとか、何かしらの世界観なり全体的な見え方の受注が多いです。
グランドで勝負するというか、ようするに、見本市で展示する場合はブースの空間デザイン、カタログなどのグラフィックデザインまで行います。
−−単体で依頼がきたとしても、あえて幅を広げて提案したりするのですか。
林:はい。単体デザインもよいのですが、ラインナップや流通まで含めて提案したほうが、良い結果が出ると思いますので。
−−コンサルティング的なところまで踏み込んで提案するようなかたちですが、そういう点で経済学部だったことが活きているような(笑)。
林:いきなり独立してしまったので、できることは全部受けようということですね(笑)。プロダクトだけでなく、グラフィックも空間デザインも受けます。そして今は素材のデザインまでできたら面白いねと、幅を広げ、俯瞰で眺めながら、1つ1つもちゃんとフォーカスしていきたい。そういう活動を意識せず自然に行えるのがいいなと。
−−枝ぶりだけではなく森全体を見ているような感じですね。細部に神が宿るではないですけどディテールにこだわるデザイナーは多いですが、ドリルさんは森も木も見る。
林:フォルムに関しては、整えるのは本当に最後なんですよ。それより構造的なことをやりたくて。初期のジョウロ、スコップもそうでしたが、まず今のジョウロとかスコップの構造自体を疑ってみて、このほうが合理的なんじゃないかとか、こういう構造にするとこういう機能が生まれるんじゃないかとか、そのへんからスタートすることが多いです。最終的な線や比率は、調整できる範囲内で最後に整えるという感じなので、いきなりディテールから入ることはあまりないですね。
−−リデザイン的なスタンスですよね。今ある形は一度全部捨ててというところから入るのでしょうか。
林:そうです。例えばモノは決まっていなくて、ただ新しい加工技術や素材だけがあるときは、この素材はどんな構造にすれば一番活きるかとかいうことを考えながらデザインします。
−−エンジニアリング系の発想が必要な気がするのですが、林さんご自身はどうですか。
林:最初にモビールを手がけたのがよかったのかもしれないです。例えばプラスチックの型物ばかりを最初からずっとやっていると、どうしても表面のハリ感とかフォルムの曲線とか、そういうディテールの方にどんどんいってしまう。でもモビールは完全な構造体でしかなくて、当時製造工場を知っているわけではなかったので、どうやったら釣り合うかとかどんな構造を作っていくかみたいなことを、手作りでいろいろ試みました。
設立当初の依頼は小さなプロダクトが多かったので、構造の試行錯誤が行いやすかったんですね。なので、自然とそういう感じになりました。家電メーカーなどのインハウスに入っていたら、また違う発想法だったのかもしれないですね。
−−デザインツールの話を伺います。ドリルデザインさんではメインにVectorworksをお使いですが、導入のきっかけはなんでしたか。
林:Vectorworksは、前身のMiniCAD7の頃から使っています。学生の時からなのでもう14年くらい前ですか。専門学校で導入していたからというのがきっかけですが、卒業制作とかで必要になるので、自分でも購入しました。
それ以来Vectorworksをずっと使っていますが、設計事務所ともまた違ってガッツリは使わないので、全然使いこなせていないと思います(笑)。
−−Vectorworksは図面を描くためのソフトですか。アイデアを練る段階は手描きスケッチですか。
林:そんなに大したスケッチも描かないです。こんな構造にしようかなとか、こんな断面形状にしようかなというのを、メモみたいなものから入って、次にだいたい模型を作ります。
−−模型である程度決めてから図面に落としていく?
林:製造用の図面は本当に最後の段階ですね。模型用の図面はIllustratorでササッと描く場合もありますが、家具デザインの場合は、ほとんどVectorworksですね。シンプルな形だったらVectorworksで3Dまで起こします。
−−プレゼンテーションはどうされていますか。
林:プレゼンテーションは模型が多いです。原寸の模型。手とスタイロカッターとかで、木はカンナで削ってテーパーをつけてとか自分で行っています。まあざっくりですね。
−−模型がGoになった段階で、模型をベースに寸法を追いかけて図面化して、1/1で作るのですか。
林:ほぼ同時進行でパーツ図を起こしていきます。それを組み合わせてVectorworksで図面を描いていくという感じですね。
−−Vectorworks以外にもデジタルツールはお使いとのことですが、プロダクトやクライアントによって使い分けるのですか。
林:モノによってですね。例えば、光造形や3Dプリンタでモデルを作ることが前提だったり、金型データとして加工する場合は、別のソフトを使っています。
−−Vectorworksと他のツールを混在させて使う場合もあるのですか。
林:デザインの領域は多岐にわたるのでVectorworksはかなりの頻度で使います。家具、空間はほとんどVectorworksです。逆に3Dの3次曲面を多用する場合はRhinocerosを使いますし、展開図などが必要な紙のプロダクトや布モノはIllustratorで描いていきます。空間系の仕事とかではShadeもけっこう使います。VectorworksとIllustratorとShadeは連携する場合もあります。
−−Vectorworksは、バージョン2013からRhinocerosのネイティブデータを取り込んだり書き出したりできるようになりました。Rhinocerosで作成した形状データを取り込んで、そのまま図面化できます。
林:今、Vectorworks2012を使っているんですけど、使っている機能は一部ですね。慣れていることもあって、レンダリングはShadeに持っていったりしています。パーツの平面をEPSで取り込んで、それをShadeで加工して3Dにして組み合わせていくことが多いです。
−−Vectorworksは、製造用の図面制作での利用がメインということですね。
林:例えばメルセデス・ベンツ コネクションのために作った椅子などはVectorworksでないと書けない感じでした。この椅子は三方継をしているんですけど、継ぎ目の角度をピシッと合わせるとかはVectorworksがいいですね。また、VILLAGEという椅子の図面では、パーツが細かくて、穴の開け方とかも21度振ったところに23.5度の穴を開けてくださいといった指示が入ります。
−−細かいですね。
林:メルセデスの椅子も、50角から始まって27度、28度とか使います。角材でつないでいくのですが、この辺は工場に丸投げできないので、すべてVectorworksでパーツ図で描いているんです。
−−デザイナーによっては線を描いて、あとは工場にお任せの場合もありますよね。ドリルデザインさんはどのプロダクトに関しても細部まで図面を起こすのですか。
林:原寸で模型を作るということはパーツ図を描かないといけない。そうすると、結局ここまでやらざるを得ないみたいなのはあるんです(笑)。
−−例えば工場のほうから、これはできないとか言われたことはないですか。
林:むしろ、これはできないって言われるかなと思いつつ出した図面でも作っていただけることがあります。メルセデスの椅子は工場の担当者に、これは今まで作った椅子の中で3本の指に入る難しさだと言われたそうです(笑)。
技術の高い工場だと難しいほうが職人さんのモチベーションが上がることもあって、デザインサイドでできるできないの判断をシビアにやらない方がいい場合もありますね。最低限、木材の動きの逃げをどこに持たすかとか、そういうことは考えます。それでパーツ図を描けばだいたい作ってもらえます。
−−現在、Vectorworksへのリクエストはありますか。十数年使われてきて、自分のワークフローやデザインワークの中で望む機能などがあればお聞かせください。
林:素晴らしいソフトだと思っています。あえて言えば、Vectorworksだけで手軽にきれいなレンダリングができたら、言うことないですね。
−−Vectorworksは2011バージョンから、レンダリングのエンジンを従来のLightworks Design社のエンジンから、MAXON社のCINEMA 4Dエンジンに変えています。CINEMA 4Dほど細かな設定をできませんが、品質的にはCINEMA 4Dそのものになっています。
林:そうですね、Shadeの操作性に慣れてしまっているので、今度、Vectorworksでレンダリングしてみます(笑)。素材感とか光源の感じとか難しいなとか思っていて。
−−今、テクスチャは木材、コンクリート、鉄など、テクスチャで有名なArroway社の高解像度データを標準で入れています。木目の表現もそのままテクスチャをボンと投げてレンダリングするだけです。リアルタイムでテクスチャを変えることもできます。
林:あ、そこまでできるんですね。すみません、勉強します(笑)。
−−慣れているソフトが扱いやすいというのは当然ありますよね。今はVectorworks、Shade、Rhinoceros、Illustratorと複数のツールをお使いですが、どれかに1本化したいというお気持ちはないですか。
林:あります。できれば1本のソフトで全部できたら理想だとは思います。ただ1本にまとめきれないのはやはりクライアント対応がありますからね。図面に強い、金型に強い、印刷に強い、それはやはり各ツールの存在価値になっているので、当面はその分野で一番馴染んだツールをそれぞれ選択していくことになるのかと思います。
−−ありがとうございました。
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