松井氏の手によるロボット「Palette」(クリックして拡大)
近未来的な空間で構成された展示会場(クリックして拡大)
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日本を代表するロボットデザイナーである松井龍哉氏の個展「松井龍哉展 フラワー・ロボティクス」が、茨城県の水戸芸術館で開催されている。
本展は「SIG」「PINO」といった初期のロボットに始まり、「Posy」(写真上。クリックして拡大)や「Palette」など、松井氏がこれまでに手がけてきたロボットを中心とするさまざまなデザインプロジェクトが一望できる初めての機会となる。
今回の企画では、会場全体が松井氏が主宰する「フラワー・ロボティクス」社に関するシミュレーションとして構成されているのが特徴だ。フラワー・ロボティクスは、松井氏がロボット産業を21世紀型の新産業と位置づけて、その発展に向けて設立した企業であり、ロボットのデザインを現実の社会で実践するための組織であるとともに、松井氏の理念を共有するための共同体とされている。
フラワー・ロボティクスがロボットデザインとどのように関わっているか、ロボット産業の創出に向けて組織をどのように運営していこうとしているのか、来場者は会場内を進みながら少しずつ理解することができる。
特にロボットデザインについては、開発段階の検討モデルや、実動が可能なワーキングモデルなどが豊富に出展されているほか、ロボットの動作を通じてそれが認識している状況を来場者もリアルタイムで体感できる仕掛けの数々も効果的だ。
さらに、会場ではロボットだけでなく、新興のエアラインとして話題を呼んだ「スターフライヤー」のトータルデザインや、ブティックや美容院など商業空間のデザイン、詩情をたたえた近作のオブジェに至るまで、松井氏の多彩なデザインワークを見ることができる。
ロボット、ブティック、ネイルアート、、、一見すると脈略がないかのような多彩なジャンルにおよぶ松井氏のクリエイションだが、そこには人間と人工物・人工的な環境がたがいに補完しあう状況をデザインすることで、「希望を感じられる未来を創造する」しなやかな視線が一貫している。
会場内の解説キャプションも松井氏の手によるもので、フラワー・ロボティクスという有機的な存在を通じて、社会にはたらきかけるデザイナー、松井龍哉の姿勢が隅々から伝わる企画である。
(秋元 淳/JIDPO)
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