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▼2012年12月1日
●渋谷にある松濤美術館で「坂田和實の40年」という展覧会が開かれていました。松濤美術館自体、白井晟一の傑作ですが、展示もまた小振りながらとても感じるところの多い内容でした。何百年も風雪に耐えて色彩も形状も変わってしまった道具達は、まるで美術品の風情をたたえていました。その中に一点異彩を放つものがありました。それはブラウンの小型電卓。それだけはまっさらでとても不思議であり同時に坂田氏の視点は「新しいものも古いものも等価」という見識を感じました。モーツァルトやベートーベンの楽曲の中にビートルズが混じっているような感慨がありました。(アキタ)

●iPad miniのWi-Fiモデルを発売直後から使い続けているが、かと言って従来サイズのiPadを使わなくなったということもない。どちらにもメリットがあり、個人的にはここしばらく、バランスを保って使い分けるというスタイルが続きそうだ。(K.O.)

●なにか、日本のモノ作りの状況が以前とはまったく変わってきたような気がする。液晶画面で有名だった某家電メーカーが、アジア隣国の勢いに押され、経営的に窮地に陥っている。かつて、音響映像のプロの世界を牙城に納めた某企業は、家電オーディオの世界でも新規性のある製品を世の中に飛ぶ鳥を落とす勢いで発信していたのだったが。と言われ始めたのが、いつの頃だったかすら今は思い出せないくらい前のことのように思う。最近、放映されたスマートフォンのCMで、日本のテクノロジーを結集した…というようなキャッチコピーを使っていたが、テクノロジーで、モノが売れる時代ではないだろう。かつて、胸踊らされたわくわく感がそこにはほとんど感じられない。バッテリーが持たなくても、初期不良が多くても、傷がつきやすい造形処理でも、行列を造って予約をしてまでも欲しいモノ作りをしている外国のメーカーもある。数字では表せないわくわくさを、いち早く牽引するようなモノ作りが必要なのだと、どうしてまだ気がつかないのだろうか?(くらまさ)

●今月首都大学東京で特別講義行った。受講生はシステムデザイン学部の大学院生で、主に医療機器のデザインの話をした。持っていった手術用の機械には興味を示していたが、事前に聞いていたとおり非常におとなしい印象だった。数年前に韓国の大邱(テグ)大学で講義した時は生徒たちのデザインに対する情熱を強く感じのだが、それでも大邱大学の講師は「最近の若者はおとなしすぎる」と言っていた。国民性なのか時代なのか分からないが、やはり情熱や希望を抱けない今の日本の社会に問題があるような気がした。(芝)

●このところ気に入って毎日使っているiOS用のアプリがある。あまり日本のメディアにも登場していないこともあるのか、使ってますという人に会ったことがない。Popplet(http://popplet.com)というそのアプリは、一言で言うとアイデア発想のためのシンプルだけど賢いノート…というところだろうか。タップすることで現れる小さなボックスには、テキスト、画像、手書きメモが挿入でき、そのボックスサイズも伸縮する。マインドマップのように線で結んで関係性も付け加えられる。ポイントはクラウドを使ってデバイス間で連携できるだけでなく、複数の人で使うこともできる点だ。最後はPDFとしてEvernoteにメールする。そうすることで文字は検索対象となる。手放せないアプリになってしまった。(ナカバヤシ)

●すでに時代は、愛用のエレキギターをコントローラーにして遊ぶゲームが登場するまでに至った。しかも、普通にコンシューマー用として。「ロックスミス」という、そのゲームが凄いのは、もう何か全体がロックなこと。多少間違っててもオッケー範囲ならオッケーにしてくれるし、弾けると分かれば勝手にレベル上げてくれる。ジャストタイミングよりノリ重視。詳しいことはレビューで書く方がいいかなあ。(納富)

●今年の秋で最大に悔やまれたことが、最近GUCCIやルーブル美術館とのコラボで話題の荒木飛呂彦氏「ジョジョ展」に行けなかったこと。日時指定の前売券って買いにくくないですか?(涙)。そんなわけで行けなかった分、自分の中のJOJO愛が増幅されて、iPhone5の裏に早速、スタンドのキラキラシールを貼り付けたり、通販で「ジョジョ展」限定のカタログやグッズをおとり寄せしてしまいました。連載開始当初から好きだったけど、ジョジョってやっぱり素晴らしいっっ!! ところで、あと一週間後に迫ったベリーダンスの発表会、初めてお店を借りてのステージで緊張が高まるばかりですが、なんとかがんばってきます!(野々村)

●例えば「椅子」。座るという機能は不変ですが、材料は木材、合板、プラスチック、金属など時代によって変わってきました。「普遍性と時代性」。例えば「薬」。薬によって頭痛から解放されてもお腹が痛くなるかもしれません。「作用と副作用(メリット、デメリットともいえる)」。普遍性と時代性と作用と副作用…そんなことを思いながら、年末進行に流されている年の瀬です。しかし、時代というのは人が動かすが、誰も抗うことはできない。不思議です。(森屋)


▼2012年11月1日
●One productsというプロジェクトをはじめた。 あるモノを考えついてそれをどう製品化しようかと思って製造所に相談したら「1個でも10個でもほとんど製造コストは変らない」という答えが返ってきて、アイデアが湧いた。1個だけでも作ってもらえるなら「買い手」ができた時にその都度1個作ってもらえば良いと思ってそれをOne productsと名付けた。わたしのビジネス形態が従来のカタチからコンサルティング・ロイヤリティー・セルフプロダクトと変ってきている。(アキタ)

●アップルの大幅な組織改編が行われ、iOS開発の責任者でジョブズの弟子的立場にあったスコット・フォーストールが事実上、更迭された。一方で、彼と軋轢があったとされるデザイン部門のトップ、ジョナサン・アイブは新たにユーザーインターフェースまで含めてアップル製品全体のデザインを統括することとなった。最終的にティム・クックは、2人のうちからアイブを残したわけだが、これは今後のことを考えれば妥当な決断だったと言えるだろう。(K.O.)

●このシーズンはデザインイベントが花盛り。東京でもデザインに関わるさまざまな催しがあちこちで繰り広げられている。多くの大学でも学園祭が毎週のように各校で開催されている。今年も、私のゼミでは課題作品を商品化して、大学祭で販売する。マーケティング的には、来場者の構成で決まってくるので、一般的なものとは少し毛色が違う。特に価格面では、衝動買いで財布の紐が緩むあたりが適切で、売り切りごめん的な要素が強い。学生の値付けを見ると、300円くらいから3,000円くらいまでを相場と踏んでいるようだ。その値付けに関しては、ちゃんと原価計算をさせて、材料費はもちろん少なくとも自分の工賃を時給換算させて反映させている。世の中に出回っているさまざまなモノの価格は単純には考えられていないことや、企画から販売までにはそれに携わった多くの人々が居る事を実感させるためだ。さて、どのくらいの売行きになるのだろうか? さすがに売り上げを点数に反映させるような酷なことはするつもりはないが。(くらまさ)

●前の会社で働いていたドイツ人デザイナーが久しぶりに来日した。7年日本で働き、今は故郷の街でフリーランスデザイナーとして生計を立てている。「ドイツの景気はどう?」と聞くと、「絶好調!」の一言。以後その手の話をする気がせず、たわいもない話をしながら飲んだ。部下として働いていた時は何かにつけ不満げだったので日本がそれほど好きでないのかと思っていが。故郷に帰って2カ月で日本が恋しくなったと言う。その理由は食べ物とサービスだそうだ。日本ほどのグルメの国はないと彼は言うが、それは同感である。Facebookに食べ物の写真がアップされていると100%日本人だと彼は言っていた。(芝)

●10月27日に「トップキュレーターの情報ブラウジング」と題したセミナーを行った。スマートフォン、タブレット、ノートPC…という複数のデバイスを横断し、iOS、Android、MacOS X、Windows…と、それぞれのOSの組合せでも同様の仕組みを構築できることを目的とした内容。情報ソースからの大量な情報を高速にブラウジングする手法と意味をレクチャーした。RSSリーダーからの情報をスクリーニングしPocketを経由してEvernoteへと導く、アウトプットのための情報定点観測システム。キーワードは「捨てる・読まない・覚えない」整理術…となりました。(ナカバヤシ)

●ひたすら手持ちの書籍をデジタル化する毎日。戦後から高度成長期あたりの本は特に、早くデジタル化しないと本自体が読めなくなる。80年代の文庫本や新書も危ない。長期保存を考えずに作られた製品の多さに眩暈がする。それ以上に、今の電子書籍は寿命が短そうで、結局、自分でデジタル化するしかない。悲しい。(納富)

●本会場に先んじて前年に引き続き、DESIGNTIDE TOKYO 2012 のエクステンション会場となった新宿伊勢丹へ。売り場の中に作品(プロダクト)をとけ込ませるという手法は、デザイナーと各方面の有名ブランド、そして消費者との距離をより身近にしてくれているようで、見ていてとても楽しい気分にさせられます。DESIGNTIDE TOKYO、TOKYO DESIGNERS WEEKの本会場も今これからまさに見て回ろうというところ。実際のデザイナーさんたちと会ってお話しができる貴重な機会なので、一層期待が高まります。ちょっと遅い夏バテで現在微妙に体調不良ですが、大好物の秋の味覚「いもくりなんきん」でなんとか乗り切って、今年の新たな作品と向き合いたいです。(野々村)

●今年も「pdwebデザインコンペ2012」にたくさんのご応募ありがとうございました。今年から「デザイナーとモノ作りの現場をつなぐ」をコンセプトにリニューアルした本コンペですが、昨日の締め切りまでに、数多くの力作を受け取りました。11月中旬にエントリー作品のページを公開予定です。応募された方も、そうでない方も楽しみにお待ちください。(森屋)


▼2012年10月1日
●今年の夏はいろんな「SF」を映画館にいって観ました。その勢いで昔のSF映画を再び見直しました。映画の中の「未来」をすでに過ぎようとしている今から観て「そうはならなかった」事も沢山ありますが、恒星を渡り歩いたり街なかを飛ぶ自動車を作れる「技術」がある一方で映画の中で情報を映し出すモニターがブラウン管だったりするのが面白い。そういえば「壁掛けテレビの出現」というのが、かつて未来に登場する夢の製品だったことを思います。
「白ずくめ」の宇宙船が未来だとむかしは感じていたが、今ではひょっとするとさらに未来は「木目」かもしれないと思ったりする。進むということは「遅れたものの価値」を見いだす事ではないかと映画を観ながら思った次第。(アキタ)

●iOS 6の地図機能がずいぶん叩かれているようだが、現状では批判も致し方ない内容と言える。どうやらグーグルが、ナビ機能をAndroid用アプリ限定にしてiOS版に入れるのを拒んだためにアップルが自社開発に踏み切ったらしいが、水面下では他にもいろいろな駆け引きがありそうだ。いずれにしても、あれだけの資金力を持つアップルゆえ、ここ数ヶ月から1年の間にかなりの改善を見るだろう。それはあまり心配していないが、やはりジョブズが生きていたら、このレベルで出荷することを許しただろうかと思ってしまうのである。(K.O.)

●先月の後記の続きだが、日本人の几帳面さを改めて感じた。マルメの手前で停まってしまった列車は、駅でもなくただ複線の線路上。そこに後続車がやってきて、平行に同じ方向に向かってドアとドアを同じ位置にして停まった。そして、小さな脚立を介して荷物を持った乗客が乗務員の誘導で乗り移る。そうした乗り移りでも地元の乗客や乗務員はそれほどの驚きを見せていない。車内で声をかけた地元の女性が言うには、日常的だし彼女も何度か経験があると。列車の遅れは海外では良く経験するが、乗り移りまでは初めてであった。こういったことは日本では考えられない。その几帳面さが、アジアの生産拠点の今後の模索にも現れている。特に民主化が動き出したミャンマーでは、中国や韓国でなく日本人の几帳面さを気にいっているようで、労働者の仕事への取り組みもまじめらしい。進出している企業も賃金の安さを価格へ反映させるのではなく、時間をかけることで品質の向上へつなげている。価格ではなく高品質で長く使えるものを目指したい。最近の私の仕事でタイでの生産を試みたモノも、約2年かかったが良質の量産品が手元に届いた。(くらまさ)

●先日の日経産業新聞に気になる記事があった。アメリカやカナダの農場でスーパー雑草なるものが繁殖しているとのこと。それも遺伝子組み換え作物の畑に特に目立つという。それらの遺伝子組み換え作物は除草剤に耐性を持つよう作られていて、除草剤を撒いても枯れない。ところが雑草がその耐性を獲得してしまい、スーパー雑草となったのだそうだ。日本では遺伝子組み換え作物は殆ど栽培されていないらしいが、それらが輸入され加工食品として我々の口に入っていることは間違いないだろう。これほどの短期間で環境に問題を引き起こしたのだから、いずれは人間に影響が出てもおかしくない。(芝)

●9月21日に、タイのバンコクにあるTCDC(Thailand Creative & Design Center)にてデザインワークショップを行った。大型の複合商業施設であるエンポリアム (EMPORIUM)にあるTCDCのセミナールームに、タイのデザイン従事者が集ってくれた。滞在期間中にお会いした方々との交流は、タイのデザインや産業への理解を深める一助となる機会だった。夕方には激しい雷雨を伴う日が続く雨期後期の時期だが過ごしやすい気温の中、2度目のバンコクでの1週間は瞬く間に過ぎ去った。(ナカバヤシ)

●弟の結婚式から始まり、連休には小学校以来の二泊三日の登山&キャンプに出かけ、誕生日も迎えて自分へのご褒美と称して久しぶりに好きな小物を買ったりなど、プライベートでは非常に充実した日々を過ごしていたこの9月。家族や仲間や好きなものが一気に増えた、まさに収穫と実りの秋となりました。これから年末にかけて、さらに充実した日々にしていくのが目標です。(野々村)

●10月、芸術の秋、デザインの秋ですが、pdwebデザインコンペ2012の締め切りも10月末日まで。いよいよあと1ヶ月となります。例年、応募の受付期間を2ヶ月間にしているのですが、やはり締め切りが近づいてからの提出が多いので、来年からは受付期間を1ヶ月にしようかと思っています。
さて、家電や自動車メーカーが元気がない中、今は電気を使うモノ、システマチックなモノより、もっと身近でしかも個々人ときちんと向かい合ったモノ作りからリスタートしているような気がしています。(森屋)


▼2012年9月1日
●祇園祭の最中の京都に出張で行く機会があった。7月中旬にある宵山や山鉾巡行が有名だが、7月1日からはじまって月末までの1ヶ月間の長いお祭りであることをはじめて知った。大文字焼きで有名な送り火はお盆にあるけれど、それと祇園祭は別の行事だということもはじめて知った。唐突に祇園祭の話を書いたのは、「お祭り」があるかないかによってその土地への愛着が相当に違うだろうとこの頃考えていたからだ。同じものを見て感動しそれを互いに語り合う。そういうことが1年に1度あるかないかは「そこに住んでいる」という実感と強く結びついている。家の息子にとっても近所にある八幡神社のお祭りは小学校や中学校の「同窓会」になっているを見ると、ずっと祭りのなかったところに育ったわたしにはとてもうらやましい光景だ。(アキタ)

●8月は、2冊の書籍の執筆で、例年になく忙しかった(まだ完全には終わっていない)。1冊はアップル関係だが、もう1冊は自分にとっても新たな分野であるブランディングについての興味深い本となる予定。発行されたら、改めて紹介したいと考えている。(K.O.)

●大学の学生を連れて、フィールドワークとして久しぶりにヨーロッパ移動の旅をしている。この旅の中、プロダクトデザインを生活の視点から観ることで、その「風土」と「人」と「モノ」の関係を感じ取ってもらうことが目的だ。そして移動も往復の航空機から始まって、さまざまな公共交通機関を利用している。都市内では地下鉄やトラム、バス、ボート。都市間は特急列車、寝台車そして夜行フェリー。さらに徒歩による国境越えも考えている。ミュージアムなどを訪ねることも勉強になるが、「モノ」や「こと」が満載の、乗り物や駅でも感じ取って欲しい。締め切り催促されてしまったぎりぎりのこの後記も、ストックホルムからコペンハーゲンへの国際特急列車X2000の車中で書いている。と、ここまで書いたら、もう少しでマルメに着く所で、列車のメカニカルトラブル。車両を移ることに…。(くらまさ)

●あてにしていたキャンプ場の閉鎖で、すっかりやる気をなくし、だらだらと夏休みを過してしまった。高原で活躍する予定だったポータブル赤道儀を使いたい気持ちだけはどうにもならず、NEX5をのせて我が家の屋上で星野撮影を試みた。街の明かりで3等星がやっと視認できる程度の星空なので期待していなかったが、3分間の露光で真っ白になった画像をPSで補正していくと10等星以上の星が写っている。そしてかすかにだが銀河が浮き上がってきた。今更ながらだが、改めてデジタルパワーの凄さを実感した。(芝)

●道端の草花の名前を知らなくても現代生活には支障がない。それがどんな花をいつ咲かせて実をつけるのか…など、通り過ぎていった人にとっては何かの判断を左右するような「情報」ではなかったということだ。しかしながら世界のほぼすべての場所で事象は起こり常に変化し続け、地球はニュースの素に事欠かない。ヒトと情報…について考えた8月となった。(ナカバヤシ)

●iBasso Audioのコンパクトな24bitオーディオプレーヤー「HDP-R10」で、24bit/96KHzなどの高品位音源を聴いていると、好みを越えて、音の情報量の違いが直接耳に届くインパクトに圧倒される。ライブの感動に近い。Retinaディスプレイと24bitオーディオの感動は、多分同じもので、ここからがデジタルの本領なんだろうなと思う。(納富)

●残暑はまだまだ厳しいですが、8月最後の夜は見事な満月が夜空にぽっかり浮かんで、まるで中秋の名月を先取りしたような、妖しいまでの美しい光を放っていました。気がつけば、もう9月。「デザイナーズFILE」の制作スタッフとして関わり始めて、私ももう1年です。次年度の「デザイナーズFILE2013」もより一層、皆さんと一緒に素晴らしい書籍にしたいと思っておりますので、今年度もどうぞ、よろしくお願いいたします! (野々村)

●いよいよ9月1日から、pdwebデザインコンペの応募受付が始まりました。今回からテーマは「デザイナーと産地を結ぶコンペ」です。これまで縁のなかったデザイナーと企業が出会うことで、当たり前ですが、これまでになかったモノが生まれます…そんな、新しい出会いやモノが生まれるきっかけとなるコンペになれば嬉しいです。また、プロダクトデザインを中心としたデザイナーズ年鑑「デザイナーズFILE 2013」も制作準備に入ります。今回もよろしくお願いいたします。あと誰も気付いていないようですが、2007年9月創刊のpdweb.jpは、6年目に突入です。(森屋)


▼2012年8月1日
●昨年3月の大地震は、おおくの人に生きる意味を再考させる機会になりました。わたしの周辺でもいろんな人が環境を変えましたが、わたしもまさに「環境」が変わることになりました。長く放置されていた事務所のとなりの空き地が分割販売されて、今個人邸が建築中です。そして今度は向かい側にあった住宅やアパートと小規模のマンションがすべて撤去されて大きな5階建てのマンションが来年の末に出来上がる予定です。この猛暑の中、撤去作業が真っ盛りです。出張に出ていた5日間ですっかり遠くの副都心がよく見えるようになっていました。つかの間の「見晴らしのよさ」。結論:工事前には引っ越そうかと思いましたが、この変貌を見届けようと思い直した次第です。(アキタ)

●インタビュー取材などでコーク(アイルランド)とロンドン(イギリス)を訪れた際に折りたたみ自転車のA-Bike Cityを持って行き、現地の交通手段として活用した。数日の間に5、6回はA-Bikeについて質問されたが、どれもそこそこ高齢の方だったことが印象に残っている。日本では、そもそも質問されないし、年配の方は興味を持たない。この違いは、どこから来るのだろうか?(K.O.)

●ここに書くことが相応しいかどうか分からないが、アナログの大切さを最近痛いほど実感する。大学での基礎演習で、製図とレンダリング、モデリングの手作業のID三種の神器を教えていると、最近の学生はまったくと言ってよいほど、手が動かない。さらに、持続力がなく途中までは丁寧に取り組むのだが、仕上げになるとどうも手を抜いている感じが否めない。私の時代は学生のときにアナログを学び、社会人になってからデジタルへ移行していった。つまり、両方の長短を知ることで、できるだけ良い方を活用して仕事を仕上げたものだ。確かに昔は、レンダリングでのフィニッシュのホワイト入れなどは、面相筆の手が震えたこともあり、今のデジタルの「+Z」で取り消せることを思えば、嘘のような時代であった。先日、授業でモデリングを行った。スタイロを削りパテ盛りをし、サフェーサを研磨して塗装後にクリアの水研ぎ、コンパウンドで艶出しをしたモックアップを見せて触らせたところ、学生たちから声が上がった。手作業の実物の強みをもっと体感させたい。(くらまさ)

●今年の夏休みは、霧ケ峰の鎌ヶ池キャンプ場に星見キャンプへ行く予定だった。昔は1人で星を見に行ったものであったが、ここ7年ぐらい行っていなかった。ネットで様子をうかがってみると、何と2006年に閉鎖されたとの情報。いろいろ調べてみると、どうやらお役所の自然保護の観点から閉鎖を余儀なくされた様子。確かに目の前の八島湿原は貴重な自然であるが、立ち入り禁止で、しっかり保護されていたように思う。キャンプ場は牧場のような草原で、野焼きなどで維持されていたらしく、人の手による景観と、手つかずの自然が実に絶妙な景色を作りだしていたのに、なんとも残念。電気はおろか、何の設備もなくアクセスも不便なこのキャンプ場に来る人は、自然との接し方をそれなりに理解している人たちだったと思う。保護したいのであれば、観光バスが押し寄せるビーナスラインに面した駐車場を閉鎖すべきではなかろうか。(芝)

●複数の要素をつなぎ、それらの間の調整を行い、あるカタチとして再構築する行為を「デザイン」と呼ぶ文脈のとき、当然ながらその範囲は広い。モノ作りの範疇を超え、ヒト、モノ、プロセス、仕組みなどに及んでいく。先日のとある勉強会では、それらの不足分に気づかされた。「ルールのデザイン」だ。技術や仕組みもルールがあって機能する。オリンピックを見ながら思いを強くした。(ナカバヤシ)

●USBメモリを見ていると、本当にこの形が最適なのかと考えてしまう。万年筆のカートリッジもそうだけど、先に必要性に迫られて、とりあえず作ったモノが、そのまま進化から取り残されて、使いにくさが放置されている。そういったモノは結構いっぱいある気がする。(納富)

●ロンドンオリンピックが開幕して、世間はなんとな〜くオリンピックで一喜一憂。この猛暑の中、時差や仕事もあってすべてを観戦するのは難しいけれど、メダルを目指して戦っている選手たちの姿は本当に美しいし、日本がメダルを獲ったあかつきには、自分も同じ日本人としてとても勇気づけられます。そんな最中トップレベルの争いとは全く無縁に、私事でベリーダンスのプチ発表会があり、私は金色の衣装を着けてセンターで踊りました。プチ金メダル気分です。(野々村)

●街角のカフェでノマドワークしていると、同類のおじさんたちを必ず見かけるので、つい、皆さんどんな「道具」を使っているか見てしまう。Windows系各種ノートPC、MacBook、iPad…さまざまだ。その傍らにはスマホやポケットWi-Fiが置かれている。ノマドワーカーの人種もさまざま。ビジネスマンからクリエイター、学生、そして女性のノマドワーカーも少なくない。こうなると「道具」の方が、ユーザーのライフスタイルやファッションの多様性に対応しきれていない。本体はもちろんケースなど、デザインが活躍できるステージがここにはもっともっとあるのかもしれない。(森屋)

▼2012年7月1日
●先日ビックサイトでインテリアライフスタイル展が開催された。アッシュコンセプトから発売されるShunik(朱肉のセット) もその場にあったのですが、その展示の目の前にブースを出されていたのがイタリア・ダネーゼ社の製品を扱っているクワノトレーディングでした。神田にある桑野さんのショップ兼オフィースを訪問したのは今から6年ほど前のことですが、コレクションを見せていただき、1988年にミラノ市内にあるダネーゼショップでの感激を思い出しました。最近わたしがデザインしたPrimarioやtrystramsや今回のShunikには、ダネーゼへのあこがれと感謝と敬意が込められています。(アキタ)

●連載コラムでも採り上げた、アルミ押し出し材による画期的製法の自転車、mindbikeのデザイナーであるTSDesignの角南健夫さんとの自転車談義を収録したiOSアプリ形式のオーディオブック「Cyclomind」(http://itunes.apple.com/jp/app/cyclomind/id521038880?mt=8)がリリースされた。自転車好きの2人が、その遍歴やmindbikeの秘密を語る内容だ。興味のある方は、ぜひダウンロードしてお聞きください。(K.O.)

●やるんじゃなかった…OS X Lionアップデート。使い勝手が変わったし、何と言っても、昔から使っていて今はアップデートされていない、ちょい古のアプリが全部非サポートになってしまった。いままで利用していたiDiskがiCloudへの移行にするのに伴って6月まででサービスを終了する。仕事をする場所がいろいろとあると、どうしても小さなサーバー機能が欲しくなる。大げさでなく、容量や機能もiDisk程度のことで十分だったのだが。もっと口コミなどをチェックしておけばよかった。自分のケアレスミスだが、昔はこうしたことは、それほど起こらなかったような気がする。どんどん、機能が便利になる一方で、互換性が複雑になっていくことも否めない。感覚的な「ゴミ箱にいれる」的シンプルなユーザビリティではだめなのだろうか? (くらまさ)

●今年も蛍の季節がやってきた。我が家の前の湿原に現れたのは例年より1週間以上遅かった。今年は、例の竜巻の時はここも大粒の雹が落ち猛烈な突風が吹いたし、加えて異常な時期の台風通過で、どうなることかと思ったが、一匹目を見つけたときはほっとした。しかし数は去年の半分に満たない様子だし、心なしか光も弱く感じる。でもあの異常気象の中、よく頑張ったものだと勝手に感動する。今年こそ長時間露光でカメラに収めようと毎晩バルコニーで粘るが、シャッターを切っている間だけは光らない。(芝)

●6月はEvernoteのプレミアム登録が更新になる月。2010年からなので3年目に突入したことになる。現時点でノート数は約21,000を超えた。ニュースからのクリップ、SNSからのクリップ、画像のクリップ、メールのクリップに始まり、ホワイトボードスキャンや、企画メモや手描きのデザインスケッチ、3Dデータに至るまで…およそ、日々の活動の大半が最後はEvernoteに収束して、本日も記録され続けています。(ナカバヤシ)

●今、国産万年筆では、透明軸でインク吸入式のパイロットの「カスタムヘリテージ92」と、長刀研ぎとインク吸入式を手ごろな価格で入手出来るセーラーの「プロフィットレアロ長刀研ぎ」が凄いと思うのだけど、万年筆のデザインそのものは、もう一度見直したい気がしています。(納富)

●今年の夏のバーゲンは、百貨店が例年よりスタートを2週間ほど遅らせたために、かえって6月からプレセールを始める店舗もあったりと、てんでバラバラな印象。毎年7月1日にはお気に入りのブランドをスタートダッシュで駆け回っていた私も、今年はどんな戦略でいこうかと日々思案していたのですが…。ハイ、もうそんな煩悩からは解放されました。お気に入りのお店につい先日立ち寄ったら、これまた超お気に入りの某オランダのブランドアクセサリーをこっそりセール価格で売ってくれました。相方の前ではなんだかまだ着けられないので(買ったのは秘密)、今度はいつ「セールで買ったのよ」と堂々解禁しようかとタイミングを思案中です。(野々村)

●トップページで告知中の「pdwebデザインコンペ2012」。まだ少し先ですが、2ヶ月後の9月より作品の応募受付を開始いたします(10月末まで)。読者の皆さんの作品作りは順調でしょうか? たくさんのご応募を楽しみにお待ちしています。コンペの詳細はこちらまで。http://pdweb.jp/dsgncmp2012/
ところで先日、DMSに行ってきて、精度の高い”パーソナル3Dプリンタ”の登場もそれほど遠くない印象を持ちました。現在、写真やイラストに用いられているカラープリンタのように「出力物=作品/製品」なんて日もやがて来るのでしょうか。(森屋)


▼2012年6月1日
●今の事務所に引っ越して12年が経過した。本を置く場所として探し当てた下宿のような古いアパートの二階だ。当時は本が沢山あってかつ大きなドラフターと熱線カッターとコピー機を所持していたのでとても家には置ききれなかった。引っ越してからの12年でデザイン作業は大幅に変化した。「必須」だったはずのコピー機もドラフターも熱線カッターも姿を消した、いまではFAXすらここにはない。残してはいるが「置き電話」も無くしても多分困らない。「借りる理由」だったはずの本も数年前に大量に処分した。今だったらこの文を書いてる机と椅子と一体型のiMacがあれば仕事はできるだろう。一見「道具の発達していない時代」に戻ったように見えるが進歩はわたしに狭くても「広く使える」空間をプレゼントしてくれている。(アキタ)

●Kickstarter経由で購入した3Dプリンタ、Printrbotを組み立て中。パーツ自体がPrintrbotで成型されているという点がユニークだが、それだけにどんどん設計変更されており、YouTube上の組み立てインストラクションとパーツの形が合わなかったりするので、パズル的な推理も要求される。しかし、キットを組み立てると、その仕組みがよく分かって面白い。(K.O.)

●久しぶりに衝動買いをした。今更ながら、であるがiPod nano。前からちょっと気になっていたのだが、実際に腕時計として使っている人に会い、じっくり見せてもらい、即購入。腕時計用バンドもいろいろ出ているがカーボンのタイプをネットで購入。早速ベルトに取り付けて見るとこれがなかなか良い。文字盤は今のところ18種類あるが、使えそうなのは5パターンくらい。当然防水ではない、スリープ解除しなければ時刻を見られない、頬杖をつくと角が痛い、バッテリー寿命が3日程度など、欠点はいろいろあるが、何より腕時計としてのデザインが気に入ってしまった。(芝)

●Bring The Design … デザインは「生み出す」のではなく「連れてくる」という感覚の共有が相応しい。アウェーな会場には我々とは繋がりのないコミュニティーに属した異なるカルチャーの人々が集っている。モノが配置された空間に登場人物がいて、時間が流れてことが起きる。それら一塊の表面上の文脈は掴めても、そこでのリアクションはそれだけでは見切れない。限られた定性情報からの仮説立案が肝だ。プロセスデザイニング…がホットなテーマです。(ナカバヤシ)

●凄い文房具、という言葉が普通に言われているけれど、本来、文房具は凄いというよりも、その文房具でしか出来ない仕事を確実に行ってくれるツールだったはず。もちろん、中には「凄い」ものもあるけれど、「凄い」は文房具の価値を表す言葉ではないし、文房具を語る上で使っていい言葉でもない。それが何となく、気になっている。(納富)

●先月の続きになりますが、北陸の旅は本当に素晴らしいものでした。東尋坊、永平寺、山中・山代温泉、九谷焼、金澤の古今の文化、能登の世界農業遺産である千枚田、日本で唯一の塩田、輪島塗、輪島朝市、珠洲焼、高岡の鋳物、そして忘れてはならない日本海の幸・のど黒、ほたるいか、氷見港のきときと…etc。山と海とに抱かれた北陸は、豊かな自然と文化で満ち溢れ、私たちは心身共に充実した日々を過ごすことができました。「世界一」の東京スカイツリーもいいけれども、この豊かで美しい土地は、もっと世界に誇るべきもの、日本で護っていくべきものではないかと思ったりもします…。(野々村)

●15年くらい前から撮っていたDVカメラの映像を、今頃になってデジタル化している。近頃のPCにはIEEE1394(FireWire)端子がなくなりつつあるようで、少し前のノートPCでキャプチャしている。さらに80〜90年代のベータやVHSの録画テープもデジタル化。これはアナログのビデオ信号をUSB経由でPCに送り専用ソフトでMPEGなどにしている。リアルタイムでの取り込みなので時間は掛かるが、昔のテレビのCMなどを見ながら作業していると懐かしくて楽しい。(森屋)


2012年5月1日
●先日メーカーの設計の方から記念品として作成中のグラスの写真が届きました。それを見てわたしは「実物」がすでに出来たと思ってお聞きしたら、それは3Dソフトを使ったレンダリングと聞いてびっくり。もうここまで技術が来ているんだなあとその進歩に対して感慨もありましたが、「絵が描ける」というぐらいではデザイナーというのもおこがましい時代になったと改めて感じました。デザイナーにとっての3Dソフトの効用は「頭の中に絵が明確に描ける」ようになったことかと思います。暗算の名手は「頭の中にそろばん」をイメージするそうですが、わたしは頭の中で「いろんなカタチのそろばん」をイメージ出来るところがミソかと思います。(アキタ)

●金沢で文具系のトークショーを行った。確か3回目となる訪問である。その翌日、あいにくの雨模様となったが、街をDreamSlideで回り、無料開園期間だった兼六園や昔ながらの商店街、路地にひそむユニークな古書店などを堪能。その途中で、まだ市販されていないものの、これはというモバイルアイテム(ヒント:木工品)に出会った。ゆくゆくはモバイルデザインのコーナーで紹介するつもりなので、お楽しみに。(K.O.)

●新年度が始まると、数々の催事開催の知らせが舞い込む。個展やグループ展、ギャラリーの企画展。そんな中に、百貨店で催される面白い展示の案内があった。50年以上も世界中で愛されている、着せ替え人形のバービーの催し物。それも、彼女のコスチュームの展覧会、「モードオブバービー展」。プロダクトデザインを生業としている立場で思うと、数ある量産製品の中で同じプロダクトといっても、このような着せ替え人形は特別なポジションにいるような気がする。物の擬人化の究極と言う意味で、身体のディテールの変更はあったにせよ、基本形は発売以来コンセプトを維持し、その時代のモードを取り入れつつ、コスチュームを含めた周辺商品は、強く時代を反映している。世代、時代を超えた多くのファン同士が、1つのモノを通して語りあえるブランディング。そうしたモノ作りを目指したい。(くらまさ)

●先月に続き中国の話題になるが、今、東莞(トンガン)のホテルでこれを書いている。昨日上海から深?経由で入り、金型工場から戻ってきたばかり。上海は6年ぶりだったが、その活気にさほど衰えを感じなかったのだが、ここ東莞にやってきて「あれ」と感じた。10年前の勢いから想像するほど変わっていない。しかもこの地域特有の困るぐらい元気な中国人に会わない。社長はレクサスに乗っているが、おとなしく控え目、工場は綺麗になったが、隣には廃墟となった巨大な工場もある。やはり中国はバブルの仕舞を静かに付けようとしているのだろうか。(芝)

●4月は慌ただしい。学校関連と社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)が新年度の活動スタートとなるからだ。加えて今年は、JIDA創立60周年の節目となる年でもあり、記念事業の仕込みも重なってきた。記念事業の方のサポートをしつつ改めて1952年にスタートを切ったJIDAの歩みを見る。日本のモノ作りの履歴と呼応してきたJIDA活動。人でいえば還暦。第1章から第2章へ切り替わる…変化の年になりそうだ。(ナカバヤシ)

●プラスのハサミ「フィットカットカーブ」とか、コクヨのスタンプのり「ドットライナースタンプ」、タイムタイマーのカウントダウンタイマー「タイムタイマー」といった、従来のインターフェイスを大幅に変えた製品を見ると、無性に興奮する。そして、最近は、そういう製品が増えてきたような気がして、とてもワクワクしている。(納富)

●今年のG.W.は最大9連休! ということで、私は相棒とともに、のんびり車で北陸の旅へ。車で旅するときは、いつもだいたいの行き先だけを決め、気に入ったところで車中泊したり宿をとったり。とりあえず、現代アートと輪島塗り、雄大な自然と日本海の幸だけは、必ずや、直にじっくり味わってきたいと思います。(野々村)

●「pdwebデザインコンペ2012」の告知を行いました。今年から「デザイナーと産地を直結するデザインコンペ」をコンセプトに、より現場に近いコンペにしていければと考えています。応募作品が審査員企業の厳しい評価をクリアできれば、そのまま製品化も夢ではありません。その分、自分の想い以上に、バイヤーの売れるか売れないかの評価、ユーザーの満足度を意識しなければならないと思います。素材を生かしたデザインの斬新さ、成型のしやすさ、安全性など、実は敷居がグンと上がったコンペとなりますが、皆様からの力作をお待ちしています!(森屋)


▼2012年4月1日
●先月に発売された号をもって「Real Design」誌が休刊になった。丁寧なことに、わたしの記事がなかったにも関わらず最終号を編集の方が送って下さった。今年はじめ「デザイナーの可能性」という真摯な特集を組まれてその志を感じていたし、コンビニでも買えるデザイン誌としての存在も貴重だった。さらにいえば若いデザイナーの作品が紹介されるチャンスが一つ減ったことも残念でしょうがない。かたちを変えてまた発刊されることを待っています。(アキタ)

●新書の執筆で、新型iPadの予約が3月12日から始まっていたことを知らずにおり、15日に予約したところ、最初のロットは完売状態。しかし、翌17日には入荷して事なきを得た。新書はアスキー新書より4月10日発売の「アップルの未来」(http://tinyurl.com/83hydez)。ジョブズ後のアップルの戦略と見通しを分析し、初の試みとして全編をiPad上でまとめてみた。ぜひ、ご一読されたし。(K.O.)

●大学での卒業式と入学式の間には、さまざまな年度切り替わりの雑務がある。卒制展運営委員の引き継ぎや新入生を迎えるためのクラス編制など。そんな時、ゼミの学生たちが自主的に1年間使ったゼミ室の大掃除をはじめていた。廊下に高く積み上げられた粗大ゴミや既卒生の忘れ物など。久しぶりに教室の広い床を拝むことができた。一段落した頃合いで、1人の学生のために彼らがサプライズで誕生祝いのクラッカーをならし、ケーキをカットしていた。3年生と4年生の新旧入れ替えの儀式のようにもうつる。窓から見える桜の木の莟はまだ柔らかくなっていない様子。新年度には、桜を愛でる会を予定しているのだが。(くらまさ)

●知り合いのデザイナーが突然中国から帰国した。彼は中国の大手家電メーカーにデザインマネジャーとして雇われていたのだが、契約期間をまだ1年残しての一方的な解雇だった。彼によると、今中国はインフレで大変なことになっているそうで、物価は週に2回のペースで上がり続けているそうで、経営サイドの社員に対する締め付けも相当なものだったと言う。ところが日本にはそれほど深刻な状況として伝わってきていない。これはどういうことなのか。富裕層はこのインフレに乗じて荒稼ぎをしているとも聞く。だから日本の経済にとってはさほど影響が無いということなのか。いずれにしても中国にかかわるビジネスになんらかの影響が出てくるのではないだろうか。(芝)

●「変わった」と思える物事は何がどう変わったのか…まで見なければ見誤る。「大きく変わった」と見える物事でも、現象としては道具が変わっただけで意味や本質が変わっていないことは意外に多いし、「変わってない」と見える物事でも、その人に取っての意味付けにおいては大きく変化していたりする。国や地域が変われば、仮に道具や意味が同じであったとしても使われ方が違うことがある。多様性の中でのデザインの在り様について考える。(ナカバヤシ)

●ハサミ3000年の歴史を変える革新的な製品なのに思ったほど騒がれないプラスの「フィットカットカーブ」や、スタートボタンもストップボタンもないインターフェイスが凄いけれど、知名度が低いカウントダウンタイマーの傑作「タイムタイマー」などを手に入れてニヤニヤする春。可動する仏像「リボルテックタケヤ」にも感動。(納富)

●ひと月遅れの梅も満開の盛りをようやく越えて、木蓮とコブシの白い花がちらほらと咲き始めた。庭先のパンジーやプリムラも色とりどりの花びらをを次々に開かせる。春は出会いと別れの季節と言うけれども、今年は何かと身近な人との別れの挨拶を交わすことが多かった。桜が満開になる頃には気の置けない友人たちといつものように、心置きなく芝生の上でのんびりと過ごしていたいと思う。(野々村)

●pdwebでは今年も「pdwebデザインコンペ2012」を開催いたします。今年から日本各地の産地の現場とデザイナーを直結する新コンセプトでの開催となります。詳細は4月下旬か5月のGW明けには告知できる予定です。もうしばらくお待ちください。(森屋)


▼2012年3月1日
●わたしは長い間「筆記具難民」状態にある。ずっと使っていたボールぺんてるの「太字」が製造されなくなって、それ以来「絵を描くボールペン」 の決定版が見いだせないでいる。わたしは中学生の後半にはすでに鉛筆からボールペンに移行してあまりシャープペンシルは馴染まなかった。たぶんそれは筆圧の関係だと思う。ボールぺんてるの太字は「ペンが描いてくれる」感じがした。あの時代を超越した緑色のシャトルに乗って絵の世界に飛び込む感じだった。ロマンチック。おなじボールぺんてるでも細字だと急に推力がなくなって「絵の壁」を越えられないというなんとも微妙な世界だ。 今はiPadのお絵描きソフトでお茶を濁してはいるけれどボールぺんてる太字の再登場を願っている。(アキタ)

●2月は、そのほとんどを書籍の執筆に費やした。アスキー新書より4月発売予定で、ポスト・ジョブズ時代のアップルについて書いているので、乞うご期待。(K.O.)

●多くの美術デザイン系学校の卒業制作展が、1月の終わり頃から3月の半ばくらいまで、あちこちで開催されている。特にこの時期は学校主催ではない、学科や専攻または有志グループなど専門領域での学外展示も多く、的を絞って見学するにはとてもありがたい。私のゼミの3年生有志もそうしたお披露目をしてみたいということで、私も会場手配など裏方仕事を影で支えた。単位を取得することに夢中になっている昨今の学生に比べると、なんら成績とは関係ないところで自分たちの力で何かを成し遂げようとする姿勢は、とても嬉しく感じる。春休みの今も毎日のように遅くまでゼミ室で作業に没頭している姿を見ていて、とても微笑ましく嬉しく思う。さてそのあとの、できばえだけは心配ではあるのだが。(くらまさ)

●今月初め、浜松で浜松メッセが開催された。訳あって毎年出展している。浜松を中心とした中小企業が主な出展者である。今どこの中小企業も逆風の真っただ中のようで、みんな売り込みに必死であった。私はと言うと、ちょっと場違いなこともあり、いつもやや引き気味に会場を見ている。そうすると、この会社の技術とこの会社の技術をくっつければ何かできそうと思うものがいくつか見えてくる。しかし、みんな自分を売り込むのに気を取られ過ぎているのか、そういう化学反応が起こる様子は見て取れない。ただ単にブース展示するだけが見本市ではないと思うのだが、日本の中小企業は視野が狭いのだろうか、少し残念である。(芝)

●「ローカリゼーション」をテーマにした活動をスタートして今月で3年目に突入した。事業領域からクリエイティブ領域への橋渡しを問題意識の根幹に持ちながら、海外展開を進める上で直面する異文化理解についてのアプローチについて考え、ワークショップやセミナーの開催し、人的なネットワークも広げてきた。今年度は同テーマをデザインに引き寄せながら「かたち」の問題に落しつつ掘り下げていく…という活動に入っていこうと考えている。(ナカバヤシ)

●楽器、特にエレキギターとシンセサイザーは何故かプロダクトデザインの領域外にあって、しかしデザインされるのを待っているような気がする。同じように、電子書籍のレイアウトも、何となくWebデザインの延長でしかなくて、見逃されてる。それらは、もしかしたら従来の「デザイン」の範囲外にあるのかも知れないと思った。それにつけてもApche IIが欲しい。(納富)

●我が家のインテリア、食器類は日本製と北欧製がほとんど。木の手触りやシンプルかつ温もりを感じられるデザインが好きなので、自然とそうなってしまったのです。そしてつい先日、飛騨産業「森のことば」シリーズの楢材ソファとローテーブルの購入に踏み切りました。ソファの座面は通常のものより若干低めなので、ソファを背もたれにしつつ床に座ったり寝そべったりするという、日本の畳文化の動作へもスムーズに移行できます(お家は全面フローリングだけど…)。LE KLINTとの照明とも相性抜群で、帰るたびに幸せを感じる今日この頃であります。(野々村)

●Baby Blossom(AKB48)の前田敦子が新曲で銀のグレッチ(Gretsch G5236T)を持ったとき、ああ、これはスタイリストのセンスというか、デザインの勝利だなと思った。ある環境にあるモノを置いたときの化学反応ですね。平たく言うとアイドルバンドがグレッチ? という違和感なのだが、あのグレッチが輝くシチュエーションはなかなか難しい。少なくともおじさんギタリストが持っても決まらないだろう。それと、高橋みなみの赤のムスタングも可愛いし、ソロでオクターブ奏法を使っていることはもっと注目してあげたい。(森屋)


▼2012年21日
●先日、クライアントである信号電材の社長から創設者が信号機の会社を起こしたのは50歳前で、部品メーカーとして長年かけてやっと成功をおさめかけていたにもかかわらず、それを捨てて納品先である信号機メーカーのライバルに名乗りをあげたという話を伺った。また会社の存亡がかかった新しい機能を開発しはじめた時すでに60歳に手が届いていたそうだ。世間で言われる人生の物差しを覆すエピソードだった。自らの可能性を自から幕を下ろしてはいけない。「これまではこれからの準備期間」。もうすぐ60歳に手が届くわたしの気持ちである。(アキタ)

●海上の神社として知られる厳島神社は、元々、周囲が陸だったところを、平清盛の命で今の形にしたものという。それは大陸からの使者などが瀬戸内海を船で通る際に、驚きを与えるための演出だった。その土木技術も驚異的だが、考えてみると、清盛にはスティーブ・ジョブズ的な才覚があったのかもしれない。(K.O.)

●1月を終えて、本当の意味で春の訪れを感じる節分の頃、気分もわくわくとして、新年度の準備も何となく気になりだす。そして新旧入れ替わり、身の回りに新しいものが少しずつ増えてくる。子供の頃、大人の使っている道具に憧れたものだ。腕時計や万年筆、革の手帳など、自分が生活する範囲ではほとんど使うシーンがないものだけに、大人の証の様に羨望視していたものだ。そして就職や入学祝いには、ある種の儀式的贈り物として、それらが選ばれていたような気がする。ところで先日、アップルがiPadを利用した教育システムビジネスに参入すると発表した。幼少の頃から手軽に膨大な新旧の情報があの1枚ですんでしまうことや、デジタル機器を日常的に触れる点など、教育ハードの仕組みが大きく変わろうとしている。おそらく、彼らの通学鞄の中にはiPadに携帯電話、もしかしたらポケットWi-Fiも入っているかもしれない。そんな子供たち、いまの大人たちの持ち物の何に憧れるのだろうか? (くらまさ)

●今年でSHIFTを立ち上げて6年目になる。今では自身の仕事のほとんどが手術用機器関係である。目標としていたわけではなく、ただ自然とそうなってしまった。臓器を手にとっての実験など、普通では経験できないことも今では当たり前になり、調べる文献も機械より医学の比率が増えた。振り返るとずいぶん奥深くまでこの世界に足を踏み入れたことに気づく。今、日本の社会は厳しい情勢の中で必要ないものをどんどん切り捨てようとしているかのようである。であれば、必要とされる場所があることに感謝して、メディカル・デザインというこの道を迷わず進もうと思う。(芝)

●1月21日に放映された「世界一受けたい授業」(日本テレビ)に出演した。国民性統計学…とキャッチコピーが付き、共著の『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか(日経BP社)』でテーマにしているローカリゼーションの観点が取上げられた。分かりやすい事例に注力し学校での授業を模した番組のプログラムに組み込まれた。放映後の各方面からのリアクションを受け、ゴールデンタイムのバラエティということから、さまざまな層の方に見ていただけたことを実感するに至る貴重な経験だった。(ナカバヤシ)

●歌川国芳展で買ったボールペンやクリアファイルが、安価な上に、文房具として高品質だった。ボールペンなんて、ラバーグリップがついていて、書き味はしごく滑らか。文房具好きの友人に見せると、その書き味に驚くほど。実際、最近の文房具の品質の高さは驚くほどなのだけど、現在の「文房具ブーム」と呼ばれる現象は、そんな文具メーカーの努力とは無関係に起こっているようで、ちょっと悲しい。(納富)

●ようやく書籍「デザイナーズFILE 2012」の原稿をすべて入稿! 昨年の震災、災害、不況の中、日本のモノ作りに携わるデザイナーの方々101組の渾身の作品の数々が、一挙掲載されています。表紙も昨年度版を踏襲しつつも、あれっ? と目を引くデザイン。全国有名書店やアマゾンで、2月中旬以降に購入できますので、是非みなさんお手に取ってみてくださいね!(野々村)

●プロダクトデザイナーの年鑑ガイドブック「デザイナーズFILE 2012」は2月中旬以降に発売予定です。詳細は近々にpdwebで紹介いたします。もうしばらくお待ちください。
ところで先日、自宅の机の足元が冷えるので、小型のファンヒーターを購入しました。家電量販店で5,000円以下の製品群をあれこれ探しましたが、デザイン的にはどれももう1つでした(購入した製品も)。こういった日用品の中には”デザイン”が行き渡っていないジャンルは実はたくさんありそうです。実用品、日用品はデザインされていなくても売れるのでしょうが、ちょっとしたモノがさりげなくかっこいいと、美意識の底上げになるのではないかなと思った寒い冬の1日でした。(森屋)


▼2012年11日
●2011年という筆舌に尽くせない過酷な1年をどう振り返ろうかとためらって筆が進まない時にまたおおきなニュースが飛び込んできた。
柳宗理さんが12月25日に亡くなられた。かつてpdwebで連載していた「ブックレビュー」の1回目に取り上げさせていただいたのが、柳宗理さんの「エッセー集」だった。2003年6月柳さん88歳の誕生日に刊行されたそうで、文章をまとめた本は初めてだったそうだ。1年ほどしてある信託銀行が発行している広報誌から柳さんのカトラリーについてのコラムを書いて欲しいという依頼がきたのだ。「エッセー集」の編集担当者の方が、コラムの書き手としてわたしを推薦してくれたそうだ。たぶんわたしが書いたブックレビュー読んでくれたんだと思っている。わたしはコラムの中で柳デザインをこう表現した。「自ら使う為につくられた民藝の中にあった『良さ』を束ねて安価な値段で多くの人々に提供したデザイナー」だと。一度もお会いすることはありませんでしたが、柳さんはわたしの先生です。(アキタ)

●このところ、故スティーブ・ジョブズ関連の記事・書籍執筆で手一杯だったが、一段落したところでアウトドアで焚き火忘年会を決行。携帯に便利な折りたたみ式焼き網を自作するなど、久々に手を動かす楽しいひとときを過ごした。(K.O.)

●2011年は未曾有の災害に見舞われた。とても悲しい出来事が、年の最初の頃に起こったのだから、みんなの気持ちが萎縮するもの仕方がない。そんな1年でも、明るいニュースがいくつかあった。サッカーのなでしこジャパンがワールドカップで優勝し、体操界では内村航平選手らが良い成績をおさめるなど、団体競技などでの活躍がめざましかった。2011年を語る漢字の「絆」も、そうした災害から学んだ人々のつながりで未来を明るくしたいという気持ちを象徴するものだろう。そこで、1年を「年度」で区切ってみたとしたら、先の災害は2010年度のこと。今年度はまだ終わっていないのだから、明るいニュースがもっともっと起こりうる時間がまだ3ヶ月も残っている。(くらまさ)

●日本で暮らしていれば「カレー」という語がどんな料理なのかをイメージすることは容易い。とはいえ個人の好みのカレーとなると、これはもう一様ではない。味付けや辛さを「傾向」として言う人や「ここのカレーしかカレーと認めない…」という意見の人など、結果的に「カレーごとの差異」に終始してしまうことが想像できる。一方、料理を作る方では、メインの材料が同じであったとしてもプロセスやスパイスの使い方でまったく異なるカレーができあがり、そういう一皿はおのずと「食べる人」を選んでしまう。デザインやモノ作りに置き換えるとどうだろう?…などと考える年越しです。(ナカバヤシ)

●T.MBHのiPhoneカバーを使っているのだけど、その完成度の高さと、モノとしての満足度の高さに感心し続けている。クロコダイルの皮をプラスチックのカバーに貼り付けた製品だが、その貼り付けに使われている技術の高さが、そのまま使い勝手に通じていることがすごいと思うのだ。(納富)

●今年はあっという間の1年だった。先日初めて参加した「連句」の会で、二句目に採用された七・七の長句、「流るる年の 足音(あおと)駆けゆく」は日々の実感。宮沢賢治のいうところの「ほんとうの幸い」が、みなさんの心に訪れますように。2012年もどうぞよろしくお願いいたします。(野々村)

●2012年がスタートしました。天下太平、無病息災、家内安全、商売繁盛。願いはこの4つの四文字熟語にすべて含まれます。
さて、今年のpdwebは、「Pro to Pro」というpdwebのコンセプトの原点を見つめ直し、ヒット商品からニッチなプロダクトまで、さまざまなモノ作りに関わるデザイナー、プランナー、エンジニアのみなさまの声をなるべくたくさん載せていきます。「隣はどうなの?」。そんな読者の疑問に応えるべく、ICレコーダーとカメラを持って、あちこちお邪魔します。客観的かつグルーバルな視点から業界を横断する情報を提供するのがメディアの仕事です。今年も読者のみなさまに、「面白くて役に立つ」コンテンツを発信していければと思っています。(森屋)


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