●デザインから量産まで
−−設立されてあっという間の8年間だと思いますが、これまでビジネス的にはいかがでしたか?
戸嶋:そうですね、設立間もない2008年9月にリーマンショックがドンと来たのですが、そこを乗り切ってからは、新規のクライアントさんが増えてきて、そこからリピートいただいたり紹介をいただいたりと、実績を積んでこれたので、今のところは順調に推移しています。
−−例えば電子デバイス系の依頼があったとして、それは中身も含めて生産可能ですか?
戸嶋:作れます(笑)。確かに回路系の設計者は社内にいないのですが、そういった場合はパートナーにお願いします。金型もそうです。構造物の設計は社内でできるので、電気系と製造は外部の提携パートナーに依頼しています。ですので、なんでもできます。最近は量産まで受注しています。
−−なるほど、いわゆるデザイン事務所のように「データ納品」だけではなく、実際の製造まで行うわけですね。
戸嶋:最近はクラウドファンディングが流行っていますが、そこで資金を集め、弊社に商品化を申し込まれるお客様もいらっしゃいます。
−−モノ作りの構造が大企業集中ではなく、地域分散型になってきていますよね。
戸嶋:そうですね、家電メーカーさんも空洞化していますね。デザインから設計、試作まで外注の場合も増えています。
●ハニカムのモノ作りの特徴
−−大阪拠点ですが東京進出のお考えはありますか?
戸嶋:徐々に関東からの依頼が増えてきまして、今は関東のお客様の方が多いかもしれません。ですので東京での打ち合わせも多く、そろそろ東京にも支店が欲しいとは考えています。やはり東京は仕事が多いですね。
−−ハニカムの製品作りに対するお客様の評価はいかがですか?
戸嶋:まず納品が早い、それと成型まで行えデザインどおりの製品を作る点はご評価いただいています。一般的には最初デザインしてその後設計、成型の流れなんですけれど、我々は設計者でもありますから、デザインする段階で成型で無理なデザインは最初から行いません。金型コストも考慮できます。
デザインは半分設計なので、一気通貫、同時進行なんですね。ですから早いしコストも抑えられます。
−−そこは強みですね。クライアントさんによってはデザインはクライアントさんが仕上げ、それの設計、製造といった仕事もあるのですか?
戸嶋:はい、お預かりした手描きのスケッチを元に設計する仕事もよくあります。これはプロダクトの例ではないのですが、グランフロント大阪の3フロアに渡る巨大なオブジェのデザインスケッチを受け取り、それを3Dデータ化して製造に渡す仕事を行ったこともあります。平面の手描きスケッチのイメージを崩さずに、3次元化する仕事でしたね(笑)。それは未経験でしたが、大成功で、いまでもそのオブジェは設置されています。
−−そういえば「丸型キャリーケースsnail」は、エンジニアリング的な視点を持つ印象的なデザインだと思いました。。
戸嶋:これはお客様から持ち込まれた案件で、特許も取られています。最初はドラム缶のようなプロトタイプだったのですが、弊社が構造、機構を詰め、デザインして商品化レベルの試作も行いました。外側のタイヤで回るのですが、中身は回らないようになっています。ヨーロッパの石畳などを通常のキャリーで歩くとガタガタとうるさいので、こういった大きなタイヤで静かに運べるアイデアが生まれました。出資者も現れ、商品化の手前まで話は進んでいます。
●オリジナル製品の開発と今後の展開
−−最近、デザインとエンジニアを分社化されましたが、その狙いは?
戸嶋:お客様から見ると分かりにくい面があったからです。どういう会社なのか迷われるんですね。ですから入り口としてはデザインとエンジニアを分けたほうが明確だろうと。ただ我々の強みは押し出したいので「ハニカムデザイングループ」を頭に付けた上で、株式会社ハニカムエンジニアリングと株式会社ハニカムスタジオに分けています。
−−直近の社員数と利用CADを教えてください。
戸嶋:設立当初は私入れて4名のスタートでしたが、現在は11名です。デザイナーとエンジニアはちょうど半々です。基本新卒を採っています。ツールはSOLIDWORKSを9本使っています。Adobe CCも入れています。デザインもSOLIDWORKSで行い、曲面などはRhinocerocを併用しています。レンダリングはSOLIDWORKSのアドインを利用しています。
−−先日発表されたオリジナルブランド「然然(SASA)」ですが、今後の展開についていかがでしょう。
戸嶋:オリジナルブランドは、2015年の夏の段階で、2016年のDESIGN TOKYOの出展を決めて、開発をスタートしました。1年弱の期間で企画して2商品を作りました。最初はいろいろなコンセプトを検討したのですが、たどり着いたのは「五感で何かいいなと感じる自然物」です。そして今回は「石ころ」と「流木」にクローズアップしました。実際に兵庫県の山奥の黒川渓谷に行って、実際に触っていいなと思う流木や石ころを採取しました。石ころをモチーフにしたコインケース「tanagokoro掌」は、採取した石をそのまま3Dスキャンでデータ化して、その後中身を設計しました。こういった自然の曲面はデザインでは出せないですね。そして流木をモチーフにしたフレグランスオブジェ「ryuka流香」は、少しポップでライトな形状の方が良いのではということで、流木をそのままトレースしたのではなく、香料を入れた石鹸材料を手で練ってカタチにしています。ですので1つひとつ表情が違います。
−−DESIGN TOKYOの反応はいかがでしたか?
戸嶋:けっこう尖った製品ですので、反応は極端でしたね(笑)。それは我々の予想通りの反応でもあり、気に入っていただけた方からは商談のお問い合わせもいただいています。
−−最後に、今後の展開はいかがでしょうか?
戸嶋:オリジナル商品も発表したばかりですが、自分たちで商品を作る下地、システムはでき上がりました。企画があれば製品までいけます。自社製品開発、オリジナルブランドにおいても、そういったシステムを有効に生かしたい。オリジナルに軸足を向けていく一方で、これまでの受注生産の体制も大切にしたい。お客様と向き合うことで、いろいろなノウハウが蓄積します。そういったインプットも含め、自分たち独自のアウトプットを行いたいです。受注、オリジナルの両輪でやっていきたい。それにしたがって東京での活動も広げていきたいですね。
−−御社はデザインエンジニアが特徴ですが、デザインそのものの質に関してはいかがですか?
戸嶋:設計とデザインを分けたのも、デザインレベルを向上させることにつながると思います。自分の企画開発力を上げていきたいです。ウチのスタッフにも言っていますが、ハニカムはまだ夜明け前の会社です。
−−今後の活躍に期待します。ありがとうございました。
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