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新世代デザイナーのグランドデザイン


福嶋賢二氏は独立して約3年、31歳ながら、すでにさまざまな企業の仕事で実績を残している。
大阪を拠点に企業の強みを活かし本質を形にしていくデザインは、
フットワークを活かした新世代らしいアプローチだ。
ディテールにこだわる反面、マクロ的な視点も持ち合わせる福嶋氏に
これまでの、そしてこれからの話を聞いた。

福嶋賢二
[プロフィール]
11982年、滋賀県近江八幡市生まれ。2005年、大阪芸術大学デザイン学科卒業後、 スウェーデン、HDK大学にてデザインを学ぶ。2008年、株式会社IDKデザイン研究所に勤務。喜多俊之氏に師事。2011年、KENJI FUKUSHIMA DESIGNを設立。生活用品、家具など、プロダクトデザインを中心にパッケージデザイン、グラフィックデザイン、インテリアデザイン、展示会の会場構成など総合的なアプローチからデザイン、ディレクションを行う。

KENJI FUKUSHIMA DESIGN
http://www.kenjifukushima.com


●デザイナーを目指したきっかけ

−−まず福嶋さんの少年時代をお話しください。デザイナーの方はみなさん多いのですけれど、やはり絵が好きなタイプでしたか?

福嶋 私が小さい頃は、父親が手作りのオモチャを与えてくれました。父親は普通の会社員なんですけれど、退職したら自分で家を建てたいとか、そういう指向の人で、クルマのオモチャが欲しいというと作ってくれて、それを自分なりにカスタマイズしていました(笑)。

私自身は小さい頃から絵を描くのが本当に好きで、滋賀県の絵のコンテストなどで賞をよくいただいていました。学校では美術の時間がとても好きでしたので、好きな絵を仕事にできないかと考えました。

家電にも興味があったので、将来のことで美術の先生に相談したところ、家電のデザインをしたいならプロダクトデザインの道があるよと教えていただきました。そこでバスケ部の友達の父親が開いている絵の塾にしばらく通いました。そして大阪芸術大学を受験し、プロダクトデザインを目指し始めました。

−−学生の頃は、デザイン家電と呼ばれる製品が流行っていた世代ですか?

福嶋 今31歳なので、そうですね。アマダナ、プラスマイナスゼロ、無印良品など、量販店の均一化された家電とは違うアプローチの製品が出てきた時代でした。デザインの幅を広げるという点で、良い方向に向かっているなと感じました。

−−大阪芸大の後、スウェーデンHDK大学留学、そして喜多俊之さんを師事されました。

福嶋 大学に入るまでは、家電のモノ作りを行いたいと思っていましたが、2003年、大学3年の時に、学校でミラノサローネに行く機会がありまして、その時は和紙の照明を持っていきました。ミラノサローネで世界の家具の展示を見て、「こんな世界があるのか!」と、ものすごい衝撃を受けたんです。そこから自分の関心がグっと家具に向かい、3年生からは授業以外の自分の時間はずっと家具のデザインをしていました。

−−喜多さんとは大阪芸大で先生、生徒の関係だったのですか?

福嶋 喜多さんは大阪芸大では別の学年を担当されていて、私たちの学年では直接の授業はありませんでした。喜多さんはミラノサローネで引率者として同行されたので、それをきっかけにお話しさせていただくようになりました。その後、大学を卒業してから喜多さんのところにインターンでお世話になりました。

スウェーデンHDK大学は卒業前に、就職するか、大学院に行くかで迷っていた時期がありまして、友人に相談したら、スウェーデンHDK大学を勧められて、北欧の家具を学ぶ良い機会でしたので申請したら通って、半年強、スウェーデンで勉強してきました。

ちなみに大阪芸大の卒業制作は有機ELの照明と椅子を作りました。もう完全に家電から家具に関心が移っていました。やはり3年生の時のミラノサローネの衝撃が大きくて、そのままシフトチェンジした感じですね。

−−ちなみに影響を受けたデザイナーは誰ですか?

福嶋 好きなデザイナーはいっぱいいますけれど、デザイナーのステファン・ディーツ(Stefan Diez )、手でモノ作りされる方です。あとはブルレック兄弟(Ronan & Erwan Bouroullec)、スタンダードなデザインですけれど、配色のバランス、素材の組み合わせがきれいで好きです。

−−卒業されてからは喜多さんのところで実践を学ばれた。

福嶋 そうですね、インターン時代の後、改めて2008年から2011年までお世話になりました。在籍中は主に照明、椅子を担当させていただきました。地場産業の和紙の照明のデザインなどですね。

デザインは喜多さんがすべてスケッチを描いて、それをスタッフが形に起こしていきます。私もスケッチから図面や3Dデータにして、そこから切削機やスタイロフォームを使ってモデルを作っていました。

スタッフ側からの提案も、そこにより良くするための意味があれば、取り入れていただけるので、デザイナーとしてもステップアップになります。例えばスケッチには寸法が書いていないモノもありますので、自分なりにリサーチ、使われる環境を想定して、そこからいろいろなバリエーションをご相談したりもしました。

社内でモデルの承認が得られたら、それをメーカーさんが試作モデルにしていきます。モデル制作に使用していたスタイロフォームをカットする大型のヒートカッターは、独立した今も導入して利用しています。

−−デザインで喜多さんの影響はありますか?

福嶋 喜多さんがよくおっしゃっていた「主婦目線」を持つということ、つまり消費者目線の立場にたってデザインするという点は独立後の現在も意識しています。

●大阪で独立

−−独立されて3年とのことですが、独立当初は喜多さんからの仕事の流れなどもあったのですか?

福嶋 いえ、まったくないですね。喜多さんの仕事は喜多さんのオフィスで完結していますから、独立していくスタッフは私も含めてみなさんゼロスタートです(笑)。

独立した直後「墨田ものづくりプロジェクト」と、ニューウェーブ「しずおか」創造事業「つなぐデザイン」のプロデューサーである日原佐知夫さんからお声掛けいただき、消しゴム「プレミアムまとまるくん」と、円形の「En」、家型の「Home」のオルゴールのデザインをしました。それ以外にも最初の1、2年はデザイン系の展示会などに積極的にブースを出して、作品のプレゼンテーションを行いました。

これまでの企業さんとのお付き合いは次の製品へ継続していく場合がほとんどです。加えて新しいつながりが増えてくるので、今はつながりが広がっていく感じです。

−−当時は、何をデザインしたいと思っていたのですか?

福嶋 現在もですが、デザインしたいなと思っていたのは家電はもちろん、まだデザイナーがあまり入っていないジャンルのモノを開拓したいです。デザインする余地がある製品はまだいっぱいあると思います。デザイナーがデザインをしたがる製品は、いずれ次の世代のデザイナーが出てくると、同じパイの取り合いになりますからね(笑)。

神社、お寺のトータルディレクションなどもやってみたいです。例えば土産屋で売っている、お札、お守りなどは選択肢があまりないですから、もっと幅広いデザインがあってもいいんじゃないかと思っています。宗教的な、昔ながらの縛りもあるでしょうから、簡単にアプローチはできないでしょうけれど。ちょうど今京都の数珠屋さんの仕事で数珠をデザインしていますので、それをベースに徐々に広げていければよいかなと思います。

−−独立の際、大阪を拠点にされた理由はなんですか。

福嶋 そうですね、東京ですと、北方面は行きやすいですけれど、南の方向は少し距離があります。大阪は日本のほぼ真ん中あたりにあるので、どこへ行くにも動きやすいです。仕事の量でいえば東京は魅力的ですが、逆に大阪だからこそ、各地に身軽に動けて、やってこれたのかなという気もしています。フットワークが自分の特徴だと思っています(笑)。

−−確かに、今の若い世代は東京にこだわらず、地方で頑張っている人が増えてきている印象があります。

福嶋 どこにいても東京との距離感が近くなっているのかもしれません。SNSが普及して気持ちの面では距離感なくなりましたね。でもまだ東京に集中していますけれどね(笑)。大阪もグラフィックやWebデザイナーは多いですけれど、プロダクト系は数えるほどです。

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話を聞いた福嶋賢二氏

photo 2005年の作品「SAKURA」(KOKUYO / J-Style)(クリックで拡大)


2008年の作品酒瓶「Nishinomaru」(クリックで拡大)


2008年の100% design tokyo出展作品「SAZANAMI」(クリックで拡大)

2011年、New Wave "Shizuoka" Creative Project / TUNAGU DESIGNの作品「En」(クリックで拡大)


2011年、New Wave "Shizuoka" Creative Project / TUNAGU DESIGNの作品「home」(クリックで拡大)


2012年のInterior Lifestyle Tokyo出展作品「HOOP」(クリックで拡大)


上と同じく2012年のInterior Lifestyle Tokyoに出展した「TILE」クリックで拡大)

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