product design WEB Design Competition 2009  
 
 写真:審査会の様子 pdwebデザインコンペ2009大賞発表! pdwebデザインコンペ2009 明日のカタチ、生きたカタチを求めて
 
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  ■総評

●審査委員長 秋田道夫
まず「pdwebデザインコンペ」も3回目を迎えて、エントリーされた作品全体のレベルが上がってきていることを審査員一同うれしく思っております。

プロダクトデザインは、着想力(アイデア)と表現力と美的なプロポーションを生み出す力が、バランス良く備わっていなくてはいけません。その3つが高い次元で表現されていて、さらに人をひきつける魅力が加わったものが、大賞にふさわしモノだろうと思いますが、その要素を満たす作品を見いだすことが残念ながらできませんでした。

ソフトの発達でより多くのデザイナーが表現力を手に入れやすくなったのですが、逆に言えばバランスを欠いても完成度が手に入るあやうさも感じました。

それを改善するには、デザインを「デザイナー」の自分と、それを使う「ユーザー」の自分とが真摯な会話を交わすことが必要です。その会話に時間をかけることによって作品の説得力がずっと高くなると思います。

準大賞に選ばれた南和宏さんの「HEAT FLOWER」と堀本侑佑さんの「Taco Shower」は、すぐれた着想力と表現力とプロポーションがそなわっていて、さらにデザイナーとしての資質の高さを感じましたが、同時に「思いついた事」をそのまま一気に肯定的に完成させた性急さも感じ取るのです。

そのものが場にあって成立するのか、強度も実用に耐えられるのか、そのことをユーザーの立場になって「感じて」もらえれば、もっとすぐれた作品になるかと思います。

「素直なカタチの中にすべてを表現する」

これは非常に高いハードルですが、2011年もまたそのハードルに向かって越えるべく研鑽をつづけて審査員に問うてください。待っています。

■審査委員講評

●磯野梨影
今年はスケッチやプレゼンテーションボードが美しい作品が多かったように思います。と同時に、見た目だけが美しく内容がよく練られていない作品が多かったとも言え、それがとても残念でした。スキルは、本質が確かな時に大きな効果を得るもので、内容が充実していないものをいくら美しく描いてもそれは虚飾でしかありません。表現力がある方が多いだけに残念です。来年は内容の充実を期待しています。

No24「HEAT FLOWER」:たたずまいが美しいことを評価。しかし、ヒーターとして求められている基本的な安全性など深く配慮が必要。モノの本質をよく見ていただきたい。

No39「Taco Shower」:スタイリングに楽しい雰囲気があり、使用者に優しい印象である。吸盤の吸着力とシャワーヘッドの重量の関係などに現実性を持たせるともっといい提案になったと思う。

No42「しずく」、No43「Rin」(U22賞):両作品とも表現力があり、美しく提案をまとめていることを評価。使用者や使用シーンへの視点を深化させることを今後期待。

●倉方雅行
今回の応募作品は、今までと違いアイデアを重視したものが多かったように思う。もちろん、デザインの要素としてはとても重要ではあるが、それに比べて造形にあまり魅力を感じなかった。プロダクトとして俯瞰で観ると、やはり「所作」「作法」「佇まい」が揃ってはじめてバランスが整うのではないだろうか。

また、3Dのレンダリングテクニックがすばらしいものも多々あるものの、それが具体的に立体になったときの、物理的裏付けが盛り込まれていないところが少し残念でならない。手描きのスケッチ、3Dアプリ、模型などスキルは表現手段としてふさわしいものを選べばよいと思うが、少なくともそこに現されたものは、見る側に魅力を感じさせなければ、作者の気持ちが十分に伝わらないのではないだろうか。

その点で、選ばせていただいた作品は満点とは言えないまでも、その先にそうした気持ちが見えそうなものであったと思う。そして、総合的バランスのとれた仕上げを心がければ、今回なかった大賞も必ず選ばれるはずだ。

●芝幹雄
今回のコンペ、作品全体を見渡して一種の危機感を感じました。一見どの作品もきれいにまとまっているし、プレゼンテーション技法という点でも年々向上していることが実感できるのですが、何か物足りない。「なるほど」と納得するものがない。なぜそう感じてしまうのか、それは前述のプレゼンテーション技術の向上に原因があるのではないかと考えています。

3D CADが普及し、誰でも簡単にきれいなCGが作れてしまう。見た目がきれいにまとまれば作る側としてもそこそこの満足感が得られてしまうことでしょう。一昔前に手描きからCGへとデザインがデジタル化されていく中で、我々が陥った落とし穴そのものを見ているようでした。

本当のデザインはその先にある泥沼のような矛盾との戦いではないかと思います。どの作品からも作者の「もがき」のようなものが感じられませんでした。デジタルツールの使いこなしが足りていない故に自分が本当に表現したいものへ到達していないとも言えます。

●中林鉄太郎
「明日のカタチ、生きたカタチを求めて」…の2010年度の大賞は、残念なことに昨年と同様に「該当作品なし」となってしまった。準大賞の「HEAT FLOWER」と、私も推した同じく準大賞の「Taco Shower」は、他の作品と比べて「デザイン提案」としての未達成部分はあるにしても、カタチを求めるスタンスと、それらを肉付けしている仮説設定に、ポジティブで快活な印象があったことが結果につながっている。

デザインの価値が、個々の機能への言及と、それらを受けたスタイリングに終止しているだけでは立ち行かない時代。全体の価値体系の中でのポジショニングに加えてライフスタイルとのマッチングが仮説提案のパワーを高めていきます。「生きたカタチ」は「新しい意味をつくる」こと。そういう視点がデザイン提案の鮮度と強度です。

●森屋義男(pdweb編集部)
受賞者の皆様、おめでとうございます。今年のpdwebデザインコンペは昨年を上回る応募作品が届き、しかも若い世代が多く、次世代の息吹を感じることができました。ただ2010年も大賞を選ぶことができず、その点は物足りなさを感じました。審査委員長、審査委員の講評を励みに、今後も頑張っていただければと思います。

最後になりますが、すべての応募者の皆様、審査委員の皆様、そして協賛いただいた各クライアントの皆様に厚くお礼申し上げます。2011年も本コンペをよろしくお願いいたします!

■審査方法と審査経緯

「明日のカタチ、生きたカタチ」をテーマとした「pdwebデザインコンペ」。2010年も昨年までと同様の審査基準に基づいて審査を行った。

「カタチ」10点、「アイデア」10点、「実現性」10点、合計30点を最高得点とし、審査委員長および審査委員に全作品を採点していただいた。審査委員長および審査委員の5名によるそれぞれの採点上位3作品を審査エントリー作品とし、11月24日に行われた審査会によって、「入選」全10作品と、その中から大賞およびU22賞が選出された。

また優秀賞(スポンサー賞)は原則的に入選の10作品から各スポンサーに選んでいただいたが、メーカー独自の視点も尊重し、入選に適切な作品が含まれなかった場合、全応募作品をその対象とした。

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