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●記憶をつなぐ 私はブランディングデザイナーの土屋勇太氏から本コラムのバトンを受け取ったので、彼と行った共同プロジェクトを基に仕事の取組みを紹介する。 山形・酒田市にある「日日眼鏡」という眼鏡店を土屋氏と共同制作した。土屋氏が視覚面からの空間提案をサポートしてくれるので、我々はより積極的にソフトから建築、空間を構築することができた。 常に考えていることは、我々はあくまでもサポート役だということ。我々のエゴで建築を設計、デザインすることは許されないし、きちんと街や周辺環境にとって最良の形でなければならない。なので我々がもっとも大切に考えなければならないのは施主の言葉や想いである。建築や空間はさまざまな要素が混ざり合う、とても複合的なものであるからこそ、施主の言葉や想いを紡いでそれをいかに分かりやすい形で伝えられるかに日々取り組んでいる。 建築自体は言葉を発して説明することはあり得ない。いかに複雑で難解なものであろうが、施主はもちろん、周辺住民やそこに訪れる人たちがその空間を見て、感じることがすべてになるので、空間の構成や選択する素材、建物の性能など、構築するものすべてが線でつながるように努めなければならない。「むずかしいことをやさしく」を信念に我々は設計に取り組んでいる。 日日眼鏡ではお客様と落ち着いて深く話せる「対話」と、1つひとつの眼鏡をより印象的に見せられる「ギャラリー」と2つの要素が求められた。それぞれに必要とされる形、素材や色合いも異なりさまざまだが、それが1つの空間の中で心地よく混ざり合いながら、視覚的にもきちんと認識できるような設計を行っている。
●「これまで」と「これから」が愛しくなる 最初の「記憶をつなぐ」ことにもつながってくるのだが、私は建築の設計、デザインを通して、建物や空間の「これまで」経験した記憶を愛し、さらに私たちがその建築に関わることで「これから」がより愛しくなるような暮らし方、使われ方に変化していくことを最大の目的としている。 私たちは土地や建築の歴史、記憶と真摯に向き合っていくことで、新たなデザインの可能性や地域の魅力づくりにつながっていくと考えている。
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