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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第123回 川上 謙/建築家

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●記憶をつなぐ

「リレーコラム」と聞いたとき、我々が普段行っている仕事と似ているとふと思った。

私は仙台で「LIFE RECORD ARCHITECTS」という会社を運営している。建築の設計、デザインから施工を行う建築設計事務所である。「暮らしや生活の記憶をつなぐ」ことを目的としていることを伝えるため、社名を「LIFE RECORD」と名付けた。

学生の頃に読んだ多木浩二の『生きられた家』の「[生きられた家]とは、居住した人間の経験が織り込まれている時空間である。」というフレーズに魅せられ、それ以降モノ、コトを作る際にはそのことを常に意識して日々ものづくりに励んでいる。

我々の仕事は常にリレーのバトンつなぎのようなものだと思っているので、なんとなくこのリレーコラムの形式が我々のものづくりに似ていると思った次第である。

●むずかしいことをやさしく

私はブランディングデザイナーの土屋勇太氏から本コラムのバトンを受け取ったので、彼と行った共同プロジェクトを基に仕事の取組みを紹介する。

山形・酒田市にある「日日眼鏡」という眼鏡店を土屋氏と共同制作した。土屋氏が視覚面からの空間提案をサポートしてくれるので、我々はより積極的にソフトから建築、空間を構築することができた。

常に考えていることは、我々はあくまでもサポート役だということ。我々のエゴで建築を設計、デザインすることは許されないし、きちんと街や周辺環境にとって最良の形でなければならない。なので我々がもっとも大切に考えなければならないのは施主の言葉や想いである。建築や空間はさまざまな要素が混ざり合う、とても複合的なものであるからこそ、施主の言葉や想いを紡いでそれをいかに分かりやすい形で伝えられるかに日々取り組んでいる。

建築自体は言葉を発して説明することはあり得ない。いかに複雑で難解なものであろうが、施主はもちろん、周辺住民やそこに訪れる人たちがその空間を見て、感じることがすべてになるので、空間の構成や選択する素材、建物の性能など、構築するものすべてが線でつながるように努めなければならない。「むずかしいことをやさしく」を信念に我々は設計に取り組んでいる。

日日眼鏡ではお客様と落ち着いて深く話せる「対話」と、1つひとつの眼鏡をより印象的に見せられる「ギャラリー」と2つの要素が求められた。それぞれに必要とされる形、素材や色合いも異なりさまざまだが、それが1つの空間の中で心地よく混ざり合いながら、視覚的にもきちんと認識できるような設計を行っている。



▲土屋氏と共同制作した酒田市にある眼鏡屋「日日眼鏡」対話エリア。(クリックで拡大)



▲同じく「日日眼鏡」のギャラリーエリア。(クリックで拡大)



▲同じく「日日眼鏡」の外観。(クリックで拡大)





●「これまで」と「これから」が愛しくなる

最初の「記憶をつなぐ」ことにもつながってくるのだが、私は建築の設計、デザインを通して、建物や空間の「これまで」経験した記憶を愛し、さらに私たちがその建築に関わることで「これから」がより愛しくなるような暮らし方、使われ方に変化していくことを最大の目的としている。

私たちは土地や建築の歴史、記憶と真摯に向き合っていくことで、新たなデザインの可能性や地域の魅力づくりにつながっていくと考えている。



川上 謙(かわかみけん):株式会社ライフレコードアーキテクツ代表取締役。東北芸術工科大学大学院修了。大学在学中から数々のリノベーションやアートプロジェクトに携わる。卒業後は地場ビルダーに勤務したのち2015年独立。独立後は宮城を拠点に山形などさまざまな地域で住宅や店舗、舞台設計などの空間づくりを行う。その他にもワークショップの開催やイベントの企画、せんだいリノベーションまちづくり実行委員として活動


2022年7月25日更新。次回は星山充子さんの予定です。


※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag
 


 


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