リレーコラム:若手デザイナーの眼差し
第122回 土屋勇太/ブランディングデザイナー
このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。
●視覚からの空間提案
私はこれまで建築のブランディングやサイン計画、リノベーションプロジェクトなど、ローカルなものを中心に携わってきました。
グラフィックデザインがベースなので、建築や空間に関わるプロジェクトのほとんどは、ロゴマークからの空間サインやツールなどへのビジュアル展開への落とし込みの役割が多いのですが、さまざまな建築家とプロジェクトを行っていくうちに、「もっと、視覚面からの空間への提案ができないか?」「視覚面から空間へ落とし込むにはどうしていけば良いか?」ということを考えるようになり、最近では、プロジェクトごとにさまざまな設計者と組み、視覚から提案する空間づくりを行っています。
視覚からできる空間提案の中で、まず決めていることは、「白と黒を使わない」ところからはじめることです。どんな人が立って、どんな空気感を出して、どんな人たちが集まってくるのかを視覚的な視点から考え、空間の色彩イメージから入り、設計者とともに空間に落とし込んでいきます。
設計者と組み「視覚からの空間提案」が掛け合わせることによって、より個性ある空間体験づくりができると感じています。
▲ネーミング、ロゴ、サインをデザインした「gura yamagata」。(クリックで拡大)
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▲ネーミング、ロゴ、サインをデザインした「kogenyu」。(クリックで拡大)
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▲空間ディレクションからデザインした「プルピエ」。(クリックで拡大)
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●図案から発生する空間体験
これまでの中で、視覚面から空間をづくりをした事例の中で、一番こだわったお店が、東京・中目黒の熱燗ショールーム「高崎のおかん」の店舗デザインです。まずファサードと、中に入った時のイメージを素材の平面構成で組み合わせ、視覚的な要素から空間を構成しています。
▲平面構成ファサードイメージ。(クリックで拡大)
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▲平面構成内装イメージ。(クリックで拡大)
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ファサードは、ラワン材で覆われて斜めに入っていく門に、印象的な大きな暖簾を取り付け、扉を開けることで、茶の湯の世界のような新しい世界への入口を演出し、中は料理とお酒、そして店主が舞台になるよう印象的な空間構成にしています。
暖簾にはロゴや家紋ではなく、シンプルな構成でつくった図案を用い印象的に仕上げています。この図案は、一見何の図案か分からないのですが、内装の平面図をもとに制作した図になっており、入口の暖簾と内装空間がリンクしていく謎解きのような遊び要素も入れ、視覚からも印象的になるような空間体験を演出しています。
一般的なロゴマークやサインの考えではなく、視覚的に楽しませる図案で、名刺やマッチ箱などのツールにも展開し、大手にならった見せ方やブランディングではなく、個性的な小さなお店ならでは方向性で、図案や視覚的な要素から空間体験へつなげられるような空間づくりを目指しました。
▲ファサード写真。(クリックで拡大)
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▲暖簾ファサード写真。(クリックで拡大)
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▲内装写真。(クリックで拡大)
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▲ファサード写真。(クリックで拡大)
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▲暖簾ファサード写真。(クリックで拡大)
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▲図案の展開写真。(クリックで拡大)
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●実験できる場所と仲間
他にも「食」や「暮らし」に通じたことをメインにブランディングを行いながら、住んでいる三軒茶屋では「三茶ワークカンパニー」という会社を仲間と立ち上げました。さまざまな分野の方々と、コワーキングスペースの運営や、イベント企画、空間づくりも行い、自分たちが使いながら、実験し、街を愉しみ、変化していける場所づくりを行っています。
これからもさらに、視覚的な部分から、印象的な空間や愉しめる暮らしづくりを、自分たちの住む街から広げていきたいと思っています。
▲三茶WORKの茶や。(クリックで拡大)
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▲三茶WORKの仕事場。(クリックで拡大)
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▲三茶WORKのはなれ。(クリックで拡大)
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土屋勇太(つちやゆうた):ブランディングデザイナー。HOUSAKUinc. 代表 / 三茶ワークカンパニー共同代表。山形県上山市生まれ。東北芸術工科大学卒業後、デザイン会社を数社経て、独立。山形と東京を中心に、さまざまな地域で、ビジュアルコミュニケーションを中心に「食」や「暮らし」に関する空間づくりから、ブランディングデザインを行い、三軒茶屋では、コワーキングスペースの運営から、イベントなどの企画やクリエイティブを進行中。
2022年6月15日更新。次回は川上 謙さんの予定です。
※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag
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