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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第113回 植松千明/建築家

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●一度きりの人生だからこそ、
見てみたい景色を見に行く選択として独立

2021年3月に東京で一級建築士事務所として独立をしました。独立のきっかけの1つは、障がい者団体の方とワークショップを行ったとき、車いすの方がカウンターの高さが高すぎるとおっしゃったことでした。

私も同じように公共施設の女子トイレのフックの位置など、高いけれどなんとか使えていた経験があることを思い出し、意外と女性が目には見えにくいマイノリティとなっているのではと強く感じました。また、これは公共の場でもしっかり主張していいことなのだと気付いたことがとても自分の中で大きかったです。もし自分の身長の人がその建物を使う9割を占めている場合、フックの高さは低かったかもしれないのです。そのように考えたときに見えていない世界や見落としているものがあるのではないかと考えるようになりました。

●私が見てみたい建築
―パーソナルな部分にフォーカスした先の世界―


私は、これからの建築をつくる上で、人のパーソナルな部分にフォーカスしていきたいと考えています。半世紀以上前と比較すると建築の法整備や技術の発達により、安全や品質、そして快適性も担保されてきました。次に開拓されていく分野としても、ダイバーシティの促進、人々がより生きやすくなる社会を目指せるような、人の内側にある課題を個々に丁寧にしていくことではないかと考えています。



▲今までは、戦後の住宅不足があったため、一般男性会社員家族向けの夢の提案をした新築マイホームなどが商品化して販売される傾向にあったが、現在では家族形態もさまざまである。シングルの方、シングルマザー、DINKS、LGBTQのカップルなど対応していきます。子ども向けの建物に関しても女性経営者の発注が増えてきているため経営をはじめとする教育・福祉に関する思想に丁寧に対応していきたい。(クリックで拡大)




▲設計時に人の内面に見えるフォーカスする部分の一例。特にトイレにパーソナルな部分が現れやすいため、建物用途に関わらず、理想のトイレを聞くようにしています。真っ赤な内装のトイレが欲しいなど、驚く回答が返ってくることが多いです。(クリックで拡大)




▲家に住む人だけでなく、建物をつかう方だけでなく、住宅・建物その周囲についても巻き込めるように設計提案を行い、建築の独自性を高めていきたいと考えています。(クリックで拡大)




クライアントの個々の幸福感が得られる状態、理想を共有し、パーソナルな部分にフォーカスし設計することで、それぞれのストーリー、未来を切り拓いていけるような新しい建築が生み出せるのではないかと考えています。その建築を見るために日々の業務に励んでいます。実際に開業して半年ですが、今までとは違う線が引けていることを強く感じています。

●現在進行中のプロジェクトの一部を紹介します



▲「東京都の多世帯住宅プロジェクト」。南面が曲線となっている住宅。その曲線は、家に人が吸い込まれるように入っていくための行動を誘発する役割でもあり、家の中を柔らかくしてくれます。居場所としてつつみこむ優しさを兼ね備えることを考えて設計を行った。(クリックで拡大)




▲「神奈川県小田原市の事務所の改修プロジェクト(2021年12月完成予定)」。事務所の一角をギャラリーや交流のスペースとなるように、人が自然に集えるような仕組みを散りばめながら設計を行った。(クリックで拡大)



▲「住宅の改修プロジェクト(2022年6月完成予定)。築100年以上の住宅の改修。必要な修繕だけで終わらせず、少しの工夫で伝統ある暮らしの良さや人と人とのつながりがより大切にできるように進めている。(クリックで拡大)



●今後について

今後は、未来を生きる子供のための施設として、保育園や障がい児支援施設などの児童福祉施設の設計に力をいれていきたいです。

経済的に自立していない子供たちは、さまざまな多くの人との関係性の中で生きています。そこにはフォーカスする材料が多く、また私たちの生活を豊かにしてくれるヒントも多いと考えています。実際に、児童福祉施設関係の法人の方にお話を伺っていても、改善を考えている方が多く、ビジョン実現にむかって伴走できたらと考えています。

目の前の業務を丁寧に行いながら、設計に集中できるような経営チームも含めた事務所の体制を整えていきたい。前職の山田守建築事務所での経験が生かせるように、大規模公共施設の受注できる事務所へと発展させていき、多くの方の個性を許容でき、後世に残せるような建物が設計できる事務所に成長していきたいと考えています。



植松千明/Uematsu Chiaki
建築家/一級建築士。1987年神奈川県小田原市生まれ。2011年信州大学にて建築家坂牛卓に師事。在学中に建築新人戦2009最優秀新人賞を受賞。フリーランスにて住宅・商業施設の設計に従事した後に山田守建築事務所に入所。山田守設計の日本武道館の増改修プロジェクトに4年半建築チーフとして携わり、2021年に植松千明建築事務所を設立。



2021年9
月9日更新。次回は山本 至さんの予定です。


※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


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