pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要

コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第110回 カミナガスギ/建築ユニット

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





●「カミナガスギ」による神津島プロジェクト

独立してみた。自分を固定せず、いろいろな人といろいろなことをやってみたい。売れることだけを考えたり、いつも何かと競争したりするのではなく、細々とでもいいから自分が建築を好きで居続けられるような活動がしたいと思うようになった。

神津島は、海がきれいで独特な山があって、夜は星がきれいで、外での遊びが楽しい。東京からは船で12時間もかかって、でも飛行機では1時間で行ける。すごく遠いしすごく近い場所だ。島の友人たちは、島の内と外のことや人との距離感を、よく意識して暮らしているように見える。それが私が神津島に1年間通って見えてきた面白ポイントだ。

そんな神津島で、仲間たちと一緒に神津島でゲストハウスの企画、設計、監理をしている。わたしたちは偶然、みんな一人っ子だし、みんな女性だし、みんなO型で、みんな藝大卒だ。神崎夏子さんと、桝永絵理子さんと、杉山由香の3人組で、1文字ずつとって「カミナガスギ」というユニット名をつけてみた。みんな髪は長くないのだが。

ゲストハウスのオーナーさんが借りている空き家が1つあって、ここで何かしたいという彼の一言からプロジェクトがはじまった。説明はひとまず省いて、もう工事も監理も終盤だが、「ここをいい空間にしましょう!」という約束があったからここまでやってこれたと思う。小さいけれど夢の詰まったゲストハウスの説明を、今回はさせていただきたい。

●ゲストハウスを「スタディケーション」の場に



▲神津島にできたばかりの「スタディケーション」の場。くつろぎながらリモート授業を。Ph:後藤晃人(クリックで拡大)




▲島の西側に集落がある。Guesthouse Campusはこの一角にある。(クリックで拡大)



▲島で採れる明日葉で染物を行った。(クリックで拡大)



・スタディケーション
本プロジェクトは「スタディ」+「バケーション」=「スタディケーション」という新しいプログラムをつくり、ロフトベッドと広場という2つの空間によってそれに応えるという挑戦的な事例だ。コロナ禍で大学へ通えない学生たちが、空気の良い神津島で、くつろぎながらリモート授業を受けられる場所をつくりたいというオーナーの要望を形にした。

・ロフトベッド
ロフトベッドと呼ばれる、机とベッドが一体となった家具を「スタディ」のモチーフとして、円がくりぬかれた形のロフトベッドを設け空間の骨格をつくった。ロフトの下には勉強机が、ロフトの上には厚いカーテンで間仕切られた寝床が人数分用意されている。

・広場
ロフトベッドに囲まれた広場で、島に訪れた学生たちが火を囲むように空間の中心に集まり語らうような「バケーション」を理想とした。広場にはごはんを食べる丸い大きな机と、プラネタリウムで星を投影する丸い大きな天井が配されており、学生たちがおおらかな気持ちでくつろいでくれることを期待している。

・Guesthouse Campus
Campus(カンプス)とはキャンパスつまり学園の語源であり、広場という意味である。西欧において広場が学びの場所であったことが由来だ。神津島の集落や本計画の既存建物の形状は地形に影響されてできており、道は迷路のように入り組み、建物や敷地も変形のものが多い。ここに円という純粋な形態の広場を挿入することで特別な場所をつくり、ここが学びの広場であることを表現している。

・1つの風景に向かう
このプロジェクトには多くの人が関わっている。ブランディングチーム、建築設計チーム、施工チーム、Webデザインチーム、経営コンサルタントチーム、地域編集者チームが協働して進めた。工事にあたっては島の職人さんたちや、友人たちが力を貸してくれた。平面図で全体をまとめ上げている「円」という図形は、この場所をつくるために協働した人たちや、近い将来に訪れる学生たちが、1つの風景に向かう・共有することを象徴している。

文責:カミナガスギ杉山由香



杉山由香/Sugiyama Yuka
東京藝術大学、伊東豊雄建築設計事務所を経てタテモノトカを設立後、神崎夏子と桝永絵理子とのユニット、カミナガスギを結成。観光庁宿泊施設アドバイザー派遣事業に採択されguesthouse campusの設計を行った。
https://t-toka.com/
https://www.instagram.com/sugitoka/




2021年6月18日更新。次回は小林良平さんの予定です。


※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved