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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第103回 大島淳一郎/デザイナー

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。




●宝塚生活

兵庫県、宝塚市で生まれ育った僕は、物心ついた頃から飛行機はもちろん、新幹線などには縁がなく、当たり前のように地元で生きて、死んでいくのかと思っていた。そんな考えをへし折ったのが大学時代の恩師、田頭章徳先生だった。

神戸芸術工科大学に入学した僕は田頭先生率いる「Design Soil」に所属していた。毎年のミラノサローネ出展を目標としたグループで、学生と教員が垣根なく、同じフィールドでの展示を目指す。学校内の工房を拠点として、放課後、夜な夜な作業とディスカッションを行う。ストイックなやつらと位置付けられるそのグループでの経験は、僕の平均値であり、指標を明らかにした。



「TRINITY」(2013年)紐を構造に用いた折り畳みスツール 。(クリックで拡大)




(クリックで拡大)



▲「a wall」(2016年)家具と壁の中間的なオブジェクト。(クリックで拡大)



●ベルリン生活

そこからヨーロッパデザインへの興味は収まらず、卒業年の4年生夏頃にドイツ、ベルリンへと1年間の留学へ行くことに。日本料理屋の掃除バイトで知り合ったアンビエントノイズギタリストの流水龍己さんは、母国を離れて活動していた。ビール片手に、現地の人しか知らないだろういろいろな場所を案内してもらった思い出は、今でも印象深い。

さまざまな国から集まった、いろいろな人がいる。そんな場所で生活する中で、「自分はどこにいてもいいし、何をしていても良い」と、いつの間にか生き方に対する抵抗感がなくなったような気がした。


●東京生活

帰国後、約4年間、安積伸のデザインスタジオに勤務。チェア、ソファ、スピーカーやウォーターサーバー、食器やタンブラーなど、綿密なプロダクトデザインの洗礼を受ける。

東京の生活にも慣れてきた頃、友人のグラフィックデザイナーが制作するZINEで数ページ担当しないかとお誘いを受けた。担当ページは自由に使ってよいとのことで制作を始めるが、最終的なアウトプットが紙面であり、3Dではなく、2D。2Dを最終目標に置いた、グラフィカルなプロダクトを製作することを決めた。

その頃、たまたま歩いていた皇居のお堀に浮かんだ蓮の葉の連なりが美しく、植物と円の連なりの関係性をテーブル上で表現できないかと考えたのが着想元であり、名前も「Lotus」に。



▲「Lotus 01」(2019年)。(クリックで拡大)



(クリックで拡大)



▲「Lotus 02」(2019年)。(クリックで拡大)



これはマグネットで位置を変えられる一輪挿し。植物は真っ直ぐ伸びているもの、片寄っているものなどバランスはさまざま。個性的である植物に合わせて花器のパイプ位置をずらす、増やす、減らすことで全体のバランスを取る。

制作では自分でコントロールできる範囲で物を作ることを決め(そうするしかなかった)、東急ハンズで鉄板を円形にカットしてもらい、ステンレスパイプをパイプカッターで手作業で切断、足付けの研磨、サーフェイサー、調色した塗料をエアブラシで塗装、ウレタンコーティング、と工程を経て、基本的に手作業で完結するプロダクトとなった。

撮影も姉から譲り受けた一眼レフを使って自室にて撮影。ここで初めてスタイリングを経験することになるが、自分ですべてコントロールできる環境はとても心地よく、これ以降カメラマンに撮影をお願いする際にも役立つ経験だった。

ZINEの完成後、花器の自主生産を開始、SNSを通して販売。自分で作って自分で売る。とてもシンプルなこと。最近では楽曲のジャケットデザインやリノベーションなどの仕事も受けており、ブランディングにも興味が出てきた。界隈にとらわれずに、フレキシブルに動いていこうと思う。


Special Favorite Music「Halation」(2020年)










大島淳一郎/JUNICHIRO OSHIMA
1992年生まれ。神戸芸術工科大学在学中にドイツ、ベルリンのWeissensee Kunsthochschule Berlinへ留学。安積伸主宰のA Studio Designを経てフリーランスとして活動。掲載 : 装苑、BRUTUS、デザインノートなど
twitter:https://twitter.com/JunichiroOshima
Instagram:https://www.instagram.com/junichiro_oshima/
Website:https://www.junichirooshima.com/





2020年11月13日更新。次回は河上真理さんの予定です。



※本コラムのバックナンバー
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