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イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第90回 石野啓太/信楽焼明山ブランドマネージャー



このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。





信楽焼窯元「明山」ブランドマネージャーの石野啓太です。バトンをつないでいただいた高橋渓さんは、ともに建築を学んだ大学時代の先輩になります。大学院卒業後、馬場正尊氏率いるOpen Aという建築設計事務所にて建築の仕事に携わったのち、現在の家業である信楽焼窯元・明山の仕事についています。

今回のコラムでは、明山での仕事とそれと並行して行う地域でのプロジェクトについて紹介したいと思います。

●創業1622年の窯元「明山」
私が働く明山窯の歴史は古く、創業は歴史資料で分かる限り、江戸時代初期の1622年まで遡ります。江戸幕府2代将軍徳川秀忠が、信楽に朝廷御用茶壺の制作を命じたことに始まります。その仕事を請け負ったのが先代にあたる茶壺師・石野伊助です。そこから約400年、信楽の地で窯元として陶器を作り続け現在に至ります。現在は花器や食器、置物、節句陶器、水槽など生活用品全般を手掛け、幅広い制作技術のある信楽でも珍しい窯元です。

●新しい信楽焼の提案を
中でも私は新しい分野との仕事を担当しており、近年ではライフスタイルブランド「ACTUS」と協働開発した無垢な土色の魅力を生かした食器シリーズや、雑誌『Kinfolk』のプライベートブランドである「OUUR」のフラワーベースやマグなどを手がけました。

また、デザイン事務所MEETINGとはBBQ用陶板プレート「TOBAN」を開発。アウトドアシーンにおける陶器の提案など、信楽焼のイメージを開拓・更新できる取り組みに魅力を感じながら、さまざまなプロジェクトに取り組むようにしています。



▲写真1:ACTUS定番食器シリーズ。(クリックで拡大)



写真2:OUUR「MUG」。(クリックで拡大)




▲写真3:BBQ用陶板プレート「TOBAN」(クリックで拡大)


●新ブランド「HIJICA」
もう1つ最近取り組んでいるのは、自身でディレクションするブランド「HIJICA」です。「HIJICA」は「土(ひじ)と火(か)」「土と日(日常)」を表す造語で、インテリアからエクステリア、空間まで、陶器・土ができること、その可能性を考える陶器に特化した空間インテリアブランドであり、プロジェクトです。

ここでは、自身の興味を軸にプロダクトを企画デザインしたり、またモノを作るだけではなく、さまざまなプロジェクトを通して陶器・土という素材が持つ可能性を模索できる実験場にもなればいいなと思っています。



▲写真4:HIJICA「flower vase」。(クリックで拡大)



▲写真5:HIJICA「stool」。(クリックで拡大)





●地域のエリアイメージを編集するユニット「ROOF」
また普段の仕事の一方で、同じ想いを共有する仲間と「ROOF」というユニットをつくり“地域のエリアイメージを編集する”をコンセプトに2016年より活動しています。

●「FUJIKI」リノベーション
きっかけは、滋賀県陶芸の森25周年の関連イベントの際に、副館長から「信楽の若手と協働しながら美術館と地域の接点をつくっていきたい」とお声掛けいただいたのが始まりでした。そこで、商店街の空き家を美術館のサテライトギャラリー「FUJIKI」として設計し、母校の滋賀県立大学の学生やOBとともにリノベーションしました。

この場所は現在、陶芸の森に訪れたアーティスト、レジデンス作家の展示や地域企画のイベント場所として使われながら、地域とのつながりを育む場所として運営しています。



▲写真6:リノベーションした「FUJIKI」。(クリックで拡大)






●プロジェクトから地域の魅力を紐解く
また陶芸の森とはその後も協働しながら、展覧会なども企画から設営・デザインまでを手がけています(企画の詳細は紙面の都合上省きますが、よろしければWebサイトをご覧ください)。

主な展示には、障がい者作家と地元の陶芸家という異なる背景をもつ作家同士がペアとなり、共同で作品を制作するプロジェクト「Shigaraki Art Communication」。 信楽を初めて世界に紹介したルイス・コートさんとそのアーカイブに焦点を当てた企画展、窯変天目の再現に生涯を捧げ釉薬研究者としての立場から窯業を支え続けた高井隆三氏の「Clay & Glaze-レジデンス作家-高井隆三展-」。 陶器以外の信楽の働く風景に着目した写真展(2019年11月~)などがあります。

そこに通底するのは、このまちの本質を陶器だけでない1300年のものづくりの歴史に裏打ちされた個性豊かな文化蓄積・土壌にあると考え、地域資産の「編集」「みたて」という行為を通して、地域固有の魅力を紐解き直すということです。そして、“陶器・たぬき”だけでない信楽の奥深さを見つけていきたいと思っています。



▲写真7:「Shigaraki Art Communication」。(クリックで拡大)



写真8:「Clay & Glaze-高井隆三展-」。(クリックで拡大)




●更新することが伝統をつなぐ
ものを創り出すまちとして、窯業だけではない地域の魅力や質が高まることは、ひいては信楽焼そのものの価値が高まると私たちは考えています。これからも普段の仕事とROOFのプロジェクトの両面を行き来しながら、信楽の文化を更新することを楽しみたいと思っています。

次にバトンをリレーするのは、私と同じく窯業と建築という領域を横断しながら、常滑をベースに広く活躍されている建築家であり水野製陶園Lab.代表でもある水野太史さんです。似通った背景から問題意識を共有できる存在でもあり、いつも刺激をいただいています。産地間を超えて、ともに陶器の面白さと可能性を拓いていければと勝手に思っています。仕事でもご一緒できる機会を楽しみにしています。




石野啓太/KEITA ISHINO

信楽焼 明山 ブランドマネージャー。滋賀県立大学大学院修士課程修了後、建築設計事務所OpenA勤務後、地元信楽をフィールドにまちづくり活動やデザイン業務に携わる。現在、家業の明山に勤務。2016年よりまちを編集するユニット「ROOF」を立ち上げ活動。
明山 https://www.meizan.info
ROOF http://www.roof-shigaraki.com


2019年10
月11日更新。次回は水野太史さんの予定です。

※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


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