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コラム
イラストリレーコラム:若手デザイナーの眼差し

第86回 澤田美野里/クリエイティブチームheso
http://heso-cha.com/

このコラムページでは、若手デザイナーの皆さんの声をどんどん紹介いたします。作品が放つメッセージだけではない、若手デザイナーの想いや目指すところなどを、ご自身の言葉で語っていただきます。




クリエイティブチームhesoの澤田美野里と申します。バトンをつないでくれた小谷さんとは、美術予備校時代からの友人で、私の中の彼女のイメージはちっちゃいけれどとてもパワフル。山椒のような存在感と誰かが表現していたのを、まさにその通りだなと思った記憶があります。テレビのセットという大きな空間をかたち造るバランス感が、とても彼女らしいなぁと思います。

さて、デザイナーコラムとしてバトンをつないでもらいましたが、私の所属するhesoは、働き方自体にも個性があり、面白さがあると思いますので、今回はそのあたりを中心にお話しできたらよいかなと思います。

●出会いのはなし
hesoは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科(空デ)の同級生が2010年に結成した女性4名のチーム。みな、空デのファッションコース出身で、なぜ空間演出なのにファッションなのか? というと「身体をとりまく一番小さな空間として衣服を捉える」ということだそうで。多角的にものごとを捉える訓練が、それぞれ枝分かれした個性の根っことなり、hesoの動きのベースになっているようにも思います。

学生時代はいつもつるんでいるような仲ではなかったのですが、卒業したその先に考えが及ぶようになる時期に、わたしたちにあるのは就職するという選択肢だけなのだろうか? と疑問を感じ、自分のものづくりの可能性を模索して悶々としている感覚が似ていたように思います。

悩みながらもそれぞれの歩みを経て3年後、企画展をやろうと思い立ったときに自然に集まったのがこのメンバー。それがhesoのスタートでした。

●お仕事のはなし
簡単に自己紹介をすると、hesoは得意分野が異なる4名で構成され、わたしはグラフィックデザインを担当。ディレクターが2名と、アパレル関係のデザインを担当しているものが1名(自社のバッグブランド「SOAK design by heso」のデザインも担当)。

それぞれの持ち味を活かし、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、イベント・パーティーのディレクション、衣装デザイン、グッズ制作など、本当にさまざまなお仕事をさせていただいております。

「結局hesoって何屋なの?」とよく聞かれます。

ですがわたしとしては、何屋さんと思っていただいてもいいかなと思います。hesoとだったら何か面白いことができるかな? と想像してもらい、今までかたちになってきたことがわたしたちの活動を面白くしてくれていると思いますし、何より自分が想像する範囲を超えたことができたときに、チームでやっている面白さを感じます。

2013年、わたしたちはhesoの活動を株式会社ヘソとして法人化しました。法人化するということは、世の中との約束ごとが増えるということで、自分たちの生活と会社を守るためには、分かりやすい見せ方をしてクライアントを増やし、仕事を得ていかなければならないのではないかと、チャレンジをしてみた時期もありました。

分かりやすくした分、想像以上の反響をいただき、たくさんのお仕事ができたのですが、「hesoとだからできる面白さ」ということとは違うベクトルでのご依頼が多く、これを続けていくことが自分たちの選んだお仕事のかたちなのだろうか。と、悩む日々でした。

そんな時期を経て今考えることは、自分たちで仕事をつくること、仕事のやりかたをつくること。何かの型にはめて考えるべきではないのだろうなと。

女性4人の会社ということもあり、結婚や出産など、さまざまな変化が起きます。そのたびに、それぞれの意見を持ち合って話し合い、方法を探ってきました。中心に立つメンバーに変化があれば、hesoのムードにも変化があります。
大喜利のように、分かりやすく完結した表現に溢れた世の中ですが、そうではない方法もあっていいのではないかなと思います。自己紹介に時間がかかったとしても、それを面白いと思ってくれる方たちと仕事ができたらとても嬉しい。想像力を持って、新しいチャレンジができることを楽しめる、タフな自分たちであり続けたいなと思います。



▲「伊勢丹 2013 彩り祭」(2013年) アートディレクション。(クリックで拡大)



「ART STAND」(2015年) レセプションパーティー。(クリックで拡大)




▲「太田旗店 × heso Oita Design Innovation」(2017年) コラボレーションアイテム。(クリックで拡大)




ミュージシャン「VIDEOTAPEMUSIC」の衣装・グッズ制作(2018年) 。(クリックで拡大)





「TAICHIRO MORINAGA Hi-CROWN」(2018年) クリスマスパッケージ。(クリックで拡大)




『現代クリムト講座』×『WienerBlut』(2019年)限定フレグランス パッケージ制作。(クリックで拡大)


●これからのこと
ちなみにわたし個人で言えば、最近は映像(コマ撮りアニメーション)を作ることに面白さを感じています。 手法的には、A3サイズ大のスキャナーの上で、ちょっとずつものを動かしたり、描いたりしながらスタートボタンを押し続けて読み込んだものを、何枚もつなげて動画にしています。自分の手中で操れる表現なのに、時間軸を考えたり、投影するスケールや場所を変えるだけで空間に変化を及ぼせる感覚が面白いし、作ってもゴミが出ないところも気に入っています。

そしてその新しい試みが、とてもワクワクするお仕事につながりました。まだ公にはできませんが、尊敬するミュージシャンの動画コンテンツのクリエイティブに協力できることに。自らのアクションが新しい取り組みにつながっていくのは理想的なかたちだなと思います。

次にバトンをつなぐのは、カメラマンでありながら衣装デザイン、ときにはグラフィックデザインまでこなしてしまうマルチプレーヤーの外林健太さんです。大学時代から一目置いている友人の1人で、ストイックな仕事人のイメージはそのときからずっと変わりません。突っ走り続けてほしいなと思う彼に、わたしも全速力でバトンをつなごうと思います。


澤田美野里/MINORI SAWADA

クリエイティブチームhesoのグラフィックデザイン担当。グラフィックデザイン、パッケージデザイン、衣装制作、パーティーのディレクションなど、領域を定めずにストーリーを持ったものづくりを行う。企画から制作、プロモーションまでトータルに提案する。「SOAK design by heso」というバッグブランドも展開。



2019年6月14日更新。次回は外林健太さんの予定です。

※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag

 


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