リレーコラム:若手デザイナーの眼差し
第81回 菅野大門/エーヨン
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このコラムページは、2018年12月までpdwebメールマガジンで掲載していた連載リレーコラム「若手デザイナーの眼差し」のWeb版となります。今後は本欄にてリレーを引き継いでいきますので、引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。
●菅野大門
僕の名前は菅野大門。昔、A4と言うユニットで、シヤハタやコクヨのコンペをとったこともある。今から14年前、学生のときである。
なぜ大門が名前かと言うと、祖父の名が「忠次右衛門」という古風な名だったのと、親父が西部警察の大門刑事が好きだったことで「大門」と命名。中高生のときは空前のポケモンブームで、自分の名前が嫌だったが…社会人に出てからは、覚えてもらいやすく、便利なときも増えた。
●メーカー
僕が何をしているかと言うと、肩書きはプロダクトデザイナーである。だが、実際の仕事内容は「メーカー」に近いかもしれない。プロダクトを考えて作って、展示会に出す。広報したり卸先に営業もいく。在庫も抱え、注文があれば発送する。基本的にクライアントはおらず、自ら企画し商品化し利益を上げていくスタイルでやっている。
文字を切り抜いて栞にした「活字ブックマーカー」や、バランス感覚を養うオブジェ「tumi-isi」などが主力だ。
▲「活字ブックマーカー」。活字が本から浮き出てきたようなイメージでデザイン。ポリプロピレン製で薄く強く実用的。奈良県内の社会福祉法人「ぷろぼの」にて、障がい者の手によって丁寧に作られている。(クリックで拡大)
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▲(クリックで拡大)
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●作るの8割は使うこと
プロダクトを作るとき、ほとんどの時間は「使う」ことにしている。
なるべく普遍的なものを作りたいと思うが故、意識せずに「身体感覚で良いと思ったもの」を作りたいと思っているからだ。フォルムや重量バランス、素材感など、無意識に使う最中で気が付いた箇所を何度でも改良していく。満足いくまでだいたい1年~2年ぐらい。試作の時間にしては長いけれど、結果、息が長いものになりやすい。発売したとしても、僕が生きている限り改良していくので、良いものを作れる可能性は高い。作るの8割は「使う」ことだと僕は思っている。
●人類史上もっとも恵まれている?
さて、今僕は、奈良県の東吉野村と言うところに住んでいる。人口1,700人ほどの田舎で、静かで気持ちの良い場所に住んでいる。田舎に住むと自然の機微を体感でき、毎日の気づきが多い。かつネットや交通インフラが地方の隅々まで張り巡らされいる日本の田舎はすごいとも思う。アマゾンも翌日配送、田舎と都市の良いところを選択できる現代は、人類史上もっとも恵まれているんじゃないだろうか。
1~2年もかけてプロダクトを作ることができるのは、ライフコストが安い田舎に住むからである。単純に家賃が安いというだけで家賃分稼がなくていい。その分、試作したりインプットの時間に使ったり。あとは建物の中も外も広い環境が良い。見ているもの、食べているもの、触れるもの、環境はじわじわと人をつくり、その人から生まれるものも「そういう」ものになる。良いものを作りたければ良いもの環境に身を置かなければならないのだと、東吉野村に住んで感じた。それは人によって都会がいいかもしれないし、でも僕にとっては田舎の環境があっているのだ。
田舎に住んでるというと自給自足のような暮らしをしていると思われるが、 Netflixも見るし、ヤフオク、メルカリだってするし、電子マネー派だし、ポケストップが少なくてやめたけど、ポケモンGOもやっていた。住む場所は田舎、興味は都会といったところだろうか。
▲「tumi-isi」。2008年の発表後、一時生産が止まっていたが、吉野の杉と桧を使ったバージョンでリ・スタート。日本の木を使った日本の積み木を再考している。。(クリックで拡大)
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▲(クリックで拡大)
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●自分で自分の仕事をつくる
今後、3つ4つ試作しているものを世の中に出したいと思っている。いや、出ないかもしれない。僕にとって一番重要なことは、その日の1日を楽しく生きることで、その次の次の次ぐらいがプロダクトデザイナーという職業なのである。自分がいつ満足して商品かできるかはわからないけれど、既存の商業スタイルに合わせず、自分で自分の仕事をつくり誰にも縛られず仕事する(ある意味真っ当の?)デザイナーがいてもいいよなと思う。
2019年1月24日更新。次回は田中慎一さんの予定です。
※本コラムのバックナンバー
http://pdweb.jp/column/index.shtml#mailmag
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