pdweb
無題ドキュメント スペシャル
インタビュー
コラム
レビュー
事例
テクニック
ニュース

無題ドキュメント データ/リンク
編集後記
お問い合わせ

旧pdweb

ProCameraman.jp

ご利用について
広告掲載のご案内
プライバシーについて
会社概要
コラム
イラスト

女子デザイナーの歩き方 第109回(2017年7月4日掲載)
絵と言葉
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。2010年独立、3D CADでプラスチック製品から布製品、ソファやモダン仏壇の木製品、クラフト系などネーミングやロゴ込みでいろいろ手がけている。趣味はフリークライミングとバスケットボール、旅行。
http://moviti.com/moviti_nori


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


今年も美大でない大学で、絵で受験してない入学したての1年生に絵を教えている。大まかな授業方法は2016年5月号のコラムを見てください。

基本の立方体や円柱で透視図法やらパースペクティブを説明する。逆パースが気持ち悪いのを自分で感じる、のもなかなか難しい。そもそも紙の上に立体を感じるって言われてもピンとこないかもねえ。全員のを貼り出して、描きたての絵を冷静に見ることに慣れる、上手な人の絵がなぜ上手に見えるのかを感じてもらっている。陰影をつけると立体的に見える、マーカーやパステルの使い方を教える。

飽きる前にどんどん無茶振りを繰り出していく。目の前にある実物(マグカップ、ペットボトル、マウスなど)を時間を区切って描く課題を振る。鉛筆で下描き、ペンとマーカーで仕上げる。

繊細でも弱い絵は損、強い絵を描くように全員分貼り出して、描かせて、の繰り返し。教師は机を回って指導、実際に描いて見せたりする。

描く前に対象物を見て特徴(形状や素材、色)や形状の法則(回転体とか線対称とか)を考え、見て感じて紙に写しとる執拗さの一方で、ロジカルに冷静に描くテクニックも意識。描くことで観察力、分析力、表現する工夫や手と脳の連動を高める。

はじめはあがいているうちにあきらめている学生が多いが、やっているうちに自分の”集中力スイッチ”の入れ方が身体で分かってくるのか。若くて素直っていいな、いやこれまで描いてる枚数が少ないからもう上手になるしかないのだ。いろんなものを描かせていると、自分の得意なモチーフに当たることもあり、成功体験がまた上手くなるのスパイラルが起動する。3週までの右肩上がりの画力を見ると”わー美大ってたいしたことないのかもなあ”プライドがガラガラと崩れる。とはいえ綺麗で勢いのある線、ストローク、幅広い階調を理解表現するところまでは短期間ではなかなか到達してませんが。

それにしても絵を描きたいと思う人も、描き方を伝授したいと思う人も少なからずいるんですね。
http://www.mikinote.com/entry/dessin-kiso
https://manabo-purodakuto.blogspot.jp/2016/05/0.html

ここまで下地を作ってから4週目以降はデザインのテーマを元に自分の頭の中の立体を描く練習に入る。

デザインのアイデアスケッチとなると、人生経験が浅くて形のストックが少ないから大変そう。私たちも学生当時はスケッチ展開しつつ、デザイン誌を見てヒントにしたり、アイデアの自転車操業だったな。上位の学生たちはなんとか自分らしさ、テイストを表現しようとする子も出てくる。自分が納得するまで追求する意地とかプライドの踏ん張りも絵を描くことを通して若いうちに体験してほしい。と思いつつ、それではあまりに美大生とガチ勝負だな、とも思う。

10数年前、美大系でない大学のデザイン科が台頭してきて「あー造形能力があってテクノロジーも鼻が効けば最強やな」と思っていたが、就活前なら3年ない期間に見たり修得したりしたいものが沢山で、どっちつかずになることもあるだろうなあ。最近は美大系でもグループワークや社会的なテーマでパワポ作ったり、美術バカではやってられませんね。デザイナーが画力第一でなくてもいいんじゃないかな時代が来ると当時思っていたが、就職の時はやはり美大出身のマネージャーがいれば画力で選ぶという現実は残っているようだ。ううむ、まあ画力って単純に上手い絵が描けるんでなくて、積み上げて構築する考え方プロセスの対極で、見て分析して考えてアウトプットするアイデアの跳躍力は画に反映する、とも言える。

こういう記事を見つけた。
http://portal.nifty.com/kiji/170427199454_1.htm
アイデアスケッチの書き方を習ってわかった10のポイント。コツも的確だ。描くことで考える、考えを伝えるのに十分な画力。

**
デザインジャーナリストで21_21 DESIGN SIGHTのアソシエイトディレクターの川上典李子さんのセミナーを聞きに行った。プライベートでも会ってお喋りしたり、アートやいろんなジャンルのデザイン、テクノロジー諸々の間をふわふわと美しいものを読み解いているような人だ。
http://designhub.jp/events/3091/

サローネ、21_21、デザインビエンナーレロンドン、徳島大学病院のホスピタルギャラリーなどの写真のプロジェクションを観察者あるいは仕掛け人として解説されていたのだが、その説明そのものが素直で高解像度で理想があって静かに力強い、久しぶりに言葉の力を感じた。デザインって前向きだわ。
http://www.londondesignbiennale.com/
http://www.kisode.com/archives/3436

絵を描くように言葉も上達を目標に日頃から書き、話し、聞くことで、思考の解像度が上がって、より戦略的に操れて説得力が身につく、のが似てるかも。デザインには言葉も大事ですよ。


 


Copyright (c)2007 colors ltd. All rights reserved