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女子デザイナーの歩き方 第95回
スケッチのお稽古
moviti/片山 典子

[プロフィール]
1964年神戸生まれ。京都市立芸術大学卒業、東京でインハウスデザイナーとしてパーソナル機器のプロダクトデザインや先行開発に携わる。デザインの師匠である同業のオットと2人暮らし。2005年から“デザインって何だ!”と称してノンジャンルで自主活動展開中。最近はフリークライミングとバスケットボールの“大人部活”と旅行にはまっている。2010年から本格的ソロ活動(離婚じゃなくて独立)開始。
http://moviti.com


このコラムでは、デザインのジャンルの枠を超えた活躍をされているmovitiさんに、さまざまな観点から女子デザイナーの歩き方を語っていただきます。


思いもよらなかった九州(四国も結構揺れたんでないか)の地震、お見舞い申し上げます。現代都市災害支援のノウハウがどんどん上がっているのが転んでもただでは起きない日本人の努力好きだが、地球の活動期に入ったのかしら、ちょっと怖いです。


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4月から法政大学システムデザイン科でデザインの基礎をチームで教えている。最近はやりのエンジニア寄りのデザイナー育成の学科。

いわゆる受験デッサンを体験してない20歳前の45名の若人に描くことを教えることになった。高校時代に美術を専攻してない子も半数くらいいる。あらまー。

思い返せば、美術系予備校で受験デッサンやってた頃が一番描いていた時期だった。透視図法、時間配分、モチーフの特徴を見つけて描き表しやすい構図を探して紙に写す。光の向き、影で質感や重さ、描いていない裏側の形、空気の形まで感じさせる、鉛筆だけで。というのを先輩の絵を観たり講評を聞いて自力で身につけていって自信につなぐ。

さらに大学に入るとマーカーやコンテパステルの使い方の授業は結局2回だけ、だったんじゃなかろうか。授業で先生として学校に来ているデザイナーが絵を描いているところを見たことない。”好きに描いていい”自由という放任主義。プロダクトデザイナーの友人に訊いても”レンダの描き方、そんなにきっちり教えて貰った覚えがない”という。雑誌「CAR STYLING」の巻末にレンダが掲載されてるのを見たり、先輩や級友の描き方を見たり。

あとは自分で工夫する。線を描きやすいように紙を回したり肩を入れて全身を使う、copicはすぐかすれる&細いので補充インクを幅広チップに沁ませて描く、黒で引き締めるならPILOTスーパープチ太字とドローイングペン、曲面はヌーベルのコンテパステルをカッターで削って擦り付けてぼかすのが練りゴムで消せるし表現しやすい。などなど。

で、いきなりアイデアスケッチ展開、頭の中の形を描く作業にかかる。今振り返ったらなかなかの無茶振りだ、よくやってたなあ自分。

今はアイデア出しはペン1本で済ませるし、原寸でペン描きしてスキャンしてイラレでグラデーション付ける、というのが現実的。だからマーカーで饒舌に描くこと自体に執着しても方向違いかも。

ちまちまネチネチ描かずにさらっと短時間で描いて自然に立体に見えるのがかっこいい。レンダの美意識というか。

あくまでも強力なコミュニケーション手段としてのスキル。最近「漫勉」というNHKのテレビ番組で画力のある漫画家がひたすら描画する様子を放送したりライブペインティングのYouTubeがたくさん見られたり。それも描かない人が結構見ているようだ。

そうか絵を描くって見られたくない孤独な作業ではなくて、描いてること自体が人を惹きつけるパフォーマンスなのね。
http://www.nhk.or.jp/manben/
https://www.youtube.com/watch?v=yFz1_lG6ee8
https://www.youtube.com/watch?v=EZ_Yy8XLeJ0

私が学生の頃から時を経て、現在の大学の設備はなかなか整っている。パワポでスクリーンに投影(照明も切り替えなくてもいい十分な照度)説明もできるし、ピンマイクもある。助手さんも複数バックアップしてくれる。

そして書画カメラがあった!
http://www.epson.jp/products/bizprojector/ohc/

ようし描いたる、見せたるやん!

ということで画材を学生に配布し、書画カメラで直線や立方体や円筒を順を追ってライブで描くところからスクリーンで映し、すぐ学生各自にやらせる。描いてる机を講師、助手合わせて6名で巡回、個人アドバイス。授業で描くだけでなく、宿題で復習、提出させる。初めは小さく、弱々しく描いてる子もメキメキ慣れてくる、さすが若いし、ロジックを教えれば吸収が早い。絵が好きで上手な学生も数人浮上してくるのでこちらも楽しくなってくる。

さすがに線1本でエッジと丸みの輪郭を描き分けるレベルに到達するには、描きまくって自力で到達してもらわないと分からないとは思うが。

立体表現の基礎ができたら”実物を見ながら描く”をやらせてみた。瓶や文具、台所用品など身の回りのものを持ち込んで、基本形態の応用で形を見抜いて15分で各自描かせる。補助線にこだわりすぎると時間がなくなる。見て効率よく物のアウトラインを描いたり、実物大を体感させる。プロポーション取るのが上手い子、透明素材の描き方を自分で見て考えて描いたり、ふっくらした曲面を表現するのが上手い子もいる。

なんだー描いて見せてやらせれば、みんな描けるんだねえ、集中力もそこそこ持続してるじゃないですか。ハイテク&ライブな1対1指導の融合はうまくいきそうだ。

次回からはいよいよ”自分の頭の中で思い浮かんだアイデアの形”を描いて表現する、の実践、さてどうなることやら。描いて描いて探して伝えて実現するのがデザイナー、そのためにいろんなヒントになるソースを見て自分の引き出しに増やしていく、というのを感じ取ってほしいなあ。

 


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