●MicroWorksを核に活動の幅を広げる
−−現在、MicroWorksのWebサイトで作品を紹介していますが、作品はネット上でも販売されているのですか。
MicroWorksのWebサイトには購入フォームはないのですが、メールで注文いただければもちろん対応致します。また、現在は僕の作品だけの取り扱いですが「オンラインバザール」というオンラインショップ(http://www.bazaaaar.com/)を今年の初め頃にオープンしました。今後は友人や知人の作品も販売していく予定です。
−−ちなみにこれまで一番売れた作品はなんですか。
MicroWorks Labelとしては「Book Pack」というブックカバーです。おかげさまで今までで数千枚は売れています。
ただ、数だけで言えばiidaの充電器「AC Adapter MIDORI」が、2万個完売したので、数量ではこちらの方が売れたと言えますね。
−−iidaのプロジェクトはどういう経緯で始まったのですか。
2年程前に「Mobile in Forest Exhibition」というauの新プロジェクト発表の展示会があり、展示会のプロデューサーだったCIBONEのディレクターの方からお声掛けいただきました。ケータイアクセサリーにもデザインを、というコンセプトで、他にもnendoさん、参/MILEさん、坪井浩尚さんなど5、6組が参加していました。
−−充電器がテーマだったのですか。
お題はケータイのアクセサリーということだけでした。あとは展示会のタイトルがMobile in Forestということだったので、広い意味での「自然」ということを考えました。実はこのお話もらって2〜3週間後には展示会がセッティングされていて、アイディア提案までに3日しかありませんでした(笑)。
発表したコンセプトモデルは植物の蔓という意味の「VINE」という名前でしたが、アイデアが浮かんだ時はかなりテンション上がりました。
−−その後に発売になった「RANGERS」も「MIDORI」がきっかけだったのですか。
そうですね。お陰さまで「MIDORI」は発売から数日で完売しました。「MIDORI」の葉は着脱式になっているのですが、同じ機構を利用してまた新しいモノを作ろうということでした。現在、iidaに関しては「MIDORI」「RANGERS」「REST」の3つが発売されました。充電器ばっかりですね(笑)。
−−携帯電話そのものや電子デバイス系は興味ありますか。
機会があればとても興味あります。いくつかアイデアも浮かんでます。
−−iidaのようなコラボレーションの形の仕事は他の企業ともされているのですか。
そうですね、クライアントさんのお仕事もいくつかあります。現在動いているのはアクリルメーカーとの商品開発です。あとは富山県の企業と一緒に商品開発をしています。
−−富山での仕事は具体的にはどういうものですか。
富山県総合デザインセンターさんを通じて今まで何度かお仕事をさせていただいています。去年は「Design Wave in Toyama」事業です。富山県にはいろいろな素材の工場やメーカーがあって、技術も本当に優秀です。このデザインイベントは「富山から世界に発信するデザインムーブメント」をコンセプトに1990年から始まったそうです。
その中の企画の1つでガラスとメタルのワークショップがあります。ワークショップは毎年、デザイナーが3日間泊まり込んで現地の職人さんと直接やり取りをしながらモノ作りをするというワークショップです。僕は去年はガラス部門で参加させていただき、富山ガラス工房の職人さんと一緒にワイングラスとコップの2つを作らせていただきました。
−−ワイングラスはどういう発想から生まれたのですか。
今回作らせてもらったワイングラスはグラスの一本脚をフラミンゴの脚に見立てたワイングラスです。
ワイングラスはボウル、ステム、プレートと、3つのパーツで構成されています。そこで、そのパーツにそれぞれストーリーを持たせて1つのものにしたいと考えました。ボウルの中にフラミンゴのオブジェクトが入っていて、脚はフラミンゴの脚のような節、プレートは水面に脚が浸かっている様子をイメージして波紋になっています。
製法は宙吹きだったので、このアイデアを表現する手法としては向いていなかったかなと後になって思ったりもしたんですが、職人さんがすごく頑張って作ってくださいました。実際にワインや液体を注ぐと中のフラミンゴが膨張して見えるので、正面から見るともう少しフラミンゴが大きく映って脚とも一体になりますし、ロゼを入れればよりフラミンゴの色になります。個人的にもとても気に入っている作品の1つです。
−−どこのメーカーやクライアントと組んでも、やはりMicroWorksブランドでというこだわりはあるのですか。
できればMicroWorksブランドで出したいという願望はありますが、そこに固執しているわけではないです。クライアントさんのメーカーから販売していただけるのであれば、それはとても有り難いことなので。
MicroWorks Labelでは表現したいものを何の制約もなく全部実現できる状況なので、クライアントさんからのリクエストが逆に新鮮に感じることができます。同時に抑えたい部分はもちろん抑えることもできます。僕の中ではMicroWorks Labelとクライアントさんとの仕事という両面がうまく相互作用していると感じています。
●MicroWorksの作品を生むデザインツール
−−デザインのアイデアを具体的に落とし込む上で、どの段階でどんなツールを使って最終的なイメージに近づけているのですか。
そのモノによりますね。早い時はいきなり図面というケースもあります。基本的にはアイデアがあった上で、それをその状況に合うような形に落とし込みます。スケッチが必要であればスケッチでスタディしたり、ボリュームを検討する時は模型を作ったり、素材もいろいろな素材で作ります。
−−模型の素材は発泡などですか。
素材は様々です。たとえば、去年発表した定規「Ladder Ruler」の場合、初めはボリュームを見るための簡単なものでした。最初はアルミニウムではなくて、木製でもいいかなと思っていたので木で模型を作りました。そこからハシゴのステップのスパンや目盛のパターンなどを調整しました。
最初のイメージをある程度図面にしたら、あとはモノベースでどんどん試作するというパターンが多いかもしれないですね。
−−図面はIllustratorですか。
以前はVectorworksを使っていましたが、今はIllustratorで描いていますね。PCのモニタである程度細かい表現の部分とかRを確認できるので。
−−その他にお使いのデザインツールはありますか。
PhotoshopとかShadeですね。形のイメージなどを伝える必要がある場合は3Dソフトも使います。
−−IllustratorからShadeに読み込んで立体のレンダリングをするという流れでしょうか。
そうですね。テクスチャーを少しのせて、ボリューム感を見せるという感じです。
●ディテールよりもコンセプトを
−−海山さんのデザインはディテールにこだわりがあるように感じますが、工場とのやり取りで妥協せざるを得ない局面はありますか。
こういう言い方をすると誤解があるかもしれませんが、悪い意味ではなくて結構妥協はします。こだわらなくて良い部分は全然こだわりません。ただ、核になる部分はかなりこだわります。
たとえば「Ladder Ruler」の場合、使うだけでなく飾ることができるという部分も大事な要素です。なので角材の太さや形のバランスなどにとてもこだわりました。その分、工程も増えてコストにも響いてきますが、徹底的にこだわりました。コンセプトを表現することに主眼を置いているので、デザイン化する上でムダにお金をかけなくてもいい部分をしっかり把握し、一番重要な部分をいかに際立たせて表現できるかということに重点を置いています。
「note」に関しても実は塩コショウが出る部分の穴の形が楕円になっています。これが普通の丸だと見た目の印象が全然変わってきます。この楕円にすることが実は職人さんもだいぶ頭を悩ませていたんですが、良い方法を提案してくださいました。
この図面の通り作ってください、というより、この考え方を表現するためにはどうしたら良いか、という感じで聞いたり接してます。
−−無駄にコストをかけてまでディテールを突き詰めるのではなく、コアになるコンセプトをしっかり打ち出すということですね。
「〜がいい」と「〜でいい」をしっかり自分の中で分けられれば良いのだと思います。
「コスト削減、コスト削減」と言ってどんどん削ってしまうのはすごくつまらないと思います。ただ現実的には商品化を見据えて判断していきますからコストはいつも壁になります。
あとはパッケージも重要な要素だと考えています。コストだけを考えれば簡単なパッケージが良いかもしれませんが、MicroWorks Labelの商品はパッケージも含めて1つのプロダクトだと捉えています。
−−たしかにパッケージの印象はモノのトータルの価値を左右しますね。
MicroWorksの作っているようなカテゴリーのアイテムはギフトとしての需要が結構あります。そういう意味でもそのままプレゼントとして渡せるようなパッケージを心がけています。過剰過ぎず、少しだけお金をかけて気を遣うだけで、ギフトとしての印象は全然違うものになると思います。
−−パッケージやグラフィックデザインも含めたトータルのメッセージですね。
グラフィックデザインも好きなんです(笑)。
−−最後に、これから手掛けてみたい対象物や素材はありますか。
気になる対象物というと、人間の頭に刷り込まれているような形、あまりデザインという目的のもとに作られていない日常的な形は気になります。たとえばネジだったりクギだったり、そういう身近なモノをデザインしてみたいです。
素材に関しては、作るモノによって異なってくるので限定できませんが、個人的には時間が経つとまた違った表情が出てくるような金属や木に興味があります。
−−今後の具体的な活動についてはいかがですか。
6月に展示会が決まっています。東京ビッグサイトで行われる「インテリアライフスタイル」展のデザイナーブース「talents(タレンツ)」に出品します。久しぶりに家具の新作を発表予定です。
またMicroWorks Labelの新商品としてTailという傘を5月下旬〜6月初旬頃に販売開始予定です。こちらは2007年に発表した作品なんですが、ようやく商品化することができました。梅雨の時期にぴったりのアイテムです。
−−本日はどうもありがとうございました。
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