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▲写真1:ソニー「DPT-RP1」オープン価格(ソニーストア価格79,800円+税)(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その68
未来のノートの可能性としてのソニーの試み
~「DPT-RP1」をめぐって~


納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。


●より紙に近づいたデジタルデバイス

紙に書いた文字や絵が、そのままデジタル化される製品というのは、一定の人気があるというか興味を惹くようで、いくつも製品化されている。過渡期的な製品としては、スマホのカメラで撮るとキレイに整形されて保存されるメモ帳というものも登場し、一定以上の人気を集めた。ただ、それらの製品は未だ、好きな紙に好きな筆記具で書いたものをドキュメントスキャナなどで取り込む、という方法に比べて、大幅なメリットが感じられないのだ。

一方で、iPad ProやSurface Proの一部製品のような、タブレットとペンインターフェイスを使って、画面に直接手書き(手描き)で書くタイプの製品もある。手書きとデジタルの融合ということを考えるならば、こちらの方向が現在のところ芽があるような気はしている。紙に書きたいなら紙に書く方が良いのだし、デジタルデータとの境界をシームレスにしたいならデジタルの画面に書く方が早い。もちろん、手書きの紙のバックアップとしてのデジタル化や、後でまとめて閲覧するためのデジタル化は重要だけれど、それはスキャナの方がいまのところ手間がかからない。

ソニーのデジタルペーパー「DPT-RP1」も、方向としてはタブレット寄りだけれど、タブレットが汎用機+ペンインターフェイスというスタイルなのに対して、こちらは専用機である。機能としては、PDFの表示と、その画面への書き込み機能(写真02)のみ。その分、軽く、バッテリーは約3週間保ち、セーブなどの余計な操作は不要で保存され、使いこなすのに特に慣れなどは必要ない。つまり、より「紙」に近いデバイスだ。

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▲写真2:ノートのように画面に直接文字や絵を書き込める。書き味はタブレットなどに比べると紙に近い。(クリックで拡大)










●「DPT-RP1」を校正に使ってみた

例えば、ぼんやりと思考を巡らせて、適当に文字や絵を描きながら考えをまとめ、アイデアを出すという作業は、手書きがよい。これは、ランダムに画面上の好きな場所に、頭の中で混乱しつつ彷徨っている考えを直接吐き出せるからだ。しかし、このアイデアの断片のスケッチのようなものは、デジタル化が必要だろうか。問題は、そこから具体的なアイデアを抽出することで、抽出できたら、それ以降はリニアな文章として書けてしまうので、手書きである意味はない。

手書きがリアルタイムにデジタル化されることが重要だとすれば、それは、すでにあるデジタルデータに書き込んだりするケースくらいではないだろうか。

ソニーの「DPT-RP1」は、この「すでにあるデジタルデータに手書きで書き加えられる」というのが、一番の得意技だ(写真03)。そして、その点で、「未来のノート」の必須機能を持っていると思えるのだ。現実的な話をすれば、例えば、現在、いわゆるゲラ(校正)は、Webメディアでも紙メディアでもPDFファイルで送られてくることが多い。

それをプリントアウトすることなく、直接「DPT-RP1」の画面に表示させ、画面に書き込むという作業は、実際にやってみても想像通り、とても快適なのだ。ほぼA4サイズのまま、読んで書けて、拡大も可能。狭い場所への書き込みも拡大して書けばキレイに書けるし、読む側も拡大して読めるからトラブルも起きにくい。セーブ操作がなく、書いた端から保存されていくのもいい。

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▲写真3:PDFファイルの上から直接書き込める。校正作業にはとても便利だった。(クリックで拡大)










もちろん、書いた文字を消すこともできるし、文字を選択してハイライト表示させることも可能(写真04)。ペンで手書き感覚でPDFの機能が使えると、つくづくPDFがデジタル上の紙を目指して作られたフォーマットだったんだなあということを実感できる。ほとんどのデジタルデータは簡単にPDF出力できる現在、「DPT-RP1」で扱えるデータがPDFのみであることに困ることはない。書籍のデジタル化を行う際、通常PDFを使うことが多いことを考えれば、リーダーとしてもPDF対応だけで十分だ(写真05)。

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▲写真4:この専用ペンに付いているボタンの下部を押すと消しゴムに、上部を押すとハイライトになる。(クリックで拡大)



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▲写真5:デジタル化したマンガ(いしかわじゅん著「吉祥寺キャットストリート」より)を表示させた。ほぼ紙である。(クリックで拡大)









そして、「書く」にしても「読む」にしても、この薄さと軽さはありがたい。A4サイズという大きさなのに、端を持っても重く感じない、349gという軽さと、ほとんど薄いノートを持っている程度にしか感じない厚み(写真06)。あまりに薄くて、鞄の中に入れて持ち歩いていると折れてしまうのではないかと心配になるほどだが、本体やE-inkの画面自体が捩れに強い構造なので、実は結構タフなのだ。だから、感覚としては、軽いクリップボードに挟まれた資料に書き込んでいるようで、立ったままでもスムーズに書けてしまう。これはさまざまな局面で応用が利くデバイスだということだ。

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▲写真6:女性が片手で持って書き込みができる、この薄さと軽さ。(クリックで拡大)










●「未来のノート」の正解に迫る

「DPT-RP1」を使い込むほどに、SF小説に出てきそうな、未来な感じがしてくる。13.3型で1,650×2,200ドットという解像度のE-ink画面は、16階調グレー表示だが、クッキリとキレイで紙に印刷したものと、解像度的にもほとんど区別が付かない。これがどういうことかというと、画面上で見るより印刷した方がミスが発見しやすいという従来の方法論を覆して、「DPT-RP1」で読むなら、わざわざ印刷しなくてもオッケーということなのだ。バックライトのない反射型ディスプレイというのも、紙に近い所以だろう。この見やすさは、紙と言ってしまって良いと思う。

前機種にはあった画面のベゼルと画面の間の段差がなくなり、ほぼ平面となった画面は(写真07)、コピー機やフラットベットスキャナで画面をコピーできてしまう。これこそがデジタルとアナログのボーダーレス化現象。もはや、紙だから、画面だからといった区別が必要なくなる未来は、すぐそこだ。

問題は、この、とても「未来のノート」の正解に近いすごくツールは、しかしまだ、未来のプロトタイプの域にあり、ビジネス市場でのさらなる浸透が必要だろう。やがてコンシューマ向けに低価格で売られる日が来れば、それは「ノート」というものが久しぶりのアップデートを迎える日になる。

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▲写真7:画面の周囲のベゼルと画面の間にほとんど段差がない。画面の両サイドには、ペンを装着できるマグネット付きのスリットがある。(クリックで拡大)












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