●空気清浄機能付ファンヒーター「Dyson Pure Hot+Cool」を使ってみた
▲空気清浄機能付ファンヒーター「Dyson Pure Hot + Cool」。(クリックで拡大)
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▲加湿器「Dyson Hygienic Mist」。((クリックで拡大)
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2月にアップされたpdwebのインタビューで、ダイソンの空気清浄機能付ファンヒーター「Dyson Pure Hot+Cool」と「Dyson Hygienic Mist」、「ダイソン360eyeロボット掃除機」と「Dyson V6 Fluffy+」について、日本在住のシニアデザインエンジニア、マーティン・ピーク氏に話を聞いた。そして実際に製品をお借りしてじっくりと使用してみた。
そこで分かったのは、ダイソンの製品の魅力は、空気の流れのコントロールだということ。それは、掃除機にも空調家電にも共通していて、他メーカーの製品と比べた際に、最も差違を感じられる部分でもある。
例えば、「Pure Hot + Cool」を筆者は、モノで空間がいくつにも分断された部屋で、本当に寒かった時期に試用していた(写真01)。部屋全体を温めたかったので、扇風機的に使うフォーカスモードではなく、部屋全体に送風するワイドモードで使用すると、驚くべきことに、機械の目の前にいる筆者には直接風は当たらないのに、部屋の隅々に、きちんと温風が行き渡っていくのだ。機械が向いている方向だけでなく、やや後方の隅でも、暖かい風が流れていたのだ。「Pure Hot + Cool」のワイドモードで、そうであるということは、同じエア・マルチサプライヤーの機能(写真02)を使っている、ダイソンの空調家電すべてが、その能力能を持っているということになる。
実際、ほんとに素早く部屋が暖まって、それを維持してくれる。この「局所的に暖かくなる」のではない、という事実が、加湿器「Hygienic Mist」(写真03)の信頼感につながる。実際のところ、加湿がどれだけ満遍なく行われているか、というのは、中々実感しにくいのだが、風が部屋の隅々まで行き渡る技術があるなら、湿気も部屋の隅まで運べるはずと思える。
▲写真1:このような形で「Pure Hot + Cool」を試用した。これだけの遮蔽物に関わらず、部屋の隅にも暖かい風が届いていた。もちろん本体の後ろにも風は届いて、部屋全体が暖まった。(クリックで拡大)
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▲写真2:エア・マルチサプライヤーの機能の中心となるファン部分の断面モデル。ファン周りの構造が分かる。(クリックで拡大)
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▲写真3:「Hygienic Mist」の水タンクとファン部分。水を殺菌し、ミスト化した後は、「Pure Hot + Cool」のワイドモードと同じような形で、ミストを部屋全体に行き渡らせる。(クリックで拡大)
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●エア・マルチサプライヤー技術のスゴさ
このエア・マルチサプライヤー技術がすごいのは、遮蔽物がそれほど影響しないということだ。通常、扇風機などは、遮蔽物があると、その向こうに風は届かない。サーキュレーターが、スポット的な風を情報に送り出すのは、風を届けるというよりも空気を動かすためだが、それを理論的に行っているのがエア・マルチサプライヤー。本体が吸い込んだ空気だけでなく、周囲の空気を巻き込んで、よりパワフルな風が作り出せるからこそ実現した機能なのだ。
ということは、空気清浄機能(写真04)も、かなり信頼が置けるということになる。少なくとも、部屋中の空気を自分を中心に循環させることができているのだから、空気中の微粒子を吸い込んでフィルターにかけるという流れはうまく行っているということなのだ。実際、部屋の埃は、本当に減った。また、冬場で締め切って、そこに篭って仕事をしていたにも関わらず、部屋の中の空気がスッキリしていて、こもった感じにならなかったのも、空気清浄機能のおかげなのだろう。
そう考えると、「Pure Hot + Cool」を扇風機として使った場合、それは単に扇風機と呼んでも良いのだろうか、という気になる。もちろん、スポット的に風を送る設定にすることもできるので、扇風機には違いないのだが、部屋の空気をかき混ぜて、満遍なく循環させる能力は、もはやサーキュレーターとも違うように思うのだ。流行りの「自然な風を作る」というのとも違うし、ここは技術者も言っていたように、ムラのない風を起こす、という部分が扇風機としての機能なのだろう。
▲写真4:空気清浄用フィルターの断面。目の細かいフィルターを層にすることで、さらに細かい粒子もキャッチする構造。空気の流れを妨げずに、空気清浄機能を高める工夫だ。(クリックで拡大)
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●頼もしいロボット掃除機「360eye」
▲「ダイソン360eyeロボット掃除機」。(クリックで拡大)
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▲コードレスクリーナー「Dyson V6 Fluffy+」。(クリックで拡大)
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一方で、掃除機も、その基本はサイクロンの技術(写真05)だから、空気の流れのコントロールが性能の中心になっている。多くのゴミを吸い取り、部屋の空気よりもきれいな空気を排出する、というのは、掃除機の中での空気の流れをコントロールするから可能になるものだから。それが技術の中心にあって、その部分に対する信頼が、「掃除能力」という機能への信頼につながっている。
だから、ロボット掃除機を開発するに当たって、サイクロンを使うのは必然(写真06)。サイクロンがダイソンの従来の掃除機と同じように性能をフルに発揮できる状況で投入されていれば、ユーザーは、その形状がロボット型になっても、その吸引力とキレイな排気能力といった「掃除する能力」について、疑わずに利用することができる。実際、わが家で「360eye」を試すと、その動きを見ているだけで、きちんと掃除してくれそうに見えた。
その「吸引力」に信頼があると、後はキャタピラによる絨毯を乗り越える能力(写真07)も、カメラを使った部屋の中の自分がいる位置の確認機能も、「とても良いもの」として認知する。
それが従来のロボット掃除機に感じていた「可愛い」が、機能的に未熟かも知れないものへの不安が混じった感情だったことを気づかせる。つまり、「360eye」に感じるのは「頼もしい」で、掃除機ならば、そっちが正解だということだ。もちろん、ロボット掃除機に何を求めるかは人それぞれだし、そういう意味では「360eye」は可愛げはあまりない(そういう感じを「可愛い」と思う趣味が筆者にはあるけれど、ここで性癖を告白してもあまり意味はない)。
▲写真5:ダイソンの掃除機のデザイン上のアイコンにもなっている「V6 Fluffy」のサイクロン部分。(クリックで拡大)
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▲写真6:「360eye」のサイクロン部分。サイクロンが十分に働けるように、この高さが必要だった。(クリックで拡大)
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▲写真7:このキャタピラのおかげで、多少の障害物や段差は越えていく。(クリックで拡大)
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●理に適っているカタチ
そして、円形だけれど掃除機部分が円周の外に出ている構造も(写真08)、正しく掃除機の形で、部屋の隅を掃除することを考えた時に理に適っている。この「理に適っている」というのは、決して、何かを保証するものではないが、機能が理解しやすかったということでもある。実際に動かした際にも、隅のゴミをしっかりと吸引していたのだから、この設計も正解なのだ。多分、「360eye」はロボットという以前に掃除機で、そこがダイソンらしさでもあるのだろう。背の高さについても、それが吸引力の確保につながっていることが見た目で分かるように作られているわけで、ユーザーが納得しやすい。機能とデザインの関係には、こういう形もあるのだ。
ダイソンの製品のように、解決したい問題があり、それを解決する技術を考案し、その技術を搭載する形を考えるという製品開発の流れが、製品の形に表れていると、とても購入しやすいと感じる。エンジニアがデザイナーを兼ね、デザイナーがエンジニアを兼ねる開発環境というのは、そういう分かりやすさも提供できるのだ。その上で、ポイントになる部分、可動する部分に色を付ける(写真09)といったインターフェイスとデザインの融合も考えているわけで、それは毎日使いたくなるよなあ、と思う。
▲写真8:掃除機のヘッド部分が円周からはみ出している。これで隅の掃除に対応するわけだ。ヘッド部分は、最新のFluffyではなく、その前のモデルに近い構造だという。(クリックで拡大)
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▲写真9:「V6 Fluffy」のハンドル部分。赤いパーツは、動かすことができる部分に付けられている。(クリックで拡大)
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