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▲写真1:ノックスブレイン「ルフト バイブルサイズ01 スムース ブラック」6,500円(税別)。11mm径6穴リング、本体サイズ H180×W115×D15mm。(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その52
システム手帳であることを否定して
生まれたシステム手帳
ノックスブレイン「ルフト」をめぐって


納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。

●システム手帳からスマートフォンへ

かつて、一世を風靡した情報管理ツール「システム手帳」が、いつの間にか知る人ぞ知る的な存在になり、手帳ブームの時にも特に注目されることがなかったのは、多分、「システム手帳」が担っていた役割と機能が、デジタルに置き換えやすかったからだと思う。

例えば情報をすべて集約して管理できるオールインワンの機能。分厚いシステム手帳イコール膨大な情報だったわけで、パソコンやタブレットが持ち歩けて、情報はネット上で探し放題になると、膨大な情報を持ち歩く必要がなくなってしまった。例えば、さまざまな機能を1冊に集約できるバインダー。それはアプリをインストールして機能を追加するパソコンやスマートフォンと同じ。通常の綴じ手帳は、その機能がプリミティブだっただけに、アナログらしさが見直されたりもして、それが手帳ブームにつながったのだが、システム手帳は便利過ぎたと言っても良いだろう。

また、システム手帳はユーザーが好きに内容を作ることができる。それが大きなメリットなのだけれど、高過ぎる自由度は敷居の高さにもつながる。好きにどうぞ、と言われて,本当に好きにできるユーザーは意外に少ないのだ。後の手帳ブームで人気になったのが、どこに何を書けばよいのかをきちんと表示してくれるタイプの手帳で、それは要するに自由度が低い手帳。何もないところに自分の力で情報を積み上げていくというのは、実際、かなり難しい。それこそ、かつては雑誌のコピーなどを綴じれば格好が付いたのだけれど、ネット時代に、そこにない情報を手帳に綴じるのは、中々大変。

ただ、手帳ブームのおかげで、自分なりの情報をアナログの形で残す方法を身に付けたユーザーは増えている。東京糸井重里事務所の「ほぼ日手帳」は、決して敷居が低い手帳ではないにも関わらず、そこに自分なりの活用法を見つけて使っているユーザーが増えた。手帳ブームという形で手帳に興味を持った人たちが、手帳を自分が使いやすい方法で活用する面白さや便利さを身につけてきた。スケジュール管理の多くの部分をGoogleカレンダーとスマートフォンに任せられるようになって、改めて「紙」でできることに目が向いたと言ってもいいだろう。

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▲写真2-1:ルフト バイブルサイズ01 スムース」「ナローサイズ01 スムース」のカラーバリエーション。(クリックで拡大)



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▲写真2-2:「ルフト バイブルサイズ02(ナチュラルシボ型押し)」と「ルフト ナローサイズ02(ナチュラルシボ型押し)」のカラーバリエーション。(クリックで拡大)



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▲写真2-3:「ルフト バイブルサイズ03(シュリンク型押し)」と「ルフト ナローサイズ03(シュリンク型押し)」のカラーバリエーション。(クリックで拡大)



●今だから生まれた新しい手帳

ノックスブレインの「ルフト」(写真01、02)は、新しいシステム手帳として登場したし、メーカーもシステム手帳をこれまで知らなかった人にも届けたいというコンセプトで開発したのだと思うけれど、そして、もちろん、システム手帳として良くできた製品でもあるけれど、これは、かなり新しい可能性を持った製品ではないかと思うのだ。そもそも、かなり根本的な部分で、従来のシステム手帳を否定している。それが、いちいち現在の状況に合っていて、それも面白い。

柔らかくしなやかな一枚革に、バインダーをバックプレートで留める、ただそれだけのシンプルな構造(写真03)。裏も貼らない一枚革にただバインダーリングが付いているだけだから、本当に軽いし、ぺたりと180度開く。それだけでも、従来のシステム手帳には中々実現できなかったことだ。そして、それを実現するために、ポケット類は一切付けず、リフィルを綴じられる枚数もあまり多くない、といった、従来のシステム手帳ではできて当たり前のことをカットしている。書きやすく、持ち歩きやすく、中のリフィルを自由に取り換えられる手帳。従来のシステム手帳とリフィルの互換性はあるけれど、それはもう別物といっていいだろう。オールインワンであることを捨てているのだから。

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▲写真3-1:一枚革にバインダー用の11mm径のリングだけのシンプルな構造。そのおかげで、このように、ぴったりと180度開く。(クリックで拡大)



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▲写真3-2:背中に取り付けるバックプレートでリングを留めている。このバックプレートの色を変えることで、表のデザインが随分変わって見える。(クリックで拡大)







もう、オールインワンはスマートフォンでいいのだ。紙には紙にしかできないことがあるし、それには大量の紙を持ち歩く必要がない。ポケットから出して、今日やるべきことを確認する、という作業なら、多分スマートフォンより手帳が早い。「ルフト」なら、今日のToDoを1ページ目に置いておくことも簡単だ(写真04)。気が付いたこと、思いついたことを書き留めるのも紙は早い。後でページを入れ替えられるし、外してスキャンして、また戻せる「ルフト」なら、メモとしての機能がとても高い。開いたページにいきなり書けるというのは咄嗟の際に本当に役に立つ。本気で忙しい日だけ、その日の予定を書いて綴じておく、といったこともできれば、スマートフォンでは文字が小さくて読みにくい情報を拡大して書いておくといったこともできる。

自分なりに手帳を活用するというスタイルに馴染んだユーザーであれば、自由度が高いリフィル型の手帳を、自分が使いやすいようにカスタマイズすることに、すぐに慣れると思うのだ。カスタマイズという方向で言えば、「ルフト」はメーカー主催のカスタマイズイベントも行っている(写真05)。ユーザーが、革とバックプレート、色、サイズなどを選んで、自分だけの「ルフト」を購入できるイベントだ。イベントだけで手に入る色やパーツもあり好評のようだ(写真06)。

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▲写真4:リフィルを入れた状態。元々、そうたくさんは入らないし、入れない方がスマートで扱いやすい。最初からオールインワンを目指さない仕様なのだ。(クリックで拡大)



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▲写真5:銀座伊東屋で行われたカスタマイズイベントの様子。その場で革の種類、色、バックプレートの色などの注文を受けて、1冊づつ組み立てていく。(クリックで拡大)



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▲写真6:スタンプなども用意され、より「オリジナルの手帳」を感じられるイベントになっている。(クリックで拡大)




●カスタマイズによる愛着

先日、銀座伊東屋で行われたイベントを取材したところ、システム手帳は初めてというユーザーも多数購入したという。このような、製品自体に最初からカスタマイズ性を組み込んだのも、これまでのシステム手帳にはないアイデア。内部のカスタマイズは自由自在だが、外側はカッチリと作り込むのがシステム手帳の歴史だっただけに、このスタイルは新しい。ノートや手帳のカスタマイズは多くのユーザーが行っているが、革から選べるスタイルはかなり珍しい。

筆者も1冊、カスタマイズモデルを作ってもらったのだが(写真07)、好みで外観から作るシステム手帳は、相当愛着が湧くものだということに気が付いた。思わず持ち歩いてしまうだけの魅力がある。そして、持ち歩いても邪魔にならないスリムさと、最初からたくさんのリフィルを綴じて使うことを想定していない使い勝手の良さで、いつの間にか普段使いのノートとして使うようになっていた。そう、手帳というよりカスタマイズが自由で、紙を1枚単位で外したり綴じたりできる新しいノートとして、とても便利なのだ。情報を蓄積するためのツールではなく、情報の種を集めるような使い方。それはもう、かつてのシステム手帳ではない。でも、バインダーでリフィルが着脱できること、長い年月の間に充実した各メーカーのリフィルがすべて使えること、それらは「システム手帳」の資産だ。

カスタマイズイベントでは、バイブルサイズだけでなく、ノックスブレインのオリジナル規格であるナローサイズ(写真08)もよく売れたそうだ。バイブルサイズよりも幅が狭いリフィルを使うスリムなサイズ感は、ポケットに入れて持ち歩きたい人に評判が良いと言う。かつてはシステム手帳との互換性の問題もあって敬遠していたユーザーも今は昔。純粋に、使いやすそうという視点で購入していく。これも「システム手帳」というシステムが崩れ、新しいスタイルとして生まれ変わろうとしているからこその現象だろう。実際、ナローサイズにしかないリフィルもあり、使いやすいし、利用の幅も広い規格なのだ。そうやって、かつての「システム手帳」が、いつの間にか別のシステムを持つ(写真09)、その可能性を探るツールとして、も「ルフト」を使っていきたいと思っている。

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▲写真7:筆者のオリジナル「ルフト」。イベント限定色のスムースタイプの革を、バイブリサイズで仕上げてもらった。コーナーの金具はイベントなどのオリジナル版独自のパーツだ。(クリックで拡大)



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▲写真8:ナローサイズ(写真上)は、ノックスブレインが提唱する、バイブルサイズより少し幅が狭い規格。ポケットに入れやすいのでビジネスユースには人気が高い。(クリックで拡大)



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▲写真9:ルフト専用(他のシステム手帳でも使えるがサイズや素材的に専用感がある)にペンホルダーのリフィルも用意。1,000円(税別)。(クリックで拡大)






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