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▲写真1:シャープ「ヘルシオお茶プレッソ」オープン価格。色は、写真のブラック系の他、白を基調にしたホワイト系がある。(クリックで拡大)

今、気になるプロダクト その36
お茶の飲み方の提案そのものをデザインした製品
シャープ「お茶プレッソ」をめぐって

納富廉邦
フリーライター。デザイン、文具、家電、パソコン、デジカメ、革小物、万年筆といったモノに対するレビューや選び方、使いこなしなどを中心に執筆。「All About」「GoodsPress」「Get Navi」「Real Design」「GQ Japan」「モノ・マガジン」「日経 おとなのOFF」など多くの雑誌やメディアに寄稿。

●粉茶を楽しむためのマシン

「お茶プレッソ」は、決して新しい発想の製品ではない。お茶をミルなどで粉にして、お湯や水に溶かして直接飲むというのは、お茶好きの間では普通に行われていたことだし、お茶屋さんに行けば、粉茶は昔から売っている。ファーストフードの丼モノ屋や寿司屋などでは粉茶が当たり前のように使われている。抹茶だって、茶葉を臼で挽いて粉にしたものだ。

ただ、そういう感じで知っている人は当たり前に知っていた「粉茶」というお茶の飲み方を、手軽に身近にする機械として、茶葉を挽くためのミル、お茶を淹れるための湯沸かし機能、粉茶を湯と合わせてかき混ぜる機能、ティーサーバーの機能を、1つの機械のようにデザインしたのが(写真02、03)、シャープの上手いところだと思う。

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▲写真2:左側が粉茶とお湯を混ぜる装置、右にあるのが茶葉を挽くためのミル部分。それぞれが独立した装置になっている。(クリックで拡大)



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▲写真3:背面に水タンクがある。大量に入れて使うのではなく、1度に飲みたい量を入れて使う仕様なので、あまり容量は大きくない。(クリックで拡大)





もちろん、それだけではなくて、例えば、ミル部分は、内部にきちんとセラミック製の挽き臼を内蔵して、砕いたり切り刻むのではなく、抹茶を作る時と同じように挽いているため(写真04、05、06)、出来上がる粉茶は、パウダー状できめ細かい(写真07)。だから、溶けやすいし、粉っぽさも少なくなる。さらに、スプーンでかき混ぜるのではなく、お湯と合わせながら機械がかき混ぜてくれるので(写真08)、混ぜムラがなく、さらに粉っぽさを低減する。その結果、かなりクリーミーな飲みやすいお茶ができ上がる(写真09、10)。

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▲写真4:ミル部分の上部に付属のティースプーンで茶葉を入れる。その後、本体上部のボタンを押して、茶葉を挽く。挽き具合の調整も可能。(クリックで拡大)



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▲写真5:(クリックで拡大)



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▲写真6:セラミック製の挽き臼が回転して、茶葉を挽いていく。挽き終わると、自動的にミル本体を振って粉茶を下の受け皿に落としてくれる、その人間臭い動きが面白い。(クリックで拡大)





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▲写真7:挽き上がった粉茶。粒が揃っていて、とても細かいパウダー状になっている。(クリックで拡大)



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▲写真8:混ぜる装置の蓋をずらすと、粉茶を入れる穴があるので、そこに粉茶を入れる。多めがうまい。と筆者は思う。(クリックで拡大)





 

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▲写真9:でき上がったら、レバーを押して、下に置いた茶碗にお茶プレッソを注ぐ。(クリックで拡大)



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▲写真10:でき上がった「お茶プレッソ」。濃い緑だが、苦かったり渋かったりするわけではない。うまい。(クリックで拡大)







●「お茶プレッソ」という「専用機」

もっとも、この「お茶プレッソ」を使わなくても、お茶屋さんで売られている粉茶は、臼で挽いたものだったりするし、混ぜる際に丁寧に時間をかけて混ぜれば、人力でも滑らかな粉っぽくないお茶にすることはできる。ただし、それは、良い茶葉の粉茶を買ってこなければいけないし、混ぜるのに時間もかかる。その手間ひまは、実はとても面倒なのだ。それは、お茶を急須で淹れる方が断然楽で早いから。おいしいお茶が、急須に茶葉を入れて、お湯を注いで、少し待って湯飲みに注ぐ、という、それだけで飲めてしまうのだから、そして、そうやって淹れるお茶は、とてもおいしいのだから、わざわざ粉茶を淹れようと思えなくなってくる。

だからこその「お茶プレッソ」なのだ。つまり「専用機」であることの有用性。この「お茶プレッソ」は、基本的には「粉茶」専用だ。だから、これを購入することは、「日常的に粉茶を飲む」という決意表明になる。また、「急須で淹れるお茶」とは、明らかに別の飲み物としての「お茶プレッソ」を飲むことになるわけで、だから、急須で淹れる「お茶」と共存できる。気分によって、または、毎日両方飲めばよいということになる。「お茶プレッソ」の操作方法を考えたら、ミル部分と混ぜる部分が特に一体化している必要はないのに、1つの機械としてまとまっているのも、それが「お茶」を淹れる道具ではなく、「お茶プレッソ」を作る道具である、という表現のためなのだ。

●実際に飲んでみる

実際に、淹れてみると、本当に急須で淹れるお茶とは別物だということが分かると思う。そして、濃く淹れれば淹れるほど、違いが際立つ。説明書には、標準のお茶を淹れる際の粉の量や、濃いめに淹れる際の粉の量の目安が書かれているのだけど、実際に飲んでみて思ったのは、「濃いめ」の時の粉の量を標準と考えて、そこから、濃い薄いを調整した方がおいしいお茶になる、ということ。ようするに、濃い方が、お茶の成分を飲んでいる感が強くなり、甘味も際立つので、急須で淹れる瑞々しいお茶とは別のおいしさを感じやすくなるということだろう。ただ、お茶をより凝縮して飲むことになるので、茶葉の品質は、かなりダイレクトに出る(写真11)。高いお茶でなければとは言わないけれど、好みの味の茶葉でないと、濃くすればするほど飲み難くなってくる。逆に、味が好みの茶葉であればあるほど、濃くすればするほどおいしくなる。その意味では、普段飲んでいる茶葉が、どれくらい自分好みなのかを判定する機械としても使えるのだ。だから、もし、「お茶プレッソ」を飲んで、美味しくないと感じた場合、元々お茶の味が好きじゃない、というケース以外(そういう人は、そもそも、これを買わない方がよい)は、茶葉が好みではなかったという可能性が高い。

抹茶もそうだが、日本茶は、基本的には苦くないのだ。渋かったら、それは濃過ぎただけだ。また、粉茶で飲むと、甘味が引き立つことの方が多い。健康に良い物だから苦くてもしょうがない、と思って飲んでいたら、それは茶葉を疑った方が良いのだ。そして、「お茶プレッソ」は、決して、健康を優先して、おいしくないお茶を作る機械ではない。構造上、むしろ、少ない茶葉で、しっかりとお茶の味を楽しめる機械になっている。

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▲写真11:今回、主に使用した茶葉は、京都の一保堂茶舗の玉露。甘味が際立つ。頂き物の茶葉など、とっておきを使うとおいしく淹れられると思う。(クリックで拡大)









●アレンジしてみる

抹茶オレ風のものも作れるようになっているのだけど(写真12)、そちらの機能は、個人的にはあまり便利だとは思えなかった。牛乳をあらかじめ温めた上で、混ぜるポットに粉茶と一緒に入れて作るのだけど、牛乳を温める手間が、とても面倒なのだ。牛乳を温める手間を考えると、粉茶を手で混ぜてもかまわないような気にもなってしまう。また、砂糖などの甘味を足す場合の加減もけっこう難しい。だったら、市販のグリーンティーを買ってくる方が早いし、はるかにおいしいのだ。もし、オレにするならば、お勧めは焙じ茶だろう。焙じ茶に関しては、急須で淹れるか水出しで飲む方がおいしいのだけど、焙じ茶ラテは、粉茶で作った方が焙じ茶らしい味と香りが生きる(写真13)。

茶葉に関しては、紅茶や烏龍茶も使えるのだけど、どちらも、それほどおいしくはならなかった。紅茶は、ミルクティーにするならば、それなりにおいしいのだけど、それでも、やはり茶葉から抽出する方が簡単でおいしい。やはり、日本茶、特に深蒸し系の玉露を使うのが、おいしいと思った。製品のコンセプトからすると、もしかすると「おいしい」というのは、あまり求めていないのかもしれないのだけど、お茶は元々おいしい飲み物なのだし、その茶葉を使って作る飲み物が、おいしくならないわけはないのだ。

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▲写真12:緑茶オレも作ってみた。色もキレイだし、十分おいしいが、おいしいお茶屋さんのグリーンティーはもっとおいしいから考えてしまう。(クリックで拡大)



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▲写真13:レシピ集も付属している。粉っぽくないアイスの粉茶が簡単に作れるのは、混ぜ機があるからこそだ。(クリックで拡大)





 


●手間暇かけて味わう

のメインテナンスは、決して簡単ではない。特に、臼部分は、面倒なのだけど、この部分に関しては、同じ茶葉を使い続ける限りは、そう頻繁に掃除する必要はない。それでも、水タンクや混ぜ機の部分、サーバー部分など、洗い物は多い。やはり急須は偉大だと思わないでもないが、例えば、コーヒーを淹れる際に、豆を挽くミル、フィルター受け、サーバー、カップと洗うことを考えれば、極端に洗い物が多いわけではない。ただし、そこそこ手間なのは間違いないので、問題は、その手間をかけてでも、「お茶プレッソ」が飲みたいか、ということになる。コーヒーを毎日飲みたいから、毎日洗い物もするように。それは、あらゆる嗜好品に必要な手間だ。

つまり、「お茶プレッソ」は、コーヒーメーカーのような、便利に飲み物を作ってくれる機械ではなく、「お茶プレッソ」という飲み物を飲むための、トータルな作業環境なのだ。だから、どちらかというと、ティーセットとか、茶器一式、といった方の仲間だ。それが家電として1つの製品になって売られている、というのが、「お茶プレッソ」の最も特殊なところだろう。ネスカフェの「ドルチェグスト」のようなマシンとは根本が違うのだ。そう考えれば、メインテナンスの手間にも納得がいく。「お茶道具」なのだから、手入れに手間暇かかるのは当たり前なのだ。だから、できれば、もう少し、カッコいいデザインであったらなあと、そこは、ちょっと残念に思う。そして、牛乳を温める機構も付けて欲しかった。あ、もう1つ、注意事項として、この「お茶プレッソ」、筆者のような、大量にお茶を飲む人にとっては、一度に淹れられる量が少ないと感じるかも知れない。少なくとも筆者は、もっとガブガブ飲みたいのに、と思った(笑)。











 



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