●「お茶プレッソ」という「専用機」
もっとも、この「お茶プレッソ」を使わなくても、お茶屋さんで売られている粉茶は、臼で挽いたものだったりするし、混ぜる際に丁寧に時間をかけて混ぜれば、人力でも滑らかな粉っぽくないお茶にすることはできる。ただし、それは、良い茶葉の粉茶を買ってこなければいけないし、混ぜるのに時間もかかる。その手間ひまは、実はとても面倒なのだ。それは、お茶を急須で淹れる方が断然楽で早いから。おいしいお茶が、急須に茶葉を入れて、お湯を注いで、少し待って湯飲みに注ぐ、という、それだけで飲めてしまうのだから、そして、そうやって淹れるお茶は、とてもおいしいのだから、わざわざ粉茶を淹れようと思えなくなってくる。
だからこその「お茶プレッソ」なのだ。つまり「専用機」であることの有用性。この「お茶プレッソ」は、基本的には「粉茶」専用だ。だから、これを購入することは、「日常的に粉茶を飲む」という決意表明になる。また、「急須で淹れるお茶」とは、明らかに別の飲み物としての「お茶プレッソ」を飲むことになるわけで、だから、急須で淹れる「お茶」と共存できる。気分によって、または、毎日両方飲めばよいということになる。「お茶プレッソ」の操作方法を考えたら、ミル部分と混ぜる部分が特に一体化している必要はないのに、1つの機械としてまとまっているのも、それが「お茶」を淹れる道具ではなく、「お茶プレッソ」を作る道具である、という表現のためなのだ。
●実際に飲んでみる
実際に、淹れてみると、本当に急須で淹れるお茶とは別物だということが分かると思う。そして、濃く淹れれば淹れるほど、違いが際立つ。説明書には、標準のお茶を淹れる際の粉の量や、濃いめに淹れる際の粉の量の目安が書かれているのだけど、実際に飲んでみて思ったのは、「濃いめ」の時の粉の量を標準と考えて、そこから、濃い薄いを調整した方がおいしいお茶になる、ということ。ようするに、濃い方が、お茶の成分を飲んでいる感が強くなり、甘味も際立つので、急須で淹れる瑞々しいお茶とは別のおいしさを感じやすくなるということだろう。ただ、お茶をより凝縮して飲むことになるので、茶葉の品質は、かなりダイレクトに出る(写真11)。高いお茶でなければとは言わないけれど、好みの味の茶葉でないと、濃くすればするほど飲み難くなってくる。逆に、味が好みの茶葉であればあるほど、濃くすればするほどおいしくなる。その意味では、普段飲んでいる茶葉が、どれくらい自分好みなのかを判定する機械としても使えるのだ。だから、もし、「お茶プレッソ」を飲んで、美味しくないと感じた場合、元々お茶の味が好きじゃない、というケース以外(そういう人は、そもそも、これを買わない方がよい)は、茶葉が好みではなかったという可能性が高い。
抹茶もそうだが、日本茶は、基本的には苦くないのだ。渋かったら、それは濃過ぎただけだ。また、粉茶で飲むと、甘味が引き立つことの方が多い。健康に良い物だから苦くてもしょうがない、と思って飲んでいたら、それは茶葉を疑った方が良いのだ。そして、「お茶プレッソ」は、決して、健康を優先して、おいしくないお茶を作る機械ではない。構造上、むしろ、少ない茶葉で、しっかりとお茶の味を楽しめる機械になっている。
▲写真11:今回、主に使用した茶葉は、京都の一保堂茶舗の玉露。甘味が際立つ。頂き物の茶葉など、とっておきを使うとおいしく淹れられると思う。(クリックで拡大)
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●アレンジしてみる
抹茶オレ風のものも作れるようになっているのだけど(写真12)、そちらの機能は、個人的にはあまり便利だとは思えなかった。牛乳をあらかじめ温めた上で、混ぜるポットに粉茶と一緒に入れて作るのだけど、牛乳を温める手間が、とても面倒なのだ。牛乳を温める手間を考えると、粉茶を手で混ぜてもかまわないような気にもなってしまう。また、砂糖などの甘味を足す場合の加減もけっこう難しい。だったら、市販のグリーンティーを買ってくる方が早いし、はるかにおいしいのだ。もし、オレにするならば、お勧めは焙じ茶だろう。焙じ茶に関しては、急須で淹れるか水出しで飲む方がおいしいのだけど、焙じ茶ラテは、粉茶で作った方が焙じ茶らしい味と香りが生きる(写真13)。
茶葉に関しては、紅茶や烏龍茶も使えるのだけど、どちらも、それほどおいしくはならなかった。紅茶は、ミルクティーにするならば、それなりにおいしいのだけど、それでも、やはり茶葉から抽出する方が簡単でおいしい。やはり、日本茶、特に深蒸し系の玉露を使うのが、おいしいと思った。製品のコンセプトからすると、もしかすると「おいしい」というのは、あまり求めていないのかもしれないのだけど、お茶は元々おいしい飲み物なのだし、その茶葉を使って作る飲み物が、おいしくならないわけはないのだ。
▲写真12:緑茶オレも作ってみた。色もキレイだし、十分おいしいが、おいしいお茶屋さんのグリーンティーはもっとおいしいから考えてしまう。(クリックで拡大)
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▲写真13:レシピ集も付属している。粉っぽくないアイスの粉茶が簡単に作れるのは、混ぜ機があるからこそだ。(クリックで拡大)
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