●ソフトとオプション
ソフトウェア的にはかなり良くできていると思う。特に、本や書類のスキャンの場合、矩形に補正してくれる機能の精度は高い。スキャンの状態さえ良ければ、フラットベットスキャナでスキャンした程度には簡単に補正可能(写真04)。ただ、書籍のスキャンを前提に作られているソフトなので、補正しないと書籍の端より、少し内側でスキャンされているので注意が必要。開いた本の場合、端は前後のページの小口部分なので、それを自動的にカットしてくれるのだけど、ページによっては端が切れてしまう場合もある。その場合は、補正することになる。使っていて、補正の手間が多いと感じたら、その使い方は「SV600」に向いていないと思ってよさそうだ。
あと、紙を押さえた指を消す機能は、毎ページ2ヶ所を消す必要があって、かなり面倒。オプションで販売されている「ブックプレッサー」(写真05)は、書籍のスキャンをするなら必須のアイテムだろう。同様に、いくつか「SV600」には、必須のオプションがある。それは、「SV600」がとても斬新な、今までになかったスキャナだけに、使ってみないと気がつかない種類の使い勝手上の欠点を補完してくれるアイテム。こういうアイテムが素早く出揃って、しかもそれを使うことで、明らかに使い勝手が向上するのだから、やはり、「SV600」というスキャナは、とても可能性を秘めたアイテムなのだと思う。現状の完成度で判断するともったいないことになりそうだ。
その必須アイテムの1つが、先ほど出てきた「ブックプレッサー」。スキャンする本を押さえておくための透明のボードだ。両端にハンドルが付いていて押さえやすい。これ、単に透明なアクリル板というわけではなくて、反射防止用のコーティングが施されている。そうでないと、光を反射してスキャンできないのだ。また、スキャンできる範囲よりも横幅が広くないと使えないから、サイズはかなり大きい。しかし、これを使うことで、薄手の絵本などの場合、ほぼ補正なしでも使えるくらいの精度でスキャンが可能になる。見開きのページも、中央のラインが気にならない程度にキレイに開くので、スキャンの仕上がりも良い。実は、この「ブックプレッサー」を使うと、「非接触型スキャナ」という「SV600」の特徴が1つなくなってしまうのだけど、ページ物でない場合は「ブックプレッサー」は不要なのだし、フラットベットスキャナの場合は、本を開いた後のセッティングが結構面倒なので、「SV600」を使うメリットは大きいのだ。
次の必須アイテムは「リモートコントローラ」(写真06)。要するにフットスイッチだ。ブックプレッサーで本を押さえると、両手が塞がる。そこで、フットスイッチが欲しくなる。その需要に応えた製品がすでに用意されているのが素晴らしい。しかも、ソフトスイッチタイプとハードスイッチタイプの2種類。つまり、靴やスリッパを履いていない状態で使える「ソフトタイプ」と、ギターのエフェクターのスイッチを使って、靴を履いた状態で踏めるようにした「ハードタイプ」。この両方が揃っているというのは、「SV600」を仕事の現場で実用的に使いたいという発想があってこそ。「SV600」のスキャンスイッチは、本などをセットした場合、その奥に位置することになるので、元々、手で本を押さえた状態では押しにくいのだ。
▲写真5:PFU「ScanSnap SV600専用ブックプレッサー」15,750円(税込)を使って、本を押さえた状態。指が入らないだけでなく、本をなるべく平たい状態でスキャンできるので、後の補正が楽。(クリックで拡大) |
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▲写真6:PFU「リモートコントローラ」各15,750円(税込)。左が「ソフトタイプ RC-10S」、右が「ハードタイプ RC-10H」。USB接続で「SV600」をコントロール。(クリックで拡大) |
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●非破壊スキャナーへの期待
さらに、使っていて思ったのは、「SV600」使用時に使うマットが柔らかいシート状で(写真07)、書類や薄い本のスキャン時に、シートの皺や凹凸がスキャンの邪魔になること。「SV600」は、斜め上からスキャンする構造なので、奥行き方向の凹凸を実際以上に大きく捉えてしまうのだ(夕方には影が長くなるのと同じ理屈)。そのシートをしっかりと平たくセットするのも結構難しい。ということは、これをシートではなく板にしてしまえば使いやすいのではないかと思っていたら、すでに試作しているところがあって(というか、その試作も、ブックプレッサーもリモートコントローラもすべて、バード電子製だ)、試作品を使わせてもらったところ、やはり、板状の方がセットも楽だし、上に本などを乗せるのも簡単。保管場所は必要になるが、薄いのでそれほど邪魔にならない(写真08)。このあたりも、試行錯誤中のスキャナという感じがするが、「SV600」でしかできないことがある以上、このように外部の工夫は重要になる。しかも、それで明らかに使い勝手が良くなる、というのは、それはそれで、とてもすごいことだと思うのだ。
コンシューマ向きのドキュメントスキャナとして「ix500」は、相当完成度が高い製品だと思うが、ScanSnapがここまで来るのにも長い時間がかかっている。去年発売された「SV600」の完成度が低いのは当たり前だ。それでも初代ScanSnapに比べたら、圧倒的に使いやすいのだ。特に、絵本、パンフレット、A3の2つ折りでページ物になっているチラシ、細長いもの、古い全集などの箱(分解してスキャン)、四角くないもの、紙袋、使いかけのノート類などのスキャンには本当に使える。いわゆる書籍、特に小型の本の非破壊スキャンについては、今のところフラットベットスキャナよりも確実に楽、とは言い切れない。本の形状やページ数にもよる。実際、厚手の本は苦手なのだ「SV600」は。
まだ、現状では「非破壊型スキャナ」と呼ぶよりも「非接触型スキャナ」と、とらえる方が、使い方が広がるように思う。スキャンしたいものを「ポン」と置いてボタンを押すだけ、というスタイルは、他に代えがたいメリットなのだから。
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