

pdweb.jp プロダクトデザインの総合Webマガジン
Media View
●秋田道夫のブックレビュー
第22回:「だれが決めたの? 社会の不思議」
第21回:「思考の整理学」
第20回:「デザインの輪郭」
第19回:「デザインのたくらみ」
第18回:「覇者の驕り―自動車・男たちの産業史(上・下)」
第17回:「素晴らしき日本野球」
第16回:「建築家 林昌二毒本」
第15回:「ブランディング22の法則」
第14回:「中国古典の知恵に学ぶ 菜根譚」
第13回:「プロダクトデザインの思想 Vol.1」
第12回:「先生はえらい」
番外編:「フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。」
第11回:「知をみがく言葉 レオナルド・ダ・ヴィンチ」
第10回:「ハーマン・ミラー物語」
第9回:「ポール・ランド、デザインの授業」
第8回:「プロフェッショナルの原点」
第7回:「亀倉雄策 YUSAKU KAMEKURA 1915-1997」
第6回:「I・M・ペイ―次世代におくるメッセージ」
第5回:「ル・コルビュジエの勇気ある住宅」
第4回:「芸術としてのデザイン」
第3回:「天童木工」
第2回:「アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン」
第1回:「柳宗理 エッセイ」
Tool View
●魅惑のレンダリングワールド
第6回:Maxwell Renderを用いた小坂流ビジュアル術
第5回:Maxwell Renderの概要
第4回:nStyler2.1をより使い込む
第3回:さらにパワーアップしたnStyler2.1
第2回:Hayabusaのレンダリング画像
第1回:Hayabusaの概要
●[集中連載]SolidWorks 2008レビュー!全4回
最終回:「フォトリアルなレンダリング画像を作る」
第3回:「レイアウト」検討からの部品作成
第2回:サーフェス上スプラインとソリッドスイープ
第1回:インターフェイスやモデリングの概要
LifeStyle Design View
●さまざまな日用品
第1回:空想生活「ウインドーラジエーター」
●IHクッキングヒーター
第3回:「MA Design」
第2回:「空想生活COMPACT IH」
第1回:「東芝MR-B20」
●オーディオ
第3回:「TEAC LP-R400」
第2回:「amadana AD-203」
第1回:「JBL spot & Jspyro」
●ライト
第5回:「BIOLITE EON」
第4回:「TIZIO 35」
第3回:「ITIS」
第2回:「Highwire 1100」
第1回:「Leaf light」
●トースター
第4回:「ZUTTO」
第3回:「VICEVERSA」
第2回:「±0」
第1回:「Russell Hobbs」
●コーヒーメーカー
第6回:「±0」
第5回:「MA Design」
第4回:「ZUTTO」
第3回:「deviceSTYLE」
第2回:「Rowenta」
第1回:「Wilfa」
●ハードウェア
第3回 日立マクセル「MXSP-D240」
第2回 シャープ NetWalker「PC-Z1」
第1回 HTC「Touch Diamond」(090113)
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このコーナーではプロダクトデザイナー秋田道夫氏による書評をお届けします。
毎回、秋田氏独自の視点でセレクトした、デザインにまつわる書籍の読後感を語っていただきます。お楽しみに。

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秋田道夫のブックレビュー
第11回
「知をみがく言葉 レオナルド・ダ・ヴィンチ」

・ウイリアム・レイ(編)/夏目 大(訳)
・青志社(2008年6月刊)
・255ページ
・1,365円(税込み) |
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●人としてのダ・ヴィンチ
パリにあるルーブル美術館には5回程訪れたことがありますが、実はあの有名すぎるほどに有名な「モナリザ」をわたしはちゃんと見たことがありません。ルーブルに並ぶほかの作品だと、ガラスのケースもなくすぐ近くで絵の具のタッチまで見ることができるのですが、その「美人」だけはガラスケースの奥で厳重な管理体制が引かれていてとにかくいつも人だかりがすごくて、見るには見るのですが、なんだかそれを「見た」と実感することは難しいのです。
何度訪れても不思議なのは、同じダ・ヴィンチの手になる「岩窟の聖母」をはじめとする数枚の絵には、ほとんど人が集まっているのを見たことがないことです。
自分がダ・ヴィンチだったら(滅相もない想像ですが)その様子をどう感じるのかに思いをはせる。「つまり人々の関心は『モナリザ』という言葉にあって、それを描いたわたしそのものへの評価とはちょっと違うのかなあ」と、いささかため息まじりの感想を言ってしまいそうな気がするわけです。
わたしは、この『知をみがく言葉』という本を手に取ってあらためてその「人間的な感想」をダ・ヴィンチが言ってもおかしくはないように思いました。
それぐらいにリアルな人間としてのレオナルド・ダ・ヴィンチを垣間みたように思います。
●すべてを総括したものとしての芸術
レオナルド・ダ・ヴィンチの歴史をひもとくのもなんだか僭越ではありますが、あえてその人生を少し振り返ります。
ダ・ヴィンチが「ヴィンチ村」に生まれたのは1452年で、日本でいうと室町時代にあたります。亡くなったのは1519年で67年の生涯でした。両親は正式の婚姻を交わしておらず子供の頃正式な教育を受けていません。17歳でフィレンツェに移り住みヴェロッキオという画家の弟子に入り師匠の手伝いをしていたが、ダ・ヴィンチが担当して描いた部分が師匠の出来映えを超えていて、それを見たヴェロッキオは以降絵を描くことを辞めてしまったというエピソードが残されている。栴檀は双葉より芳し。
まあ書けばきりがないのでこれぐらいにしておきますが、なぜこういう経歴の最初を書いたかといえば、彼が人類史上もっともすぐれた画家の1人であるとともに、科学や建築をはじめすべてに精通する「万能の人」として後世語り継がれていますが、はじまりは「美術」というか「絵画」だったということが重要なキーワードだと思ったからです。
当時、現在よりもはるかに地位の低かった絵画とそれを仕事とする画家の地位を高めたいという気持をもっていたと、この本のはじまりに書かれた一文にわたしは注目をしたのです。
これはあくまでもわたしの仮説ですが、ダ・ヴィンチが人体解剖に精通したことをはじめさまざまな技術や科学にその好奇のまなざしを向け続けていたのは、「絵画にはすべてを統括した知性が集約されたことを見えるカタチに置き換えたものである」という信念の実証だったのではないかと思ったのです。
●知の前に磨くべきこととは
あまり力んだ紹介はこの本には実は似合わない。レオナルド・ダ・ヴィンチという「ビックネーム」+「知をみがく言葉」+「装丁」があいまってとても難解な本のような印象を受けるでしょうが、ページを開けば白黒のダ・ヴィンチのスケッチが挿絵に使われていて、大きな活字で印刷されたほんの数行の言葉が並んでいるある意味「あっけない」本です。
ダ・ヴィンチのもっとも有名な言葉は「幸運がやってきたら、迷わず前髪をつかめ。後ろ髪はないのだから」かもしれません。
幸運の前髪はどんなデザイン(格好)をしているんだろう。
「友人を咎める時は人目につかないところで、褒める時は人目につくところで」
「ひどい人間だからといって、悪口を言ってしまえば、良い人間の悪口を言うのと大差はない」
ね、面白いでしょ。というかこれはまるでビジネスの鉄則を書いた本や経営者が書く「成功の本」に見られる言葉とまるで同じです。すでに室町時代に生まれているのですね。
知を磨く前に、「常識を磨け」ということでしょう。
さらに耳に痛い言葉がつづきます。
「他人の作品では、過ちをすぐに見つけられるのに、自分の作品ではなかなか見つけられない。人の過ちは小さなものでも見咎めるのに、自分の過ちは大きなものでも無視してしまうことがある」
まるでそこにダ・ヴィンチの目があるかのようです。ここまでくると人のもつ欠点は「特性」というか、DNAに隠された遺伝子のようなものにも思えてきます。
最後にわたしをもっとも捉えた言葉を記してこのレビューの結びとしたいと思います。
「できないことを願ってはいけない」

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