┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥       pdwebメールマガジン第40号・・・2013/7/29       編集制作:pdweb.jp編集部 http://pdweb.jp ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ┗…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┛ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ● pdwebメールマガジン第40号 目次 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第16回:小林新也/合同会社シーラカンス食堂 代表&デザイナー ●編集長のミニコラム タイガーコペンハーゲンに行ってきた ●pdwebデザインコンペ2013のご案内 本年のコンペ終了のため削除しました ●編集後記 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●リレーコラム:若手デザイナーの眼差し 第16回:小林新也/合同会社シーラカンス食堂 代表&デザイナー ○自己紹介とデザインの心 僕は合同会社シーラカンス食堂というデザイン会社を兵庫県小野市で営んでい ます。小野市は兵庫県の南西部に位置し、播州そろばんや、播州刃物が江戸時 代から続く産業として残っています。 播州とは昔の地名で、この播州には播州織物や釣り針などの産業も長い歴史が あったり、播州姫路城や播州赤穂浪士など、なかには国宝もあったりと貴重な 地域資源が数多く残っています。小野には太平洋へと続く大きな加古川が流れ ており、昔は流通網として大活躍していました。昔から自然災害も少なく、農 業も盛んです。約千年前には国の献上米を作っていたとか。 つい、つらつらと地元のことを書きましたが、つまりはシーラカンス食堂のあ る小野市はとっても豊かな地域なのです。 僕はこの小野市で表具店を営んでいる家に生まれました。表具屋とは障子、ふ すま、屏風、掛軸をメインに基本的に水と糊と紙を使った仕事です。僕が物心 ついた時からお父さんは毎日仕事に追われ、お母さんも一生懸命手伝うくらい 毎日仕事がたくさんありました。 しかし、僕が高校生になった頃から、たまにすごく暇そうにしているお父さん を見かけるようになりました。時と共に仕事は激減、息子としてそれが気にな って仕方なく、何故仕事が減っていくのかを高校生ながら真剣に考えるように なりました。 大工さんが建てる家ではなくハウスメーカーから買う家の時代になったこと、 和室が激減したことなどが原因とすぐに分かりました。しかし、何故そうなっ たのかを考えていくともっと重要なところが見えてきました。 祝い事や家族行事、お葬式などの儀式がどんどん家で行われなくなっていたり、 公民館や施設により簡略化されていたりと、文化そのものが消えていっている からだということに気付きました。何故、襖や障子を張替えるのか、そもそも 何故張替えれるようになっているのか、何故なのか。 僕はここにデザインという心を学びました。そして何が本当に大事で、何が時 代の流れで、何を忘れがちなのかもなんとなく分かりました。時代が変わって も変えてはいけないものがあるはず。その大事なものはきっとみんなにとって も大切で、未来の人たちにとっても大切なはず。僕はそれを信じたい。そう強 く思うようになりました。 こういう目線で過ごすようになった頃から、家の表具屋だけがこういう状況と いうわけではなく、近くの畳屋さんやそろばん屋さん、刃物屋さん、商店街ま でもが似たような状況にあることに気付きました。 僕に何かできないのか。僕はこの問題点に気付いていて、どうあるべきか、ど うすべきかというビジョンが見えている。これこそが今の時代に必要なデザイ ンなのではないか。僕にできる役割なのではないか。 ○デザイナーの前に若者である 過疎化、猫屋敷化していく古民家、シャッター商店街、産業の後継者不足、電 車利用者激減による廃線の噂…極めつけは古くから続く祭がなくなり、近所で 集まることがなくなり、田舎らしさが消えていっている。このままこのマチは どこへ進むのか、こんなマチがはたして日本にどれだけあるのか。日本らしさ はどこに行ってしまうのか。 決して大げさな話ではないと思うのです。僕はこういった目線で生まれ育った 地元小野市に軸足を置きデザインという手段を使って日々ビジョンに少しでも 近づけるように仕事をしています。プロダクトデザインをメインとしています が、この地ではそれだけでは絶対に必要とされません。 たとえ必要とされても、真の問題解決には近づけません。何故なら現場の人た ちにはそんな時間もお金も発想にも余裕がないからです。諦めている人だって います。でもなにか少しでもポジティブな状況を、新しい風を産地に入れたい。 どうにかしたい。そう思っている方も多いです。でも現場からそういった熱意 や動きがなかなか沸き起こらない。 何故か、どうしてなのか、その理由はシンプル。田舎が抱えている問題点すべ てに言える共通の問題点、それは現場に若者がいないということ。だからデザ イナーの前に若者として仲良くなることができないと何も開かれないのです。 長い目で職人や産地のおっちゃんたち、地域全体がポジティブな状況に持って いくまで付き合えるか。喋って、呑んで、呑んで、呑んでどれだけ仲良くなれ るか、デザインする前段階からすべてがはじまるのです。 ○デザイン事例 ここで最近の現在進行中の「播州刃物」での仕事の例をあげてみます。播州刃 物は250年前から続く産業と言われていて、日用品刃物をつくる前は刀を作っ ていたと言われています。 今もその名残があり、鍛冶屋さんが小野市に点在し、それぞれが家庭に隣接し て工場でお仕事されています。それに伴い、小さな問屋さんも数多く点在して おり、それぞれの問屋さんが独自でひいてきた販路で刃物を売っています。 そんな播州刃物さんからあったデザイン依頼は、「新しい鋏をデザインしてほ しい」ということでした。僕は正直それまで詳しく地元の刃物産業について知 っていたわけでもなく、勉強した経験もなかったため、ピンときませんでした。 それから鍛冶屋さんを訪ねたり、呑みにいったりと繰り返すうちに播州刃物に ついてどんどん分かってきました。 するとそれとは裏腹に新しい鋏をデザインする必要性を感じなくなっていった のです。決定的に感じたのは、問題点がプロダクトデザインではないというこ とでした。問題は販路と価格と見せ方、そして産地のシステムと後継者不足が かなり深刻な状況ということ。この見えてきた問題点をどうにかしない限り種 類によっては未来がない刃物もあったりします。 問題を真っ正面から何故かを突き詰めると見えてきたのが過去に卸問屋が職人 を安売りしてしまったことにありました。その前の段階で売り手が問屋をたた いたのでしょう。店頭で輸入物と変わらない棚に載せ、価格競争にいれてしま ったのでしょう。だから安くしてくれと問屋さんをたたく、すると問屋は職人 さんにもっと安く作ってくれとたたく。 こうやって職人が資本の産地なのに、気付けば鍛冶屋のイメージが汚くて危険 で儲からないという仕事になってしまっていた。息子さんが弟子入りしたいと 言ってきてくれたが、やらせられなかったと数人の職人さんが言っておられま した。 でもそもそも何故売り手は播州の刃物を価格競争に入れてしまったのか。それ はブランド力がなかったからではないだろうか。250年前から続いているにも 関わらず、名前の認知度がかなり低い。 これにも産地ならではの理由がありました。それは卸問屋さんが名前と値段を それぞれでつけて売ってきたからです。名前をつけるというのは鋏にそれぞれ の自分のところのもっている名前を刻印するということです。なので同じ職人 が作ったまったく同じ鋏でも、あっちとこっちでは名前が違うのです。これで はなかなか認知されませんよね。 そしてもう1つの問題点は時代と共にお客さんの選ぶ店が変わっていったとい うこと。例えばこれから園芸をはじめたいと考えている若い人がどこに鋏を探 しにいくかを考えると、東急ハンズやLoft、便利なものやオシャレなモノが集 まっているセレクトショップ系のお店しかなかなか思いつかないでしょう。し かし産地の卸問屋さんたちは先代の築いた昔ながらの販路でお仕事を数十年さ れており、ただ鋏を使う人がいなくなっていると思われているのです。聞くと 東京での見本市を見に行ったことすらないということも分かりました。 これらのことから産地のおっちゃんたちは昔からある鋏に対して自信をなくし てしまっていた。だから僕に「新しい鋏をデザインしてほしい」と言ってこら れたのです。 だったら自信をつけてほしい。素直にそう思いました。なぜなら播州の鋏もお っちゃんたちのやってこられたことも本当に素晴らしいからです。とりあえず おっちゃんたちに見本市に行ってほしいし、播州刃物をバイヤーにPRしたらき っと販路が見付かるだろうし、海外にだって絶対になにか繋がる気がした。 そして僕がデザインしたのは、見せ方でした。展示会でもパンフレットでもホ ームページでも店頭でも生かせるデザイン。これが必要であり、現状ではこの 応え方しかできない。そう思ったのです。 そして結果、インテリアライフスタイル展2013に播州刃物として出展しました。 産地がまとまったのは播州刃物の歴史上はじめてのことです。これがきっかけ に現在販路の問い合わせが来ています。一番嬉しいのはおっちゃんたちのモチ ベーションがめちゃくちゃ上がったことです。 播州刃物はまだまだ克服すべき問題点はたくさんあります。徐々にデザインし ていきつつ進んでいくしかありません。そして嬉しい情報、今年2013年9月の パリでのデザインウィークに播州刃物として出展が決まりました。 インテリアライフスタイル展で得たご縁によるものですが、7割くらい勢いだ と思います。でもこうやって商店街の金物屋さんでしか鋏を売っちゃいけない とどこかで思っていたところから「美しい! これは何を切る鋏なの? ほし いんだけど」と興味を持ってくれて買ってくれる方たちがいる世界へとりあえ ずは進みはじめました。 播州刃物の当面の目標は鋏を再ブランディングして高く売れるようにして、出 た利益を職人さんに還元していくということです。これが実現したならば結果 は後から付いてくるでしょう。現在そのパッケージデザインや店頭ディスプレ イを考慮したデザイン開発を進めている段階です。 播州刃物のHPはこちら http://kanamono.onocci.or.jp 播州刃物でfacebookもやっていますので是非また覗いてみてください。 とっても長くなってしまいましたが、僕のマインドを伝えられたでしょうか。 これからも軸足は小野市、もう片方の足はわざと遊ばせつつデザインで少しで も良い未来が残せるように精進してまいります。 最後まで読んでくださった方々、本当にありがとうございました。 合同会社シーラカンス食堂 代表&デザイナー 小林新也 http://www.c-syoku.com http://www.facebook.com/c.syoku オリジナルブランド:SKINTEX / 公式サイト http://skintex.c-syoku.com ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集長のミニコラム タイガーコペンハーゲンに行ってきた 関西に取材があったので、その帰り道に大阪ミナミ周辺を少し歩きました。1 年前の2012年7月21日にアメリカ村にオープンした「タイガーコペンハーゲン (Tiger)」の第1号店にも立ち寄ったので、ちょっとその感想を書きます。取 材ではないので、あくまで客目線です。 ○タイガーコペンハーゲンとは 関西の人にはいまさらかもしれませんが、少し説明します。タイガーコペンハ ーゲンは北欧デンマークのコペンハーゲンで誕生した格安商品を揃えた雑貨シ ョップで、北欧の100円ショップと言われているようです。 1995年にコペンハーゲンに最初の店舗をオープン、デザイン性に優れた食器や 文房具などの日用雑貨の販売を始めました。その後、北欧を中心に店舗数を増 やし、2012年にはヨーロッパ16カ国で約150店舗まで成長しました。アメリカ 村にできたショップは、日本の1号店となり、しかもヨーロッパ以外の地域で の初店舗とのことです。 http://www.tiger-stores.jp/ ○面白いモノがいっぱい さて、売り場は1階、2階の2フロアーに分かれ、面積は合計約500平方メートル とのこと。店内には100円〜1,000円程度の商品がところ狭しと並べられていま す。入り口から、食器、文具、自転車アクセサリー、インテリア小物、モレス キンみたいなノート、園芸用品などなど、眺めているだけで楽しい。2階も同 様ですが、少し価格帯が高いものが並んでいる印象でした。といっても高くて 1,000円程度でしょうか? お客さんはほとんど女性ですが、男性もちらほら。10代から年配の方まで幅広 い層に支持されているようです。 商品全体の印象は、カラフルで可愛らしい、といったところでしょうか。どの 製品もデザインされていて、チープな作りでもどこか愛着が持てる感じです。 いわゆる100円ショップのモノは実用的な日用品が中心で、生活の役には立ち ますが、気持ちを豊かにしてくれるわけではありません。また無印良品やIKEA はそれぞれ日本的、北欧的な美意識を持った品揃えですが、価格帯は高くはな いけれど安くもないといったところでしょうか? 今回訪ねたタイガーコペンハーゲンは、街中の100円ショップとIKEAの間を狙 ったようなコンセプトを感じました。1,000円あれば生活が少し楽しくなる小 物がいくつか買える。リッチではないけれど、チープ過ぎもしない。 そんなことを思いつつフロアのあちこちを巡回し、ふと気づけば買い物カゴが いっぱいに。キウイ柄の食器、カラフルな消しゴム、USBのLEDライト、紙製ボ ックスのスピーカーキット、ジョウロ、iPadサイズの巨大電卓などなど…レジ で約5,000円を支払い、楽しい気分で帰路につきました。 森屋義男/pdweb.jp編集長 ///////////////////////////////////////////////////////////////////// ●pdwebデザインコンペ2013のご案内 本年のコンペ終了のため削除しました ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■○■pdwebメールマガジンでは広告のご利用をお待ちしています。■○■ イベント/セミナーの告知や集客、新製品のご案内に。臨時増刊もあります。 ■○■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。料金:1行6,000円〜。 ■○■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ////////////////////////////////////////////////////////////////////// ●編集後記 上のコラムでも書きましたが、タイガーコペンハーゲンでiPadサイズの巨大電 卓を買ってきました。700円(だったと思います)。この大きさで単機能なと ころが気に入りました。計算しかできません。日々、小型・軽量・高機能の流 れの中にいると、こういったKYなモノが愛しく思えます。日本では企画段階で ボツにされそうなプロダクトですね。(M) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■取材・執筆・DTPデザイン・印刷物納品を行います! カラーズ(有) ■企業のユーザー事例、パンフレット、Webコンテンツなどの制作を行います。 ■お問い合わせはinfo@pdweb.jpまで。お待ちしています。■■■■■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ pdwebメールマガジンNo.40 2013年7月29日発行 3,000部配信 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓   pdwebメールマガジン登録変更および解除のご案内 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ※このメールに返信はできません。配信アドレスの変更や停止を希望される 方は、pdweb.jpのトップページ右側の登録フォームにて操作をお願いいたし ます。 http://pdweb.jp ┏…・・・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・…┓ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥   編集・制作:pdweb.jp編集部   〒151-0071 東京都渋谷区本町1-20-2-909 カラーズ有限会社   お問合せ先 info@pdweb.jp   Copyright(C) Colors.,LTD. 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